突然だが、あなたは友達の買い物の為に飛行機に乗って海を渡って行けるだろうか?私は行けない。しかし夫の中国人の友人は大陸から飛行機に乗って、夫の買い物のためにわざわざ香港に行ってくれた。今回はその時の話をしたいと思う。

「夫の買い物」と言うと少し語弊があるかもしれない。と言うのも、夫が欲しかった物は私の祖母のための香港の中医薬だったからだ。夫いわく、大陸で手に入るものは偽物が多いので、香港の本場で買わないとダメなのだそうだ。

筋肉痛や足の疲れに効くというその中医薬。私の祖母が足を傷めたのを聞いて、夫がプレゼントしたいと言ってくれた。しかし夫に香港に買いに行く時間はない。それなら仕方ないと「気持ちだけ受け取っておくよ」と言ったのも束の間、夫は大陸にいる中国人の友達に「香港に中医薬を買いに言ってくれない?」と頼んだのだ。まさかそこまですることはないと私は思った。いくら中国南部に住んでいるからと言っても、香港に飛行機で行くには飛行機代がかかるし、とんぼ帰りする訳にもいかないのでホテル代もかかる。さすがに承諾してくれないだろうと思っていたら、その友達はアッサリ香港に行ってくれた。

夫いわく、これは中国人にとっては「普通」らしい。諸費用を後から請求されることもないし、後から嫌味を言われるでもない。完全に友達からの「プレゼント」である。だから夫は友達が今回の件でいくら支払ってくれたのか知らない。大体の概算を出すことはできるが、その友人は夫に一銭も要求しなかった。例えば日本人の私が友達に「沖縄の○○が欲しい」と言われたら飛行機に乗ってホテルに泊まって、それを買いに行くだろうか?正直行かないと思う。そもそも日本人としてはそんなことを友達に頼んだら、その友情を失いそうだ。

この話には後日談がある。薬を買いに行ってくれた友人が、今度は夫にこんな頼みごとをしたのである。「妹が日本の◯◯というブランドの服を欲しがっている。お金は払うので何着か買ってくれないか」と。もちろん答えはOKだ。なにせ彼は私の祖母の薬のためにわざわざ飛行機に乗って海を渡ってくれたのである。お金を払うと言ってくれたが、そんなものは必要ない。夫と私はそのブランドのショップへ行き(ちなみにその服は結構ギャル系だった)数万円分見繕って中国に送った。値段がトントンになったかどうかはハッキリしない。

しかし中国のギブアンドテイクは「なんとなく」なのである。今回どちらかが多めに出したとしても、それは「将来も世話になるかもしれない。これからも宜しくお願いします」のために取っておいているのだ。

中国の助け合いは簡単に海を越える。私は中国人夫を持ったことでその壮大なスケールの「助け合い」を経験することができた。中国人は良い人ばかりではない。嫌な人もたくさんいるし、マナーの悪い人もいる。しかしこんな、どデカい助け合いをしているのも紛れも無い「中国人」なのだ。

■筆者プロフィール:むらさわりこ
1989年日本生まれ。22歳の時に2歳年上の福建省出身の中国人男性と結婚。英語を独学で習得後、英会話講師として働く傍ら中国のテレビなどを通し中国語も独学で習得。趣味は語学と読書。図書館があまりに好きで毎週通っている。結婚前はベトナム、ニュージーランド、モンゴル、カナダ、ラオス、フランスなど様々な国を一人で渡り歩く。自分のやりたい事や面白い事に国境や言葉の壁は関係ないと考えている。