石川県金沢市で、卓球専門店の腕利きスタッフとして働く西東輝(さいとうあきら)さんの元には、日々、卓球部顧問の先生からの相談が舞い込んできます。

今日もお願いします。(編集:槌谷昭人)

金沢市の卓球専門店で接客する西東輝さん
写真:金沢市の卓球専門店で接客する西東輝さん/提供:本人

質問

質問「選手にどんな言葉をかけてよいかわかりません
写真:質問「選手にどんな言葉をかけてよいかわかりません」/作成:ラリーズ編集部

試合や練習で、選手にどんな言葉をかけてよいかわかりません。

西東さんの回答

回答「何も言わないことが子どもたちを救うことも」
写真:回答「何も言わないことが子どもたちを救うことも」/制作:ラリーズ編集部

かつて私自身は“自分のアドバイスで勝たせたい”という欲が強いほうの指導者でした。“西東のアドバイスは長い”と言われていた当時は「わかりやすく理解してもらうために全部説明しなければ」と思っていました。

しかし、アドバイスで勝たせることができたと認識できた試合は、実際はほとんどありません。

自己顕示欲から選手に行う助言は無意味です。

敢えて何も言わないアドバイスのほうが有効であることも多いと思います。

岸川・丹羽
写真:丹羽孝希(スヴェンソンホールディングス、写真右)のベンチに入る岸川聖也コーチ(写真左)/撮影:ラリーズ編集部

1ワードだけ

今、私のアドバイスは、1分程度のわずかな時間の中で基本的に1ワードのみです。

「これだけは押さえておいて」というものだけです。

まずは、1ワードだけを伝えてみるのはいかがでしょうか。

では何を伝えれば良いか、ご参考になりそうなエピソードをご紹介します。

良いときは何も言わない

私の基本スタンスは「良いときは何も言わない」です。

「輝さんは、自分が良いときに何も言わないでほっといてくれるところがいいんですよね。悪いときだけスパッと答えがくれるのがいいです」
私がベンチに20試合ほど入って戦い、全中で優勝した男子選手はそう言いました。

インターハイで優勝した女子選手は「ただひたすら黙って練習相手をしてくれるところがありがたい」とのことでした。「みんなすぐアドバイスしようとしてくるから、混乱してしまい、黙々と練習できる時間が少なくなっていた」そうです。

西東輝
写真:吉田雅己(右)のベンチコーチに入る西東輝(左)/提供:本人

吉田雅己選手の場合

吉田雅己(木下マイスター東京)選手は「輝は、自分が考える時間を作ってくれて、黙っていてくれるから試合に集中しやすい」と言います。

選手はスイッチが入り、集中力が高まる状態になると、人の声はなかなか入ってこないものです。

アドバイスであろうと、集中力を途切れさせる契機を作るのはもったいないこと。だから、良いときは何も言わず、崩れてしまったときに言葉がけを準備しておくだけでいいと考えています。

吉田選手のベンチコーチでは、1分間でひと言も言わず終わったときもあります。ドリンクを渡して集中力を持続させることに専念した結果です。

写真:吉田雅己(栃木県スポーツ協会)/撮影:ラリーズ編集部
写真:吉田雅己選手/撮影:ラリーズ編集部

日頃はおしゃべりでよく注意を受けるほどの私ですが、卓球の指導の場面ではむしろ「黙ってみている」タイプです。

「崩れてきたときに短く、わかりやすくかける言葉」を考えながら選手を見ることをおすすめします。

文:西東輝