卓球ライター若槻軸足がお届けする「頭で勝つ!卓球戦術」

今回は、「来た球を返しているだけでは勝てない理由」というテーマでお話していく。

来た球を返すだけとはつまり、対応の全てを視覚情報だけに頼るということだ。卓球は反射神経のスポーツだと言われることがあるが、その半分は正解だが半分は間違っている。人間の反射神経には限界があり、ときにはその限界を超えた速度やタイミングでボールが返ってくることもあるので、全ての返球を反射に頼るということはできないのである。

ではどうするかというと、ボールがラケットから離れるより前に、予測をすることが大切になるのだ。

今回の記事では、予測や戦術といった頭の部分での創意工夫のヒントをお伝えできればと思う。

卓球は情報収集合戦

来た球を返すだけではなく、来る球を予測する。そのためには、予測に必要な情報をとにかくたくさん集めなければならない。卓球とは情報収集合戦であり、それは試合前から始まっている。

ダブルス

試合前の練習時においても、たくさんの情報が詰まっている。

たとえばフォアハンドなら、相手のラケット面の開き具合や手首の使い方を見ると良いだろう。手首が下がり気味でやや巻く形でのフォアハンドならば、クロスへの打球が多そうだと推測できるし、面が開いているのならばフォアストレートへのボールを警戒すべきだろう。

バックハンドなら、フラット気味の打法なのか擦り上げる打法なのかも重要な情報だ。ラケットを縦方向に使う選手ならば、ブロックが得意な安定重視の打法だろう、といったような大方の予想がつくのだ。

写真:バックハンドの素振り/撮影:ラリーズ編集部

これらの情報を仕入れたら、一度頭の中で整理をして戦い方を考えていこう。

ミート系の打法ならば、いつもよりも少し距離をとってプレーしてみようとか、フォアが巻き気味ならばカーブドライブを警戒してクロス寄りに構えておこう、といった形で修正をして試合に臨むのだ。

試合序盤に相手の癖などを収集する

情報収集はまだまだ続く。

初対戦の相手ならば、当然ながら1ゲーム目はお互いの手の内が全く分からない状態からのスタートだ。ここでもできるだけ多くの情報を収集することがとても大事になってくる。この情報収集のコツとしては、知りたい情報の1本目に相手が何をしたかをしっかりと記憶するということだ

サービスシーン

たとえば、バック前に下回転のサービスを出して、それに対してどんなレシーブをするのかを見る。丁寧にストップをするのか、無難にバックにツッツキで来るのか、あるいはフォアにツッツキか、はたまたチキータで攻めてくるのか。この1本目の対応を見ることで、おおよその相手の癖を掴むことができる。

あるいは相手のバックにツッツキを送ったときの対応を見る。相手はバックハンドドライブで対応してきて、しかもストレートの厳しいコースに打ってきた。となれば確実に相手はバックハンドでのストレート攻撃が得意な選手だといえるので、次回以降は必ずここのボールを警戒しなければならない。

「こちらがこうしたら相手は大体こう返してくる」という情報をどんどんと蓄積させていくのだ。この1本目の情報はいわば相手の癖なので、しっかりと記憶しておく必要がある。

試合をしながら相手を詰めていく

このように情報を手に入れることができて初めて、それを使って先回りしたプレーをすることができる

サーブ

たとえば先程のケースと同様に相手のバックへツッツキを送ったとする。この時点でフォアにバックドライブが来ると予測して、フォア側に少し体を寄せて待つ。すると予測通りこちらのフォア側にバックドライブが来たので、それをあなたは待ってましたと言わんばかりのカウンターをクロスへお見舞いするのだ。

これが決まると、相手としては「ストレート攻撃が読まれている」と感じるので、「次回のバックへのツッツキに対してはクロスへ打ってくるだろう」という予測が成り立つ。次にバックへツッツキを送ったときは、あなたはバック側で待ち構えていればいいのだ。

これもうまくいけば、次に同様の展開になったときは回り込んで攻撃してくることが予測されるので、バックにツッツキと見せかけてフォアサイドにツッツキをするのもいいだろう。あるいは相手はこちらのツッツキを嫌がって、ロングサービスを出してくる、と予測することが可能なので、しっかりと準備をすることができるわけだ。

試合終盤で収集した情報を活かす

これらの読みが当たって得点にすることができれば、相手としては「何をしても読まれている」という感覚に陥り、もう打つところがないという心理状態になるのだ。このように、詰将棋をするかのごとく予測をしながらプレーができていれば、常にゲームを優位に進めることができる。

サーブ

少し話を戻して、さきほど試合の序盤で相手の癖を見抜くというお話をした。しかしながら、当然相手もこちらの考えていることを読んでその裏をかこうとしてくるわけなので、ゲームを通して癖の通りのボールが来るとは考えにくい。では相手の「癖」が出るのはどういった場面かというと、それは2つあると筆者は考えている。

ひとつは終盤の競り合いでの緊張した場面だ。そういった状況では、相当経験を積んでいて冷静にプレーができる選手でない限り、個人の癖が出やすいといえる。

もうひとつは、相手が「打つところがない状態」のときだ。予測がはまってあなたが優位に立てており、「打つところがない」状態まで追い込めているのであれば、相手としてはもう自分が得意なプレーに徹するくらいしかやりようがないのである。

そのような状況にまで持っていくことができれば、試合序盤で収集した癖が活きてくるのである。その場面までゲーム序盤で収集した情報をしっかりと覚えておくことが大切なのである。

まとめ

予測を制してゲームを制する。もちろん全部が予測の通りにいくわけではない。ただ予測が外れたとしても、外れたという情報を得られるので、次に活かす事ができる。

しかし予測をせずに文字通り来た球だけを返していたのでは、それこそ何も考えていないようなプレーになってしまうはずだ。

特に同じ相手と2回目、3回目と対戦を繰り返したときには、必ず展開的に苦しいものになるだろう。

ぜひ今回の記事を参考に、予測する力を鍛えていって頂ければ幸いである。

文:若槻軸足(卓球ライター)