中国政府・外交部(中国外務省)は5日、米国連邦議会下院のペロシ議長が台湾を訪問したことを理由として、米国に対する対抗措置実施とペロシ議長個人への制裁を発表した。米国や台湾の対中批判もエスカレートした。中国外交部報道官は日本の排他的経済水域(EEZ)と認めないと述べた。

中国外交部は5日付で、ペロシ議長が台湾を訪問したことに対する制裁措置として(1)中米両軍戦区指導者の通話手配の取り消し(2)中米国防省の作業会合の取り消し(3)中米海上軍事安全協議メカニズム会議の取り消し(4)中米不法移民送還協力の一時停止(5)中米刑事司法協力の一時停止(6)越境犯罪取り締まりの協力の一時停止(7)中米麻薬撲滅協力の一時停止(8)中米気候変動協議の一時停止ーを発表した。

中国はこれまで、米国とは対立点が存在するが協力できる分野もあると指摘して、協力事例として紹介してきた気候変動分野での協力についても、報復の一環として停止すると宣言した。

中国外交部は5日付で、ペロシ議長の訪台は悪質な挑発行為だとして、「中華人民共和国の関連法に基づき、ペロシ議長と直系親族に対する制裁措置を採用した」と発表した。ただし制裁措置の具体的内容については明らかにしなかった。

中国軍はペロシ議長が台湾を離れた翌日の4日、台湾本島を東西南北から包囲するように設定した海空域で、大規模な軍事演習を開始した。4日の時点で中国軍が発射した弾道ミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)に着弾したとされる。

中国外交部の華春瑩報道官は5日の定例記者会見で同件に関連した質疑応答で、「中日両国の関連海域の境界は未確定だ。いわゆる『日本のEEZ』という言い方は存在しない」と述べた。

米国のブリンケン国務長官は5日、中国軍が始めた軍事演習について「不当かつ過激で非対称な」軍事的エスカレート行為であり、「彼らは危険な行為を新たなレベルに引き上げた」と批判した。

ブリンケン長官は5日に開催された東アジアサミット外相会議に出席するために、カンボジアの首都のプノンペンを訪れた。ブリンケン長官が同じくプノンペンを訪れた中国の王毅外相と個別に会談することはなかった。

ロイター通信によると、ある西側当局関係者によると、ブリンケン長官は東アジアサミットで、ペロシ米下院議長の訪台に対する中国の反応は「公然とした挑発」だと語った。また、ブリンケン長官は、中国が台湾海峡で過去最大規模の軍事演習をしたことについて、台湾だけでなく近隣諸国も脅迫しようとしていると述べたという。

米国政府は4日の時点で、中国の秦剛駐米国大使を呼び中国軍の台湾周辺での軍事演習に抗議した。

台湾の蘇貞昌行政院長(首相)は5日、中国軍の演習について「われわれは同じように自由と民主を認めている国々と善意による交流をしている」「まさか悪しき隣人がわれわれの門前で武力を誇示し、思うがままに軍事演習をすることで国際的に最も頻繁に利用されている航路を破壊し、周辺諸国や全世界から非難されることになるとは思わなかった」と論評し、さらに「台湾は中国の威嚇に屈しない」と述べた。(翻訳・編集/如月隼人)