今年も、中国内の各地を定期的に列車で、そして長距離バス等で各省・自治区等の地方をまわるようにしている。特に地方の郷村や、現在も発展を続ける山村、今後も発展が期待できる地区を訪問し、町や村の様子とこれまでの推移等も比較したりしている。

しかしながら、訪問した半数以上の地区や村は、党や政府が大きな援助を行っている地元政府と中央政府が一体となって開発を進めてきたところが多い。そして党や政府とゆかりの深い地区へ官民で外部から誘客を図り観光を盛り上げようとしている。そのような観光のあり方を「紅色観光(旅行)」と呼んでいるが、各地とも大賑わいである。特に春節や国慶節等の繁忙期には入場者制限となる人数を大幅に超え、時たま問題となる場合もある。

このような党・政府と地方政府・村が一体となって地区の観光地としての開発を進めることから、予算・資金も豊富ではあるが、その後は一定の年数が経過すると(村に投入する予算も先細り)当初の村の賑わいもピタリと止んでしまうケースがあちこちで見られる。

これからの時代は、中国各地の大自然に囲まれた観光資源を大いに利用し、家族やFIT(海外個人旅行)客が自然を満喫し、そして自然と触れあいのできるような旅行のあり方を村や鎮・町単位で推進していくことが必要だ。いわば、このような「緑色観光・Green Tourism」を積極的に展開することが重要だ。日本国内でも地方自治体が積極的に推進しようとする、このようなエコツーリズムやグリーンツーリズムの旅のニーズは、中国内で大いに高まると思われる。

そして、中国内ではあまり知られていないが「黒色観光・Dark tourism」に、もっと力を入れて広く庶民・国民に告知すべきだ。この黒色観光とは、戦争や地震、そして自然災害により大きな被害を受けた地区・地域を保護し、今後はそれらを「負の遺産」として、後世にいつまでも心の中に残せるような取り組みが必要だ。

日本でいえば広島の原爆ドームや、ポーランドの「アウシュビッツ収容所」の遺産等が有名だ。中国内では「四川大地震」に見られた跡地を後世に残せるよう取り組んでいるが、まだまだ中国各地ではこれまでも「負の遺産」として後世に残し、語り継ぐところは沢山ある。

日本国内でも今、福岡・大分両県にまたがる九州豪雨により多くの命と被災の状況がメディアで報じられているが、中国の場合は国土が広いことと、地形の特質から毎年のようにこのような大きな、さまざまな災害が発生している。今後、これまでの各地での負の遺産を忘れないためにも、自治体も一体となってこのような「黒色観光」も取り上げていくべきだ。

■筆者プロフィール:秋澤文芳
東京(豊洲)在住。1973年千葉大学卒。日本旅行業協会を経て2010年より北京第二外国語学院大学旅游管理学部研究生として現在も在籍。工学院大孔子学院旅講師、東京都日中友好協会常務理事として交流促進。観光文化ツーリズム(株)代表として旅游企画・訪日インバウンドに取組む。