2017年10月27日、米保守系シンクタンク、ヘリテージ財団のウォルター・ローマン・アジア研究センター長が「アジアと同盟国への米政府の責務」と題して会見した。米国が南シナ海で最も重視している利益は海洋航行の自由であり、「中国側が理解することが必要だ」と強調。「米中間で万が一争いが勃発するとしたらこの点をめぐってであろう」と警告した。

トランプ政権の対北朝鮮政策について、「軍事攻撃はグアムを含む米国や同盟国を標的にしない限りゼロだと思う」と指摘した上で、最大限の圧力をかけ、北朝鮮を再び交渉のテーブルにつける「出口戦略」が必要だと提起した。

同センター長の発言要旨は次の通り。

(1)軍事面
トランプ政権は軍事的な側面では米海軍の増強を志向している。艦船350隻と3隻の空母を増やさなければならないと見ている。議会が年末に承認すれば2017年度に国防費が300億ドル増となり、海軍力が増強される。

15年にわたって中東地域の戦争が続いた結果、アジア地域に展開する艦艇がぜい弱となったのは否めない。国防総省の優先課題は船舶の配備と既存の艦艇のメンテナンスである。

トランプ政権は米西部太平洋地域にもっとコミットすべきである。南シナ海での「航海の自由作戦は2015年からオバマ大統領の退陣まで、4回実施しているが限定的だった。しかも国際法上の極めて狭い範囲だった。トランプ大統領になって海軍は能動的となり、5月から4回実施している。

南シナ海において最も重視している米国の利益は「海洋航行の自由」であり、長年維持してきた、交渉の余地のない中核的な価値で、現政権でも、次期政権でも変わらない。この点について中国側が理解することが必要だ。米中間で万が一争いが勃発するとしたらこの点をめぐってであろう。

(2)外交面

トランプ政権は一定程度いい仕事をしていると評価する。マティス国防長官、ティラーソン国務大臣が早く訪日し、安倍首相や文在寅大統領の訪米も成功だった。東南アジア首脳も多数訪米している。対日批判をした人物としてトランプ登場したが、安倍首相の訪米などの取り組みが功を奏したと思う。

11月のトランプ大統領が日韓中の3カ国を訪問。アジア地域に対し引き続き関与することを表明する。トランプ氏のAPEC首脳会議(ベトナム)への出席決定はサプライズでよかったが、フィリピンで開催される東アジア首脳会議欠席は過ちだ。

(3)民主主義・人権など価値観

米政権は外交政策として40年以上民主主義や人権を重視してきた。トランプ氏の発言やツイッターのつぶやきだけでなく、政権幹部の発言や行動で判断すべきである。人権など意見の食い違いはあるが対立しているわけではない。ティラーソン国務長官らは「人身売買」「宗教の自由」などを度々取り上げている。昨日の新たな北朝鮮制裁発表も、「人権」に触れている。ペンス副大統領もミャンマーの「ロヒンギャ弾圧」に対し厳しい対応を取っている。トランプ大統領も米国は民主主義に関する模範になるべきだと考え、議会でも言及している。現政権で「人権」が放棄されることはない。

(4)貿易経済

楽観視できない。TPP(環太平洋経済連携)からの撤退を決断したり、米韓FTA(自由貿易協定)の見直しを打ち出したりしているが、代替案がないのは問題である。トランプ政権派は貿易赤字縮小だけに気を取られており、日米FTAやNAFTA見直しなど新たな問題への取り組んでいない。ただ米国内で反自由貿易主義と、自由貿易主義両陣営の間で論争があり、(一方に暴走する)最悪の事態は免れていることは救いである。

(5)トランプ政権の対北朝鮮政策

軍事攻撃の可能性は、ゼロではないがゼロに近い。予防的に北朝鮮の攻撃を食い止めるために軍事的な行動をとることはない。グアムを含む米国や同盟国を標的にしない限りゼロだと思う。「出口戦略」は、最大限の圧力をかけ、再び交渉のテーブルにつけることだ。アジア歴訪で、最重要課題である。。日本でも韓国でも中国でも東南アジアでの会談でもテーマになる。(八牧浩行)