中国人の夫と日本で生活していると、夫の友人や、友人の友人などから頼み事や質問をされることがある。日本にいる中国人は、中国人コミュニティの中で生活していることも多く日本に住んでいても意外と日本のことを知らなかったりするのだ。そんな彼らにとって私は時に貴重な(?)日本人だったりする。今回は私がそんな夫の遠い友人や知り合いから受けた頼み事や質問のことを書いていきたいと思う。

あるとき夫が私に聞いた。「日本では手術するときお医者さんにいくらお金を渡せば良いの?」と。質問の意味が分からなかった私は「なんの手術をするかによって違うんじゃない?」と答えた。すると夫がこう言う。「違うよ、お医者さんにいくら賄賂を渡せば良いの?って聞いてるの!友達の親戚のおじさんが日本で手術するんだけど、いくら渡したら良いか分からないから俺の奥さんに聞いて、って」なんとも中国人らしい質問だと驚きながらも私は「日本は別に賄賂なんていらないよ」と答える。

すると夫は「お金あげないと、ちゃんと手術してくれないかも知れない!ちゃんと答えて!!10万?15万?」と譲らない。今は減りつつあるようだが、日本にも「心付け」といってお礼としてお金を渡す文化がある。渡さなかった場合その人の評価を下げる可能性はあるにしても、医者が適当に手術をしたりすることはない(と信じている)。このときはこのことを説明するのに苦労した。なにしろ夫はかなりの金額を積まないと適当に手術され、助からなかったとしても「そんなの知らないよ」と医者から言われると思っているのだ。日本人である私と生活している夫でさえこの疑いようなのだから、果たして彼の友人のおじさんは信じてくれたであろうか。

裏金がいるというのは、あくまで個人が捉えている事実で、全ての中国の病院で裏金がいるかは私には確かめようがない。夫や周りの中国人が思い込んでいるだけかも知れない。しかし、そのように考えている中国人にとって心付けがあるかないかがその治療の質を左右しない、お医者さんが患者を「お客様」のように丁寧に扱ってくれ、最善を尽くした医療が受けられる日本の病院は彼らからしたら信じられないくらいの好待遇なのだろう。

こんな頼み事をされた時もあった。夫が1枚の紙を差し出して言う。「友達のお姉さんの知り合いの親戚の子(むしろ遠すぎて夫も知り合いではない)が日本の学校に入学するんだけど、日本語での推薦状がいるんだって。でも日本人の知り合いもいないし、その人日本語あまりできないから、りこ書いてくれる?」。この頼み事は驚きを超えて面白かった。友達のお姉さんの知り合いの親戚の子?知りもしない中国人の若者の推薦状をどうやって書いたら良いのか…しかし夫は真剣そのもの。日本在住の中国人コミュニティの中にいる中国人は人脈を駆使して助け合いながら日々の暮らしを乗り越えているのだ。

私も中国人夫を持つことで、何となくそのコミュニティに半分足を突っ込んでいる。そこで私は「推薦文で使える日本語表現」を紙に書いた。「〇〇さんの長所は〜です」「好奇心旺盛で学習意欲が高いです」「思いやりに溢れ家族や友人を大切にします」などなど、思いつく限りの日本語表現を紙に書いて「この中の表現から使えるものを拾って何とか書いて」と夫に託した。

その「夫の友人のお姉さんの親戚の子」はなんとか推薦文を書き上げたらしく、夫の友人からお礼に、その友人の中国の両親が作ったという乾燥ライチを頂いた。役に立てるなら、なるべく色んなお手伝いをしていきたいが、ときどき私の想像を超える質問や頼み事がやってくるので、私としては面白い限りなのである。

■筆者プロフィール:むらさわりこ
1989年日本生まれ。22歳の時に2歳年上の福建省出身の中国人男性と結婚。英語を独学で習得後、英会話講師として働く傍ら中国のテレビなどを通し中国語も独学で習得。趣味は語学と読書。図書館があまりに好きで毎週通っている。結婚前はベトナム、ニュージーランド、モンゴル、カナダ、ラオス、フランスなど様々な国を一人で渡り歩く。自分のやりたい事や面白い事に国境や言葉の壁は関係ないと考えている。