「生まれた家庭環境によって、子どもの将来が左右されている現状が日本にあり、こうした現状を変えたい」と語るのはNPO(特定非営利活動)法人「Learning for All」代表理事の李炯植さん。日本の子どもの6人に1人が貧困状態にあると言われている。親世代の経済格差が、子どもの受けられる教育の格差につながり、それが子どもの学歴・就職の 格差につながる。そして、子どもが親になった時に、また貧困世帯となり、貧困が世代間で連鎖してしまう――。

Learning for Allは、様々な困難を抱える子どもに対して「質の高い学習機会」を提供し、課題に直接向き合った経験を通して、社会課題を解決する大学生を育成・輩出する団体である。教育の機会に恵まれない子どもたちに対して、大学生ボランティアを派遣し、放課後の学校や公民館などで学習支援教室を運営している。

◆子どもたちが持つ可能性を引き出す

教室では一人ひとりの子どもたちが持つ可能性を引き出し、最良の未来に進んでいくためのサポートしている。李さんは「自分の将来を前向きに考えられなかった子どもも、少しずつ前向きになり、自分の将来の夢や目標を語り始めます。進学できないと言われていた高校に努力の末に進学していく子どもや、自分の夢を叶えるために大学進学を勝ち取った子どももいます」と語る。

Learning for All の設立は6年前。李さんが大学3年生の時である。自身も生活困窮世帯が多い地域に生まれ育ち、「格差」 や「貧困」を目のあたりにしてきた。家庭の経済的な要因で希望する進路に進むことができず、夢を諦めないといけない人もたくさんいた。在学していた東京大学では、世帯所得も文化的資産も持ち合わせた人が多く、地元とのギャップに戸惑い、日本にも「階層」があることを知った。生まれた地域や家庭環境で人生が大きく左右されることへの実感はさらに深まり、「子どもの貧困」という社会課題の解決に直接コミットすべきだとの思いに至ったという。

ボランティアで子ども達を指導する大学生教師に対しても、「一生ものの経験」になるようなプログラムを目指し、約50時間の研修機会を提供している。

これまでに、学習困難な状態にあった約5000人の子どもを支援し、1600人以上の大学生ボランティアが参加した。モットーは「子ども目線」「絶え間ない学習」「当事者意識」の3点。教師1人に対して生徒1〜3人の個別指導で、成績向上を図る。

大学生教師の1人は「教室でのプログラムは、教育格差という問題を前に、自分の力で教育を変えられる。やりがいを教えて続けてくれる場だった」と語っている。大学生教師の3〜4割は教職に就くが、あとは官庁、一般企業などに就職し、教師体験を生かして活躍している。
           
◆支援を必要としている子どもは多い

日本全国に支援を必要としている子どもたちはまだ多く、1人でも多くの子どもたちに支援が届けられるよう、支援の輪を広げていきたいと考えている。学習支援事業をより広く展開していくとともに、より多面的に子ども達の支援ができるように新規事業を立ち上げていくことも検討中。子どもの貧困という社会課題の解決に向け、提言などのアクションも起こすことも視野に入れている。

李さんは、「全国子どもの貧困・教育支援団体協議会」の理事も務め、横断的な会議やシンポジウムなどにも参加。全国の自治体や企業などに対するアドバイザリー事業も行っている。「自ら学習拠点を運営するだけでなく、子どもたちの人生が変わっていくような支援をしたい」と抱負を述べている。(八牧浩行)