8月2日の「日経MJ」新聞に「留学生バイト 白熱の争奪戦」という記事が掲載された。日本は労働力不足で、日本のサービス業にとって留学生がすでに重要な戦力になっているという。しかし、日本企業がそんなに留学生の労働力を頼りにして大丈夫だろうか。

資格外活動には制限があり、外国人留学生をアルバイトとして雇う場合、週28時間という上限がある。正直言って、「留学生と日本経済」に関する課題を考えると、ポイントは単にアルバイトではないと言わざるを得ない。さらにいうと、留学生が求めるものと求められるものの間にギャップがあるという問題を考えるべきだ。日本政府と日本企業はしっかりと留学生の現状を把握しているだろうか。

80年代当時、来日した留学生にとってアルバイトは確かに死活問題であった。80年代の中国人にとっては、日本はいろんな意味で雲の上の存在で、日本で仕事できることはまるで夢のようなことであった。80年代、日本の1カ月のアルバイト代は中国人の年収に相当していた。

17年前、私は留学生として来日。当時一般的な留学生はアルバイトをしながら学校に通っていた。私もその中の1人であった。最初の2年間の週末はほとんどケーキ屋さんとパン屋さんでアルバイトし、過ごしていた。その後、大学院の2年間、幸いなことにある私鉄財団から奨学金をもらうことができ、やっと勉強に専念できた。つまり、昔の留学生は勉強とアルバイトの二足のわらじだったのだ。

ちなみに、平成28年5月1日現在の独立行政法人日本学生支援機構の外国人留学生在籍状況調査によると、外国人留学生は23万9287人であり、留学生数の多い国・地域は中国がトップで9万8483人である。

近年、仕事の関係で、私は普段多くの中国人留学生と接している。私の目から見て、在日中国人留学生の姿が変わりつつある。アルバイトに明け暮れる人が減っていく傾向がみられる。進学希望の留学生がかなり増えてきた。その証の一つとしては、大久保と高田馬場に多くの留学生向け進学塾が点在していること。この中で、創業13年の大手塾である名校志向塾には毎年2000人以上の留学生が通っていることから、マスコミにも注目されるようになった。留学生が一所懸命日本で新しい知識を身に付けようとすることは最も称賛されるべきである。

勉強時間以外に、休日に日本列島をあちこち旅する留学生も大勢いる。これは昔の貧乏な留学生には考えられないことである。勉強のほか、ゲームに熱中している留学生も少なくない。多額のお金を費やし最新のゲームソフトを購入し、ゲームに夢中になり過ぎて勉強の時間がなくなる。これは極めて少ないケースだが、最もいけないことだろう。

もちろん、アルバイトをする留学生は今でもいる。しかし、留学生のアルバイトに対する認識もある程度変わった。多くの人が短時間のアルバイトを希望し、アルバイトを通して、日本社会を認識しようとしている。単にお金がほしい、あるいは学費が足りないからアルバイトをするわけではなくなっているようだ。

留学生がいろんな角度から日本経済にかかわっている。ほとんど親のお金とはいえ、日本でマンションを買う留学生もいる。中国人留学生の間で流行しているお金の稼ぎ方に、「代購」というものがある。つまり、中国国内の人々のために日本製品の代理買い付けをする。もちろん、それは大規模な取引となると違法になってしまう可能性がある。

留学生の姿が変化する背景はやはり中国経済が発展していることが影響している。また、留学生は日本の観光産業にとって大きな潜在市場となるであろう。例えば、留学生が初めて来日する際に、両親が同行するケースをよく見かける。どうしてもわが子の勉強と宿泊の環境を自分の目で確かめたいためだ。子供の日本留学期間中、何度も日本に訪れる人もおり、日本留学を決める前に「学校見学旅行」で日本に来る学生もいる。

ちなみに、2年前、私はかつて日本旅行に来た中国の田舎にある私営企業の数人の経営者を連れて、早稲田大学を見学した。彼らの中の1人が子どもを日本に留学させたいと考えていたが、日本の大学は早稲田大学しか知らないため、早稲田大学を見学したいとの要望だった。彼らは初めての日本観光であったのが、最初に行く場所は大学。大隈記念講堂の前に、彼らは興奮気味で記念写真を撮ったりする。彼ら自身は高等教育を受けられなかった境遇を持ち、企業経営で成功した後、子どもに良い教育を受けさせたいと考えていたのだ。彼らのように、訪日中国人観光客は「爆買い」する人ばかりではなく、教育と知識に憧れる人もいるのだ。

1つささやかな提案をしたい。旅行会社と学校が連携し、「日本の大学見学ツアー」、「子どもの入学式・卒業式見学ツアー」を計画してはいかがか、と。つまり留学生の親を日本に呼ぶこと。子どもの入学式・卒業式に参加できることは、一生の思い出になるだろう。

こうしたことを踏まえ、「留学生にバイトをさせよう」という考え方は時代遅れではないかと思う。単に留学生を短期労働者として使うのはもったいない。また、日本の少子高齢化社会が進んでいく中、大学の経営が厳しくなりつつある。あえて言うと、日本の大学・専門学校が中国現地で留学生募集を行ったほうがいいと考える。中国人が日本に留学する場合、「距離が近い」「欧米の大学より学費が安い」「奨学金制度も充実している」といったメリットがある。

20数年前、多額の借金を抱えて日本に来た中国人留学生の先駆者と違って、現在、中国のサラリーマン家庭の子どもでも日本留学できるようになった。日本は教育の質が高い国だ。かつての留学生であった私も含め、多くの留学生がそういうふうに認識しているに違いない。近年中国人留学生のほか、東南アジアの留学生も随分増えてきた。留学生を知日派の人材として育成させ、また留学生という「経済力」を活用する。日本にとって一石二鳥のやり方だと思っている。

■筆者プロフィール:黄 文葦
在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。