“挑戦”は生半可な気持ちでは続けられない。それは卓球選手も卓球メーカーも同じだ。卓球メディアのRallysだってそうだ。24時間365日、卓球について考え続けるくらいの覚悟が必要だ。

高橋航太郎(実践学園高校)、前出陸杜(高田高校)は、今、高校男子卓球界で挑戦を続けている。高橋はインターハイ男子シングルス3位、前出もインターハイでベスト16とランク入りを果たした。

高橋、前出の両選手をサポートするのがミズノだ。総合スポーツメーカーとして知らない人はいないミズノも、卓球界での歴史は浅く、後発メーカーだ。一気に知名度を上げるには、野球のイチロー、競泳の池江璃花子のようなトップ選手と契約する方法もある中で、ジュニア選手を支援している。

なぜなのだろうか。そこにはミズノに根付く“挑戦の遺伝子”があった。

“ペンドラの星”前出陸杜とミズノの出会い

前出は、今は珍しいペンホルダーで戦う“ペンドラの星”として知られている。中学時代に日本一に輝いたが、「小学生のときからずっと三重県に強化支援していただいた。三重県に恩返しをしたい」と高校でも地元三重に残り戦っている。

写真:前出陸杜(高田高校)/撮影:ラリーズ編集部
写真:インターハイでの前出陸杜(高田高校)/撮影:ラリーズ編集部

前出とミズノの出会いは2017年、前出が中学1年生の東京選手権でのことだ。「正直、ミズノ=卓球というイメージがあまりなくて、声をかけられたときはびっくりしました」と前出は当時を思い返す。

写真:前出陸杜(高田高校)/撮影:ラリーズ編集部
「あんまりイメージはなかったです(笑)」

だが、ミズノは以前から前出に目をつけていた。2016年、全日本選手権大会(カデットの部)で、ミズノのプロモーション担当・橋爪克弥の目に留まったのが小学6年生の前出だった。

その堂々とした立ち振る舞い、ペンドラで泥臭くいぶし銀な戦い方、何より勝ちたくて奮闘している姿が橋爪の心を動かした。「なぜかわからないけど、直感的にこの選手は好きだ、と感じました」。

前出陸杜
高田高校ではエースとしてチームを牽引する

選手勧誘の一番の武器は熱意

写真:前出陸杜(高田高校)/撮影:ラリーズ編集部
写真:前出陸杜(高田高校)/撮影:ラリーズ編集部

ミズノは卓球界では後発だ。卓球部門に潤沢な資金があるわけではない。そのため、担当者の琴線に触れる選手をトップになる前からリストアップし、自ら足を運ぶという地道な勧誘が主だ。

「たくさんの選手をサポートする余裕は正直ないので、共感してくれる選手を見つけ、一緒にやるしかない。僕らが使える一番の武器は熱意ですから」。各地の大会や学校を訪問して回っている橋爪はそう明かした。だから、その後も橋爪は各大会で前出に会う度に声をかけ続けた。

前出
用具について語る前出と橋爪

中学日本一の実績でミズノ契約のワケ

前出は、2017年全日本カデット13歳以下シングルス準優勝、2018年全日本カデット14歳以下シングルス優勝と実績を積み重ね、その世代のトップへと駆け上がった。2019年、中学3年生となった前出は、ミズノとブランドアンバサダー契約を締結した。

写真:インターハイでの前出陸杜(高田高校)/撮影:ラリーズ編集部
写真:インターハイでの前出陸杜(高田高校)/撮影:ラリーズ編集部

なぜ前出は日本一の実績を持ちながら、ミズノと契約することを選んだのだろうか。

「ミズノと契約している選手は少なかったので、人と違うところと契約して目立ちたいという思いがありました。あとはやっぱり、橋爪さんの熱意を感じたので(笑)」と前出は笑顔で振り返る。

写真:前出陸杜(高田高校)/撮影:ラリーズ編集部
写真:前出陸杜(高田高校)/撮影:ラリーズ編集部

「いいよ、そんなのは(笑)」と橋爪は謙遜したが、前出は「会う度に用具だけでなく体調や怪我の状態なども気にかけてくれた。何より“ミズノに来てほしい”という気持ちがどこよりも強かったので、自分を欲してくれているんだなと感じました」と契約までのエピソードを明かした。

