愛工大名電高3年の濵田一輝は卓球一家に生まれた。祖母は世界卓球を制した濵田美穂さん、両親は全日本選手権混合ダブルス準優勝と卓球選手の血を継いでいる。だが、濵田には天性のボールタッチや打球センスは備わっていなかった。

唯一あったのは“努力する才能”だ。

濵田には、篠塚大登(愛工大名電高3年)のような鮮やかなカウンタープレーや、谷垣佑真(愛工大名電高3年)のような中陣からのド派手なバックドライブなどはない。濵田の持ち味は、豊富な練習量に裏付けされた丁寧なプレーと、フォアで動ききれるフットワークだ。

“努力”で全日本ジュニアを制した男に話を聞いた。

写真:濵田一輝(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人
【濵田一輝(はまだ かずき)】高知県出身。右シェークドライブ型。2021年の全日本ジュニアでは優勝を飾った。祖母は73年世界卓球女子ダブルス優勝の濵田美穂さん、父・裕和さんと母・華奈子さんは97年全日本選手権で混合ダブルス2位。

「より質の高い練習を、より長い時間」で全日本ジュニア優勝

写真:濵田一輝(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人
写真:濵田一輝(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人

――今枝一郎監督も「努力家」「真面目」と濵田選手を評価しています。

全日本ジュニア優勝までにはどういう努力がありましたか?

濵田一輝:自分は他の名電にいる選手に比べて、打球センスがなく、感覚が掴みづらいというのがあると自分の中で思っています。

それを補うためには、時間をかけて技術を習得することが必要だと思っているので、人一倍練習していくことは意識していました。

写真:濵田一輝(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人
写真:濵田一輝(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人

濵田一輝:最後の全日本ジュニアでなんとしても優勝したいということで、「より質の高い練習を、より長い時間」と意識して大会前取り組んでました。

写真:濵田一輝(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人
写真:濵田一輝(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人

――全日本ジュニアで優勝するまでは、なかなか優勝まで突き抜けられなかったところには何か壁があったんですか?
濵田一輝:なかなか同士討ちで勝てなくて、名電入ってからは個人戦で全国優勝がなかなかできなかったんです。

ただ、全日本ジュニア前に練習試合やってて自分の中で掴んだものがありました。「この感覚で試合できれば勝つことができるな」という感覚が身について、そのまま全日本を迎えられて、良い調子で試合できました。

写真:濵田一輝(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人
写真:濵田一輝(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人

――それはどういう感覚なんでしょう?
濵田一輝:ここに打ったらここに返ってきて、次ここに打てば得点になるなというシーンが頭の中で思い浮かぶことが試合中に多くて、その試合感覚が大会前に掴めたのが大きかったです。練習試合中に急にきましたね。

写真:濵田一輝(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人
写真:濵田一輝(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人

――逆にインターハイではシングルスベスト16でしたが、振り返るとどうだったんでしょう?
濵田一輝:インターハイは自分の中で勝ちたいという気持ちが前に出すぎてしまって、少し自分のプレーができなかったです。

試合の中で勝ちたいという気持ちが強くなりすぎちゃうのがダメなところなので、もっと冷静に試合ができるように毎回やっていきたいと思ってます。

卓球が好きだからこそ惜しまない努力

写真:濵田一輝(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人
写真:濵田一輝(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人

――ずっと卓球をやってきて、一番良かったことをあげるといつですか?
濵田一輝:全日本ジュニアで優勝したときは、やっぱり本気で優勝目指していたので、一番嬉しかったです。
――逆に一番苦しかったことは?
濵田一輝:苦しかった時期…。

苦しい時期はあんまりないかもしれないです。卓球が好きなので、嫌になったことはないです。

――卓球が好きだからこそ努力を惜しまず取り組めるんですね。
濵田一輝:継続して取り組めるところが自分の長所だと思っています。プレーでも、足を使ってフォアハンドで動ききって、粘り強くプレーしています。

写真:濵田一輝(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人
写真:濵田一輝(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人

目標は「世界」

写真:今枝一郎監督(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人
写真:練習中に濵田一輝に声をかける今枝一郎監督(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人

――今枝一郎監督の指導についてはどう感じてますか?
濵田一輝:全日本ジュニアのときにベンチコーチに入ってもらったんですけど、一ヶ月前ぐらいから練習中にずっと後ろで見てくださって、細かいところまで教えて下さりました。

逆に試合のときは「思い切って楽しんでこい」と送り出してくれるので、試合のときにベンチにいたら心強いです。全日本ジュニアも初戦が始まる前に「おまえは強くなってるから絶対大丈夫だ」と言葉をかけてもらって、気持ちがすごい高まって良いプレーができました。

写真:愛工大名電の練習風景/撮影:槌谷昭人
写真:愛工大名電の練習風景/撮影:槌谷昭人

――愛工大名電高の環境についてはどう感じてますか?
濵田一輝:周りの選手がみんな強い中で、お互いの活躍で刺激をもらえます。「あいつも頑張ってるし俺ももっと頑張らないといけない」という気持ちが毎日続いていくので、そこが大きいと思います。

あとはみんなが持っている目標が「世界」なので、そういう仲間と毎日練習できることが素晴らしいことだなと思います。

写真:濵田一輝(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人
写真:濵田一輝(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人

――では濵田選手の今後の目標は?
濵田一輝:全日本ジュニアで優勝して、何としてでも日本代表になって世界で戦いたいということがより強く目標になりました。全日本の一般でベスト16に入ることが一番近い目標で、将来的には日本を代表して世界の舞台で戦うことが目標です。

写真:濵田一輝(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人
写真:濵田一輝(愛工大名電高)/撮影:槌谷昭人

“絶対王者”愛工大名電高校の選手は、天才なわけではない。どこよりも高いレベルの環境で、誰よりも努力する選手たちが集まっているだけなのだ。真面目な努力家、濵田の話を聞いてそう思った。

愛工大名電高校特集ラストは、2021年インターハイ三冠の谷垣佑真に話を聞く。

取材・文:山下大志(ラリーズ編集部)