CBCラジオ『多田しげおの気分爽快!!〜朝からP・O・N』「石塚元章の金曜コラム」コーナーでは、CBC論説室の石塚元章特別解説委員が、ひとつのキーワードからさまざまな角度で分析を行なっています。 5月19日のキーワードは「森」。 5月20日は「森林の日」と制定されているのですが、その理由は「森林」という言葉に木が5つ入っていることと、画数が全部合わせて20画であることだそうです。

     

森と林の語源

まず「森」と「林」の語源から紹介する石塚委員。

諸説ありますが、森は「盛り上がる」の「もり」、林は「生やす」ところから来ているといわれています。
つまり、自然に生まれたのが「森」で、人工的に作ったのが「林」ということになります。

防風林や防雪林は人間が作っていますし、ビルが「林立する」という表現は人間が作ったものといえます。

しかし「密林」は自然にできたものですので、必ずしも当てはまりません。

なんとなく森は木が多い、林は木が少し多いというイメージがあり、線引きがあいまいなものの、森は特に多いものの例えに使われます。

細かいことを気にし過ぎて全体を見ないのは良くないという意味の「木を見て森を見ず」ということわざがあります。

また「木の葉を隠すなら森の中」はイギリスの推理小説で生まれた言葉。
これは「 一枚の枯れ葉を隠したいと願う者は、枯れ葉の林をこしらえあげるだろう。死体を隠したいと思う者は、死体の山をこしらえてそれを隠すだろう」というセリフが語源。
こちらも多いものの例えに使われています。

青森の「森」と仙台「杜」の都の違い

日本で唯一「森」がつく都道府県は青森県ですが、なぜ「青い森」なのでしょうか?

かつて弘前藩では、現在の青森市あたりに港を築こうとしましたが、松の青い森(一説によれば青い丘)があったそうです。
ただ、昔は山や丘のことも森と呼んでいたため、「青森」とついたようです。

一方、東北地方において「もり」で有名な都市といえば、「杜の都」仙台です。
伊達政宗が飢餓に備えて実がなる木を植えたり、敷地の境目に杉の木を植えようと奨励していたことから、街に緑があふれ、それが現在にまで続いているため「杜の都」と銘打たれています。

しかし、かつて仙台は「森の都」と表記されており、「杜」になったのは昭和になってからのこと。

「森」はどちらかといえば人工的な手が加えられた時に使われる字、例えば「鎮守の森」であって、みんなで一所懸命植えて作った街の緑だから「杜」ではないか、との議論があったようです。

森と林だけではなく、森と杜の違いもどうやら諸説ありそうですね。

明治神宮の森は杉だらけだった?

東京の都心にある森といえば明治神宮。

明治神宮は明治天皇が亡くなられた後に創られたものですが、当時首相だった大隈重信が「日光東照宮や伊勢神宮のようにたくさん杉を植えよう」と主張したそうです。

しかし、林学博士の本多静六が「乾燥した土地で公害もあるため、杉だけだと林や森にはならない」と異議を唱え、さまざまな種類の樹木を設計して植えたことで、現在もその環境は保たれています。

もし杉だらけだったら、今ごろ花粉で大変になっていたか、そもそもまったく育っていなかったかもしれませんね。
(岡本)
 

多田しげおの気分爽快!!〜朝からP・O・N
2023年05月19日05時23分〜抜粋(Radikoタイムフリー)