橋爪・前出
前出と用具について会話する橋爪

プロもジュニアも同じサポート

写真:前出陸杜(高田高校)/撮影:ラリーズ編集部
写真:前出陸杜(高田高校)/撮影:ラリーズ編集部

ミズノの契約選手には、大島祐哉(木下グループ)らトップで活躍するプロもいる。トッププロとジュニアで選手サポートに違いがあるのかを橋爪に尋ねてみた。

ないですね。満足行く物を満足行く量、提供できるかどうか。ただそれだけです」。

写真:前出陸杜と用具について会話する橋爪さん/撮影:ラリーズ編集部
写真:前出陸杜と用具について会話する橋爪/撮影:ラリーズ編集部

だから前出が「飛ばせるラケットを使いたい」と言えば、当時未発売だったALTIUS OUTERの中国式ペンを個別調整して提供し、時には三重まで足を運び、ラバーの要望も事細かにヒアリングした。

「自分は用具に関して結構わがままなので、いつも迷惑かけてるんですけど、調整して送ってきていただき、ありがたいです。自分がもっと強くなっていろんな人に勝って、“卓球と言ったらミズノ”くらい有名にできるようになりたいです」と前出は恩返しを誓う。

写真:前出陸杜(高田高校)/撮影:ラリーズ編集部
写真:前出陸杜(高田高校)/撮影:ラリーズ編集部

「選手と一緒に挑戦し、卓球メーカーとして成長していきたい」というミズノの“挑戦の遺伝子”は選手にも確かに伝わっていた。

インハイ3位の高橋航太郎とミズノの出会い

写真:高橋航太郎(実践学園)/撮影:ラリーズ編集部
写真:高橋航太郎(実践学園)/撮影:ラリーズ編集部

同じくミズノ契約なのが実践学園高校のエース・高橋だ。高橋は1月の全日本ジュニアでランクに入るも、より高みに進むべく用具に悩んでいた。

ミズノのプロモーション担当・左右田颯斗は、高橋の戦いぶりを評価していた。何より実践学園のエースとして、強豪校に立ち向かう高橋の姿勢が、ミズノのチャレンジする社風とリンクした。

写真:高橋航太郎と用具について会話する左右田さん/撮影:ラリーズ編集部
写真:高橋航太郎と用具について会話する左右田/撮影:ラリーズ編集部

3月の全国高校選抜で左右田は高橋に声をかけた。

「一緒に戦いたいから用具を打ってほしい。インターハイで一緒に勝とう」。

用具調整を繰り返し、高橋はインターハイ1ヶ月前の7月にミズノと契約。「何回も打って良さを感じたので1ヶ月前ですけど変えました」となんと用具をオールミズノに変更し、インターハイ本番でシングルス3位まで駆け上がった。

高橋航太郎
写真:インターハイで3位に入った高橋航太郎(実践学園高)/撮影:ラリーズ編集部

「いろんなスポーツのトップをいくメーカーのミズノさんにお誘いいただけたのはとても光栄です。左右田さんがいつも笑顔で話しやすい人柄なので、いろいろ注文も言いやすくて良いです。今トップで活躍している大島選手みたいに、ミズノを背負って強い相手に勝っていくような選手になりたいです」。

ミズノの寄り添う姿勢

ミズノは他にも、全日本カデット13歳以下男子シングルスで準優勝を果たした小学6年生の大槻翼(綾部紫遊クラブ)もサポートしている。

大槻翼
写真:大槻翼(綾部紫遊クラブ)/撮影:ラリーズ編集部

年齢や人気、実績ではなく、情熱を持って勝利にひたむきなスポーツ選手にミズノは寄り添っていく。だから時には地方の強豪校に、また時には町の卓球場にも足を運び、選手たちの声を聞いてきた。

松生卓球道場
写真:松生卓球道場での試打の様子/撮影:ラリーズ編集部

その泥臭い過程の中で、次世代の選手たちと歩みを共にしながら、ミズノの中には、ある疑問が強まっていく。

「今のラバーは本当に適正価格なのか?」である。

取材・文:山下大志(ラリーズ編集部)