厚生労働省が来年度の介護報酬について、サービスごとの新たな基本報酬を公表しました。 特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの基本報酬が上がる一方で、訪問介護に関係するサービスの基本報酬は引き下げられることがわかりました。 基本報酬はあくまでも事業所に支払われるお金に関係するため、そこで働いている方に直接お金が渡るとは限りませんが、それでも一定の影響はあると考えられます。 賃上げの動きが強まる中で、なぜ逆行しているかのような政策が取られようとしているのでしょうか。 2月13日放送CBCラジオ『つボイノリオの聞けば聞くほど』では、介護報酬の引き下げについて小高直子アナウンサーが解説しました。

     

介護報酬が下がるケース

基本報酬が下げられるのは、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護で、高齢者が住む場所に行ってケアするタイプのサービスです。

ホームヘルパーになるには、130時間の介護職員初任者研修などを受ける必要があるなど、それなりに高いハードルがあります。

ハードな割に給料や労働条件が見合っていない、1人で行くのが不安なケースがあるといったことがあってか、2022年の有効求人倍率が15.53倍と、施設介護職員の3.97倍と比べて、なり手がかなり少なくなっています。

人材不足にもかかわらず、なぜ訪問型の基本報酬を引き下げることにしたのでしょうか?

厚生労働省が実施した介護事業経営実態調査によれば、利益率が介護サービスの全体平均が2.4%なのに対し、訪問介護系は7.8%と多め。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護が11.0%、夜間対応型訪問介護が9.9%と、介護施設と比べて利益率が高目となっています。

そのため、訪問型の報酬を下げて施設型を上げることで、介護サービスの利益率をならそうという意図があるようです。

数字のマジック

ただ、この分析結果に対しては、現場から「実態に則していない」という声が挙がっています。

調査にある訪問介護系の中には、サービスつき高齢者住宅といった集合住宅に併設される訪問介護も含まれているため、本来なら施設型と見られるものカウントされているのです。

同じ訪問介護でも、例えば都会にあって近い範囲で何軒も訪問する事業所は異なり、遠い場所で1軒1軒が離れた家に行く事業所だと、コストがかかってしまいます。

それらの事情を考慮せずにまとめて「訪問系は利益が高め」と言われると、実態に則さない事業所が出てきます。

報酬を引き上げる制度はあるものの

ただ、厚生労働省は引き下げの理由をもうひとつ説明しています。
それは基本報酬は下げるが、処遇改善加算を引き上げるので、事業所の収入を増やすことは可能というもの。

簡単に言えば、働く人の処遇を改善すればするほど報酬を加算するという制度。

加算率は4段階に分かれていて、各事業所はレベルを上げれば収入はアップするのですが、レベルを上げる条件が「勤続年数などに応じた昇給の仕組み」「改善後の賃金年額が440万円」「経験技能のある職員を一定割合以上配置する」といったように、そもそもお金をかけないとクリアできない条件です。

そのため、大きな事業所は改善しやすいのですが、そもそも訪問型は小規模な事業所が多く、処遇を上げる余裕がないというのが実情。

2023年の訪問事業者の倒産件数は調査開始以降最多となっていて、すでに苦しい状況の中で、今回の改訂がさらに追い打ちをかける可能性があります。

これまで家庭での介護を進めてきた政府の方針と逆行しているようにも見えますし、そもそも介護職員の給料の決め方は、これらのシステムから切り離すべきではないかという議論もあります。

他の業界でも言えることかもしれませんが、制度を変えるには、数字だけ見て判断するのではなく、現場の声も拾い上げることが大事ではないでしょうか。
(岡本)