卓球ライター若槻軸足がお届けする「頭で勝つ!卓球戦術」。

今回は、ロングサーブを使うべき5つの理由というテーマでお話ししていく。

卓球の試合では圧倒的にショートサーブから始まることが多いのだが、近年はどの実力レベルでも、ロングサーブの重要性が高まってきていると思われる。その要因としては、ルール変更や席捲している現代の技術の影響、さらには戦術面と、様々な点が考えられる。

本記事を読めば、あなたがなぜ今までロングサーブを使ってこなかったのだろうと後悔すると同時に、明日からロングサーブの練習がしたくなること間違いなしだ。

ロングサーブを使うべき理由①:ショートサーブが圧倒的に主流だから

水谷隼
写真:水谷隼のサーブシーン/撮影:ラリーズ編集部

一つ目の理由は、試合では圧倒的にショートサーブから入ることが多いからだ。つまりあなたも相手も「基本的には短いサーブを出す」という観念が染み付いてしまっているのだ。

やはりロングサーブを出すと、体を大きく使ったスイングで威力のあるレシーブが返ってくる確率が高い。なのでそれを避けるために、なるべく短くサーブを出す癖がついている、ということに他ならない。

篠塚・丹羽
写真:篠塚大登のサーブシーン/撮影:ラリーズ編集部

ショートサーブがスタンダートとなっているからこそ、ロングサーブは有効だ。そんな当たり前の話なのだが、なぜかロングサーブを使う選手は少ない。

ロングサーブを使うべき理由②:ショートサーブに対するチキータを封じられるから

前述したようにショートサーブに対しては威力のあるレシーブをすることは難しい。ただしそれは「チキータ」が登場する前のお話である。

トップレベルや若手の実力のある選手は、チキータができて当たり前とすら言える。ショートサーブに対しては、たとえフォア前であろうとすべてチキータをするという選手も珍しくはない。

上田仁
写真:チキータを得意とする上田仁/撮影:ラリーズ編集部

そんな選手に対しては、やはりバック深くへのロングサーブが最も有効的である。こちらにロングサーブがあるという意識を植え付けさせることができれば、相手としては短いサーブへの出足が遅れるので、チキータへの抑止力になるだろう。

ロングサーブを使うべき理由③:ルール変更によりボールの威力は落ちてきているから

ロングサーブを出すのには勇気がいるものである。ボールの威力がある男子選手ならばなおさらだ。だがそうはいうものの、その威力は以前よりかはいくらかマシになっている。

及川瑞基
写真:及川瑞基のサーブシーン/撮影:ラリーズ編集部

ボールは38mmから40mmにサイズが大きくなった。大きくなればその分空気抵抗が増すためスピードは落ちる。またグルーと呼ばれる有機溶剤を含む接着剤を使って球速や回転量を上げる方法も禁止され、さらにはボールの材質がセルロイドからプラスチックに変わった。

ここ10余年で卓球のルールは様変わりしているのだ。それは安全性を高め、クリーンなスポーツであるというイメージの向上と、より長くラリーが続くようにして、「観る」側によりエキサイティングに楽しんでもらうことが目的だ。

写真:石川佳純のサーブシーン/撮影:ラリーズ編集部
写真:石川佳純のサーブシーン/撮影:ラリーズ編集部

そのため以前と比べれば、ロングサーブを相手に一発で打ち抜かれる、という事態は少なくなってきている。もちろん「そんな昔の時代のことは知らない」という方には関係のない話かもしれないが、時代的にそういう変遷をたどっているのは事実。ぜひ勇気を出してロングサーブを出して欲しい。

ロングサーブを使うべき理由④:3球目が待ちやすいから

では昔のルールなど知らないほどに経験が浅く、チキータといった技術が成熟しきっていない、初級者レベルのプレイヤーには今回の話は当てはまらないのか。そんなことはない。むしろ初級者の選手達にこそロングサーブを活用してもらいたい。

なぜならば、サーブを出した後の3球目が圧倒的に待ちやすいからだ。

田添響・松平健太
写真:田添響のサーブシーン/撮影:ラリーズ編集部

ショートサーブに対しては、チキータ以外にもフリックやストップ、ツッツキや流しといった様に、色んなレシーブが返ってくる可能性を待たなければならない。それに対してロングサーブであれば、まず間違いなく長く、かつ前進回転で返ってくるだろう。フォアに来るかバックに来るか、で待っておけばよいので、こちらの選択肢が少なく3球目以降の展開が非常に組み立てやすいのだ。

ただもちろん、ある程度威力のあるボールで返ってくることは予想されるので、しっかりと意識的に台からの距離をとって待つことが大切である。強いボールなら確実にブロックをしてから、こちらの得意な展開、あるいは相手の苦手な展開に持ち込もう。もちろん甘いボールならカウンターで攻め込む意識も忘れずに持っておきたい。

ロングサーブを使うべき理由⑤:ほとんどの選手がロングサーブのレシーブの練習をしていないから

あなたは日々の練習のなかで、自分の課題を克服するため、フットワーク練習やサーブからの3球目攻撃、レシーブからの4球目攻撃といった練習を行うだろう。ここで質問だ。あなたは意図的に「ロングサーブをレシーブしてからの展開」の練習をしたことがあるだろうか。おそらくないという方がほとんどだろう。

写真:今季のTリーグでは、ダブルスでもロングサーブが多用される/撮影:ラリーズ編集部
写真:今季のTリーグでは、ダブルスでもロングサーブが多用される/撮影:ラリーズ編集部

というのも、これは「あえて時間を設けてやるべきものではない」という類のものであるからだと私は考えている。

たとえば同じ様に「ロビング打ち」の練習を普段のメニューに取り組んでいるだろうか。これもイエスという方は少ないと予想される。普段やっていないのならばやはり、試合の中でとっさにロビングをされたときにてこずるのは当たり前だ。

ロングサーブ、ロビング、フィッシュ、カット等、目にする機会が少ない技術には、慣れていなければ上手に対処することは難しいのである。こと競技経験が少ない選手にはそれが顕著に現れるだろう。 

石川佳純
写真:石川佳純のサーブシーン/撮影:ラリーズ編集部

なので基本的にロングサーブを出されることに慣れているという選手は少ないというのを前提において、積極的に活用することをオススメする。やってみてから、「この選手はロングサーブの処理は得意そうだな」と感じたら、そのときは戦術を切り替えればいいだけの話である。

まとめ

今回はロングサーブを使うべき5つの理由について述べた。まとめると、

1. ショートサーブが圧倒的に主流だから
2. ショートサーブに対するチキータを封じられるから
3. ルール変更によりボールの威力は落ちてきているから
4. 3球目が待ちやすいから
5. ほとんどの選手がロングサーブのレシーブの練習をしていないから

ということになる。筆者も試合の中では、おおよそ4割〜5割ほどはロングサーブを使う。むしろロングサーブを禁止されたら試合に勝てる自身がない。

それほどに、試合の展開や戦術の組み立てにおいて、ロングサーブを重要だと捉えている。今までショートサーブ主体で、ロングサーブには注力してこなかった選手は特に、これを機に練習や試合の中でぜひ積極的に取り入れていってもらいたい。

文:若槻軸足(卓球ライター)