オーストリアへ旅立つ直前インタビュー全3回の最終回は、松平賢二が描く卓球界の未来について、だ。

日本リーグ選手会の代表として感じる変化や提言、トップ選手と卓球Youtuberの関係のありかたなど、風通しのよい話は多岐にわたった。

外から見て気づいた実業団の良さ

――日本リーグ選手会の代表を務める賢二さんですが、Tリーグ創設から4年が経ち、実業団チームの状況にはどんな変化がありますか。
松平賢二:今回(2022年6月)、チームがコロナで棄権したことによって、日本リーグ前期、全日本実業団は初めてリアルタイムで外から見たんです。

御内健太郎
写真:御内健太郎(シチズン時計)/撮影:ラリーズ編集部

松平賢二:面白い試合も多く、熱量があって、ああ実業団、日本リーグも悪くないなあと実感しました。ライブで見ながらコメント欄やSNSなどを見ていると、ファンの人たちはこういうとき、こう思ってるんだなあという発見もあって。

一方で、もっとフォーカスするべきところがいっぱいあるなとも思いました。やり方がうまくなくて、認知されてない。

会社の名前がフォーカスされること

――例えば、どんな点でしょう。
松平賢二:今回、日本リーグ1部には大島(祐哉)、龍崎(東寅)、女子は石川(佳純)さん、安藤(みなみ)さんが出てくれたじゃないですか。2部には吉田(海偉)さんが出てくれて。後期には、丹羽孝希も出る。

ああいう人たちが出ると華があるんです。でも正直、宣伝が下手だったなと。

石川(佳純)さんが出ていること、どれだけの人が知ってたのかな。

写真:石川佳純(昭和電工マテリアルズ)/撮影:ラリーズ編集部
写真:石川佳純(昭和電工マテリアルズ)/撮影:ラリーズ編集部

松平賢二:もっと当てにいっていい。だって、それぞれの会社にとっても絶対良いことだから。

勝ちはもちろんですが、会社の名前がフォーカスされることも大事。僕も選手会の代表として、もったいなかったなと反省しました。

実業団は実業団の伸ばし方があると思います。

松平賢二(協和キリン)
写真:松平賢二(協和キリン)/撮影:ラリーズ編集部

それぞれの会社の中で卓球部を周知できるか

――具体的には。
松平賢二:僕はまず、会社の人に応援してもらうことが一番大事なんじゃないかと思ってます。

SNSでファンを増やすというよりも、それぞれの会社の中で卓球部を周知できるか、ということのほうが今は大切だろうと。

――なるほど。
松平賢二:もちろん、コロナ禍で難しい面はありますが、会社をうまく巻き込むことができていないチームが多い気がします。

協和キリンも、社内SNSで卓球部を紹介したり、リモートで試合の配信時間を周知したりしていますが、まだまだです。

松平賢二(協和キリン)
写真:松平賢二(協和キリン)/撮影:ラリーズ編集部

都市対抗の社会人野球が理想

――企業チームの場合、特にコロナ禍での周知活動は難しいだろうなという気はします。
松平賢二:でも、例えば、都市対抗の社会人野球がすごいのは、会社の人はやっぱり絶対見に行くんですよ。あれが僕は、日本リーグや実業団の理想だと思っています。

コロナのせいにするのはもう時代遅れだとも思うんです。

コロナ前に一度、一度だけ観戦時にビールを配ったこともあるんです。来場者に缶ビールかチューハイかお茶を選んでもらって、会場で飲んでいいですよという運用を会社側と話して作って。

お客さんもめっちゃ喜んでくれて、これがスポーツ観戦だ、と思いました。“初めて見たけど面白かったよ”って言ってくれて。

コロナ以降は、リモートワークも増えたので、また考えどころが来ただけだと思っています。

松平賢二(協和キリン)
写真:スーパースポーツセビオ セブンパークアリオ柏店の野球展示にも興味津々/撮影:ラリーズ編集部

実業団選手というプライド

――それぞれの実業団選手の意識に何か変化は感じますか。
松平賢二:敢えて厳しい言い方をすると、実業団を甘く見て入ってくる選手が多いと感じています。

松平賢二(協和キリン)
写真:松平賢二(協和キリン)/撮影:ラリーズ編集部

松平賢二:僕は高校・大学の頃から実業団の人に負けたくないという思いでずっとやっていましたし、実業団に入ってからは逆に、下の子たちになめられないように、あと、実業団でも日本代表選手だ、という意識がありました。

