上海ディズニーランドで園内への食べ物の持ち込みが禁止されていることが物議を醸している問題で、中国メディアの人民網は14日、「上海ディズニーランドに4つの疑問:持ち物検査、ダブルスタンダードはなぜか」と題する記事を掲載した。

発端は今年初め、中国の大学生が上海ディズニーランドに入ろうとしたところ、スタッフからかばんの中身を検査され、所持していた食べ物について「80元(約1200円)支払って預けるか、その場で食べるか、捨てるかしなければ入園させられない」と言われたこと。この対応に不満を覚えた大学生は、後日、裁判所に訴えを起こした。

この騒動が注目を集めると、各方面から「食べ物の持ち込み禁止はおかしい」「かばんの中身を検査されるのはプライバシーの侵害」などと批判が殺到。上海ディズニーランドは「食べ物の持ち込みに関する規定は、中国の大部分のテーマパークやアジアにあるその他のディズニーランドと同様」との声明を発表したが、弁護士ら専門家からも「消費者権益保護法に違反する」との見解が示されるなど、騒動は拡大している。人民網の記事は、専門家の意見を聞きながら「4つの疑問」から騒動を考察している。

まず「疑問1」は、「なぜダブルスタンダードなのか。欧米は良くてアジアはだめなのか」だ。

記事は、東京、上海、香港のアジアの3つのパークでは食べ物の持ち込みが禁止されているものの、米仏の3つのパークでは禁止されていないとしている。だが、東京ディズニーリゾートの公式ウェブサイトによると、食べ物の園内への持ち込み自体は可能のようだ。ただし食べるのはNGで、持ち込んだ食べ物は一旦パーク外のピクニックエリアに持ち出して食べ、再入園するよう案内している。なお、アレルギーがある場合などは園内でも食べることが可能とのことだ。

記事によると、上海ディズニーランドは開園当初、食べ物持ち込みに対する厳格な規定は設けられていなかった。しかし、2017年11月15日から、食品、酒類、600ミリリットルを超える飲料などの持ち込みが禁止されたという。

記事は、「上海ディズニーランドをめぐっては、過去にもダブルスタンダードが問題になったことがある」と指摘。18年に来園した10歳の少女は、規定の身長を上回っていたことからチケットの差額分が請求された。中国では地下鉄などで身長を基準に料金が決められることは一般的だが、少女の保護者は他の5つのパークでは年齢を基準にしていることを挙げ、「ダブルスタンダードかつ差別的な規定」として裁判所に訴えた。

今回の大学生の訴訟を担当する袁麗(ユエン・リー)弁護士は、ディズニーランドの規定について「アジア地区に対する差別の疑いがある」との見解を示した。また、中国消費者協会専門家委員会の邱宝昌(チウ・バオチャン)弁護士は「上海ディズニーランドが引用する国際慣例は企業側に有利なものだけ」と指摘。北京の法律事務所の危ゲイ霖(ウェイ・イーリン)弁護士も、「食べ物の持ち込み禁止は、一方的に消費者の権利を制限するもの」と述べているという。

続いて「疑問2」は、「なぜ強制的に荷物検査が行われるのか。来園者のプライバシーはどのように保障するのか」だ。

人民網の記者が13日に現地を取材したところ、荷物検査は変わらずに行われていたという。記者が持ち込もうとしたパンは、スタッフからその場で食べるよう求められた。近くにいた4人家族は、検査場の脇で立ったまま寿司などを食べていたという。同様に、持ち込みを拒否されたということだった。父親は、「初めて来たので、食べ物の持ち込みが禁止されているとは知らなかった。駅の出口で買ったばかりの食べ物。捨てるにはもったいない」と話していたという。

また、大量のパンの持ち込みを拒否された来園客が「なぜかばんを検査するんだ。プライバシーの侵害だ」とスタッフに詰め寄る場面もあったという。スタッフが「ルールですから。ご協力ください」と答えると、来園客はスマートフォンを取り出し撮影。スタッフは「肖像権の侵害です」と動画の削除を求めるなど、押し問答が続いていたという。

来園客は「欧米では検査なんてされない。アジア人に対する差別だ」などと訴えたという。これについて前出の危弁護士は、「企業経営者には来園客のかばんの中身を検査する権利はない。わが国の法律では、これは権利侵害に該当する行為」と解説。邱弁護士も「消費者の人格や尊厳、個人のプライバシー権を傷つけている疑いがある。危険物を所持している疑いがあれば警察に通報し、警察の職権の下でかばんを検査すればいい。また、安全検査であれば構わない。安全検査はスキャンするもので、かばんを開いて中を捜索してはならない。上海ディズニーランドはかばんの中のものを一つひとつ取り出している」と指摘したという。

そして「疑問3」は、「食べ物の持ち込み禁止は園内の衛生環境を保つため?園内で販売されている飲食物は臭わないのか」とした。

記事によると、上海ディズニーランド側は食べ物持ち込み禁止について、「来園客が、臭いの特殊な、あるいは安全に問題のある食品を持ち込み、ごみ箱に捨てる可能性がある。当該規定は、園内の衛生環境と安全を維持するためにつくられた」と説明しているという。しかし、邱弁護士は「上海ディズニーランドはごみ箱を多く設置して(清潔を保ち)、来園客に利用を求めるなどすればいい。衛生面の負担が大きいからと、その負担を来園客に押し付けてはならない」と指摘したという。

また、ネット上では「衛生面が理由というのはおかしい。園内でも飲食物は販売されており、同じようにごみが出る。なぜ持ち込みを禁止するか。それは、園内の高い飲食物を売って稼ぎたいからだ」といった声も上がっている。

中国消費者協会法律理論研究部の陳剣(チェン・ジエン)主任は「園内で販売されている飲食物は高い。消費者には、園内の物を消費するか否かを選択する権利がある」とし、「企業の経営権は消費者の権利を奪ったり、制約したりする基礎の上に行われてはならない」と指摘。また、同協会の副秘書長兼広報担当の董祝礼(ドン・ジューリー)氏は「企業経営者には価格決定権があるが、それには条件がある」とし、「まず、定価とコストの比率が合理的であること。もう一つは、公平公正な市場秩序に影響しないこと」と指摘した。

最後の「疑問4」は、「誰がディズニーランドのダブルスタンダードを是正するのか。誰が消費者の権利を保障するのか」としている。

記事によると、今回の問題が物議を醸してから、消費者の間には関連部門の調査を望む声が相次いだ。人民網の記者が上海市市場監督管理局に問い合わせると、「状況を記録した。7営業日以内に問題について処理する」との回答が得られたという。

前出の危弁護士は「最高人民法院は2014年に、酒類の持ち込み禁止や、個室内で最低消費額の設定は無効であるとの判決を下している」「横暴であったり、非合理的であったりする規定については、行政処罰や責任についてさらなる明確化が必要」などと指摘しているという。

なお、14日午後3時現在、中国版ツイッター・微博(ウェイボー)の検索キーワードランキングで関連のワードが2位になるほどこの話題は注目を集めている。(翻訳・編集/北田)