11月30日、言論NPO(工藤泰志代表)は第18回日中共同世論調査結果を発表した。今回の世論調査はロシアのウクライナ侵略や米中の対立がアジアや世界の緊張が高まる中、今年夏に実施された。初めて、台湾海峡の問題やウクライナへのロシア侵略の是非についても調査対象になり、中国国民の約6割が「台湾海峡」での紛争の可能性を指摘。多くが「地域の安定」「平和解決」を志向している。また半数以上がロシアのウクライナ侵攻に反対していることが分かった。日中両国民は、北東アジア地域の平和に不安を抱き、深刻化する米中対立が大きな影響を与えていると見ていることが明らかになった。

◆課題は「平和共存」、「不戦」も急増

調査結果によると、台湾海峡での「軍事紛争の可能性」については、数年以内か、近い将来に軍事紛争が「起きる」と懸念している日本国民は 44%と半数近くに迫った一方、中国国民も 56%と6割近くに達した。また、台湾海峡での緊張の原因について、日本国民の63%が「中国」と見ているのに対し、中国国民の52%が「米国」と考えており、「米国、日本両国」が25%、「台湾」が11%で続いた。注目されるのは、米中対立の深刻化が、日中両国民のこの地域の平和に向けた意識をこの一年で大きく変えたことで、この傾向は中国に顕著に見られた。

一方で、東アジアの未来について、日中両国が目指すべき目標として「平和」を挙げた両国民の意識は昨年を大きく上回り、日本国民が 55%(昨年 53%)、中国国民が 64%(同 54%)と、それぞれ半数を超えた。

またこの地域で合意すべき課題として日中両国民が最も多く選んだのは「平和共存」で、昨年よりもそれぞれが増加した。さらに、中国で「不戦」を選ぶ人が、昨年の 14%から今年は 49%と大幅に増えた。

ロシアのウクライナ侵略に対する是非については「国連憲章や国際法に反しており、反対」と考える日本国民は 73%と圧倒的だった。中国国民も「反対」と「間違っている」を合わせると 50%超となり、「間違っていない」の39%を大幅に上回った。

ウクライナ侵攻に対する日中協力の具体的な対応で、中国国民で最も多いのは「難民の救出や人命救助での人道支援」の 57%で、「停戦の早期合意と合意後の国連平和維持軍の派遣」が48%で続いた。これに対して、日本国民で最も多いのは「ウクライナへの経済支援や生活資材の提供」の41%で、「人道支援」が40%、「平和維持軍」は23%だった。

◆「米中対立」が中国国民の対日感情に影響

深刻化する米中対立は両国民の相手国や日中関係に対する認識に影響している。日中両国民の相手国への印象は昨年よりもわずかに改善したが、それでも日本人は87%と9割近くが中国に「悪い」印象を抱き、中国人は 62%と6割が日本に「悪い」印象を持っている。

相手国に「悪い」印象を持つ理由として、日本国民で最も多いのは「尖閣周辺での中国の領海侵犯」(58%)、「共産党の一党支配という政治体制に違和感がある」(51%)など。中国国民が日本に「悪い」印象を持つ理由は、「中国の過去の侵略をきちんと反省していない」(78%)が圧倒的で、「日本が尖閣諸島を国有化し対立を引き起こしている」が 58%で続いた。

こうした中、中国側に日米関係を意識する回答が急増した。例えば「日本が米国と連携して中国を包囲している」(37%=昨年は 23%)、「外交において米国に追随する行動が理解できない」(21%=昨年は 8%)と、この一年で増加した。

◆障害は「領土対立」と「官民の信頼関係」

今の日中関係について「悪い」と見る日本国民は 56%と昨年の 54%よりも悪化。中国国民は37%と昨年(42%)よりやや好転したが、まだ改善と言える状況ではない。今後の日中関係も、「悪くなっていく」と懸念している日本国民は 37%、中国国民でも 29%もあり、それぞれ昨年よりも増えた。

両国民が今後の日中関係の障害として強く懸念しているのは「領土対立」「国民間の信頼関係」「政府間の信頼関係」。今回、中国国民で急増したのが「米中対立の行方」で、今年は 26%で昨年の 3%から8倍以上に増加した。また「日米同盟と日本の軍事増強」も 22%で昨年の 19%より増加した。



また、「中国を侵略した歴史についてきちんと謝罪し反省していないから」「日本は米国と連携して軍事、経済、イデオロギーなどの面から中国を包囲しようとしているから」「日本が魚釣島及び周辺諸島を国有化し、対立を引き起こしたから」「一部の政治家の言動が不適切だから」などが続いた。

◆日中関係は「重要」が増加、「アジアの平和と安定で協力が必要だから」

注目されるのは、こうした局面でも日中関係が「重要だ」と判断する国民は、日本国民が74%、中国国民が 71%と7割を超え、いずれも昨年を上回ったこと。特に日本では、日中関係が重要だと考える人が昨年から 8%も増加した。

ただ、その「理由」には変化が見られた。日本国民では、昨年同様、「中国が重要な貿易相手」が 59%で最も多く、「アジアの平和と安定に日中協力は必要」(48%)が続いた。これに対して、中国国民は「アジアの平和と安定に日中協力は必要」が 41%と、昨年の25%から大幅に増えた。現状の日中関係の改善で最も有効なことは何かとの設問で、両国民が共通するのは、「政府間の信頼向上」(日本31%、中国31%)、「両国首脳の信頼関係の強化」(日本24%、中国26%)や「尖閣諸島の領土問題の解決」(日本25%、中国40%)などが列挙された。この一年で見ると中国国民で急増したのは、昨年の29%から大きく増えた「尖閣諸島の領土問題の解決」(40%)であり、「北東アジアの紛争回避や持続的な平和実現への取り組み」も16%と、昨年の4%から増えた。

◆中国国民の関心は東アジアの平和や紛争回避に向かう

今年は日中国交正常化50周年。50周年後の今の日中関係を「満足している」日本国民は6%しかなく、43%が「不満」。中国国民は「満足している」が 35%に達したが、「不満」は 50%と半数を超えた。「不満」の理由で、両国民で最も多いのは、「現状の両国関係が友好的でないから」が両国民共に4割を超えている。

日本国民で次に多いのは、「国交正常化時に期待した地域の平和と安定がいまだに実現していない」(30%)、中国国民は「両国政府間での様々な合意がほとんど機能していない」(24%)。

調査結果発表記者会見で工藤代表は「両国民の平和を志向する意見が高まっていることに、新たな動きとして注目したい。ロシアのウクライナ侵攻への中国国民の反対が過半数を占めたことも興味深い」と語った。

この調査は、言論NPOと中国国際出版集団が2005年から18年間継続して実施。 日本の調査は18歳以上の男女を対象に2022年7月下旬から8月初旬まで日本全国で訪問留置回収法により実施され、有効回収標本数は1000。中国側の世論調査は北京・上海・広州・成都・瀋陽・武漢・南京・西安・青島・鄭州10都市で18歳以上の男女を対象に同年7月下旬から9月にかけて調査員による面接聴取法により実施され、有効回収標本は1528。(八牧浩行)