実業団選手ということにプライドをもってやっていた。

いまは、Tリーガーに絞った選手も増えてきて、実業団に入ってきた選手はどこかで自分が下だと思ってないか。

特に、1部に入ってくるような子たちに多い気がします。

松平賢二(琉球アスティーダ)
写真:2018-19シーズンのTリーグに参戦していた当時の松平賢二/撮影:ラリーズ編集部

自分の目標を持って入ってきてほしい

――日本リーグでも、1部と2部で違う印象なんですね。
松平賢二:2部の子たちは、もともと実業団でやりたくて入ってきた子が多い気がしますね。卓球をさせてくれてありがとう、というような気持ちで。

1部の子たちのほうが、Tリーグに行けない、行く自信がないという、どこかでふわっとした感じで入ってきてないか。

会社に入るモチベーションを見つけ、自分の目標を持って入ってきてほしい。

――なるほど。
松平賢二:(6月の)前期リーグを見ていても、意欲がある子がやっぱりそれぞれのチームで輝いているんですよね。

良い待遇で入ってきた子のほうが、かえってギャップに苦しんでいるのかもしれない。

その選手個人の意識の部分は変えていきたいと思っています。

自分の土俵を知る大事さ

――ところで、賢二さんはYouTubeなどのSNSでの発信も積極的ですね。
松平賢二:それは、ただ好きなんです(笑)。

松平賢二全力チャンネル

――大変じゃないですか、自分で編集までするから。
松平賢二:だから、試合が近づいたら月1本とかになっちゃいます(笑)。

でも、自分の土俵を知るって大事なんだなあと思いますね。

――と、いうと。
松平賢二:僕は昔から好きで見てるから、YouTubeっぽいことをやりたいって思うんですけど、自分のやりたいことと、見てくれる人たちの期待することは、違うことがほとんど。

例えば、YouTubeっぽく自分の好きなアイス3つをランクづけてみたら、1,000回再生くらいでした。

嘘でしょと(笑)。

余裕がなくて、サービス練習だけの動画を上げたら今度はそれが見られて、え、これなのって(笑)。

僕には、真面目なものとか、うまく解説してる動画をみんな期待してくれてるんだなあと。

松平賢二(協和キリン)
写真:松平賢二(協和キリン)/撮影:ラリーズ編集部

――確かに、小西海偉(旧姓:吉田)さんとの練習動画とか面白かったです。打球のリズムも心地よくて。
松平賢二:ありがとうございます。あれは編集しながら、僕のプレー邪魔だなと思って吉田さんをメインにしたら、見られました(笑)。

吉田海偉選手との練習動画

松平賢二という架け橋

――考えてみると、いろいろやってますね、賢二さん。
松平賢二:繋がりを作る、架け橋でいたいと思うんです。

例えば、トップ選手がいて、卓球YouTuberがいて、たぶん僕はどちらの立場もわかる。

超トップ選手は限られた人しか自分で発信できないけれど、でもプロなんだから、人任せでなく自分でやるべきなんです。

YouTuberの人たちは自己PRがうまいので、トップ選手が学ぶべきこともたくさんある。

一方で、いま卓球を始めたばかりの子どもたちには、関係性をわかりやすくしてあげたほうがいい。その子たちに“YouTuberのほうが強い”と思われるのは、僕らにはキツいので。

YouTuberにとってはトップ選手と一緒にやることで知名度を上げられる。繋げかた次第で、お互いに良い関係になる気がします。

――なるほど。

松平賢二(協和キリン)
写真:松平賢二(協和キリン)/撮影:ラリーズ編集部

今じゃないとやれないこと

松平賢二:この年齢になって、“卓球界をもっと良くしていけないか”という思いが湧いてきました。

Tリーグと日本リーグのありかたも、小中高の各カテゴリーとクラブチームのありかたも、考えればきりがないんですが、でも僕は卓球というスポーツを、やりながらも、観るものにしていきたいんですよね、どうしても。

その環境づくりをしていきたい。

――オーストリアに行くのに、忙しいですね(笑)。
松平賢二:現役生活とどうやって両立させようかという、新たな葛藤は出てきましたけどね(笑)。

もしかしたら、引退して卓球界に振り切るのもあるかもしれない。

でも、今じゃないとやれないこともあると思うんです。まずは今、精一杯やります。

松平賢二(協和キリン)
写真:松平賢二(協和キリン)/撮影:ラリーズ編集部

取材を終えて

最後は、いつもの全力な賢二節で締めたのだった。

こうやって、悩みながら、苦しみながら、結果的に多くの壁を超えてきたのだろう。
この夏、オーストリアに行ってからもそうだろう。

そうか、まだ33歳なのだから、と思わずつぶやいた。

松平賢二(協和キリン)
写真:取材後の大山乳業の白バラ牛乳、美味しかったです/撮影:ラリーズ編集部

スーパースポーツゼビオ セブンパークアリオ柏店
写真:撮影を行ったスーパースポーツゼビオ セブンパークアリオ柏店/撮影:ラリーズ編集部

取材・文:槌谷昭人(ラリーズ編集長)