■新型コロナの「感染爆発」、発熱者が前日比で約10倍の17万人超

北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は12日、キム・ジョンウン(金正恩)総書記が出席して党の政治局会議が開かれ、新型コロナウイルスの変異ウイルス、オミクロン株が流入したとして「最大非常防疫態勢」に移行することを決めたと伝えた。同国が自国内での新型コロナウイルス感染症の発生を認めたのは初めてだった。

13日は朝鮮中央通信が、「原因不明の熱病」で約18万7800人が隔離や治療を受けていると報じた。12日だけで約1万8000人が発熱したという。朝鮮中央通信は14日には、13日には新たに約17万4440人が発熱し、21人が死亡したと伝えた。前日の10倍近い発熱者が発生したことになる。フランスメディアのRFIは、北朝鮮が自力で新型コロナウイルス感染症を克服するのは困難とする記事を発表した。

■医療体系に極端な不備、鎖国・貿易停止で医薬品も底をつく

北朝鮮には、感染症の対応を難しくするいくつかの悪条件がある。まず、医療体系の不備だ。米ジョンズ・ホプキンズ大学による2021年の調査によると、北朝鮮の医療体系の充実度は、全世界の195の国と地域のうち、第193位だった。

北朝鮮当局は自国の全ての人は無料で医療を受けられると主張してきたが、複数の人権団体によると、基礎的な医療サービスを受ける場合に、通常はたばこや酒で「対価」が支払われているという。北朝鮮で医師の仕事をしていたという脱北者のチェ・ジョンフン氏は取材に対して、集中治療室と精密な診察機器は「極端に欠乏」しており、設備があるのはピョンヤン市内だけと述べたという。

北朝鮮では食糧不足の状態が続いており、国民の多くは長期的な栄養不良の問題を抱えてきたとされる。栄養不足は感染症に対する免疫力や抵抗力を低下させる。また、米ニューヨーク市に本拠を置く人権保護団体であるヒューマン・ライツ・ウオッチのアジア地区上級研究員のユン・リナ氏によると、北朝鮮が感染症対策として国境を封鎖してから2年間が経過し、保有していた医薬品は使い切った状態という。

北朝鮮は2年間にわたり国境を閉鎖してきた。貿易も行わず、航空便も受け入れなかった。当局は中国からの密入国者を「その場で処刑」しているとの報道もあった。

■ワクチン提供の申し出を拒絶し続ける、入手できても温度管理が困難

北朝鮮当局は、厳しい封鎖政策により、自国にウイルスは入っていないと主張してきた。しかし一方で、国民に対するワクチンの接種を行ってこなかった。中国は2021年に北朝鮮に対して接種300万回分のワクチンの提供を申し出た。北朝鮮は「ワクチンは、より必要な国に提供すべきだ」と主張して、中国の申し出を拒絶した。

世界保健機関(WHO)は、発展途上国に対する新型コロナウイルス用ワクチンの公平な配分を目指して、「COVAZ(コーバックス)ファシリティー」という取り組みを進めている。韓国のシンクタンクによると、WHOはCOVAZを利用しての米アストラゼネカ製のワクチンの提供を申し出たが、北朝鮮側は拒否したとみられるという。

WHOによると、自国民を対象としたワクチン接種の取り組みをしていないのは、世界の中で北朝鮮とエリトリア(アフリカ)だけだ。

また北朝鮮メディアは、自国は新型コロナウイルスへの精密な遺伝子解析技術を利用して新型コロナウイルスへの対策をしていると報じたが、専門家は北朝鮮には遺伝子技術を扱うために必要な低圧室は存在しないと指摘。さらに、何らかの手段でワクチンを入手したとしても、保存や輸送に必要はコールドチェーンシステムも不足しているという。

■「副反応出たら対応できない」もワクチン拒絶に理由か、態度表明でちぐはぐな対応も

専門家の間からは、北朝鮮が外国からワクチンの提供を受けても、副反応が発生した場合に対応が困難であることも、ワクチン受け入れを拒絶する理由の一つとの見方が出ている。また、栄養不良はワクチン接種に伴う副反応にも影響するとされる。

コロナ問題について「外からの支援」をかたくなに拒んできた北朝鮮だが、専門家の間では「もはや背に腹はかえられない状況になりつつある」との見方が広まっている。しかし北朝鮮は12日に、感染発生を初めて明らかにした数時間後に、国際的に禁止されているにもかかわらず、またもミサイル3発を発射するという、国際的支援を望まないように思える行動もしている。

一方で、北朝鮮研究を行う韓国の北韓大学院大学校の梁茂進(ヤン・ムジン)教授はAFPに対して、北朝鮮の英語メディアが間接的な表現で、米国や国際機関にワクチン支援を要請する可能性があることを示唆したと説明した。(翻訳・編集/如月隼人)