新型コロナウイリスの感染拡大によって内外経済は大きなダメージを被った。経済活動が再開され最悪期を脱したとの楽観論も浮上しており、各国政府による空前絶後の財政出動と金融緩和により、急回復を期待する声も多いが、「感染2波」「バブル」懸念がくすぶる。

◆城南信金理事長「融資だけでは何も解決しない」

城南信用金庫の川本恭治理事長は6月4日の日本記者クラブでの記者会見で、「取引先の中小企業の間ではリーマン・ショックと東日本大震災をあわせた以上の打撃との声が聞かれる」と指摘。「多くの中小企業経営者は大きな損害を受けており、廃業したくても手元の資金がないという悲痛な相談が連日寄せられている」と打ち明けた。城南信用金庫はコロナ禍前の5倍の融資案件を実行しているが、「融資だけでは何も解決しない。地域の雇用を守るためにも中小企業の本業への支援が大切だ」と訴えた。
 
東日本大震災の翌年の2012年、城南信用金庫は被災地復興支援を目的にした商談会「よい仕事おこしフェア」を開催。被災地の中小企業経営者を東京に集め、都内の百貨店などの担当者との商談の場を設けた。これを機に、通年で商談できるオンラインサイトを開設、全国各地の信用金庫の多くが同サイトに参加した。城南信金はこのネットワークを生かし、全国の信金と連携して、中小企業の販路開拓支援に取り組んでいる。

日本の内閣府が8日発表した2020年1〜3月期の国内総生産(GDP)改定値は、実質年率換算で2.2%減となった。4〜6月期の法人企業景気予測調査によると、大企業全産業の景況判断指数(BSI)はマイナス47.6。リーマン・ショック直後の09年1〜3月期(マイナス51.3)に次ぐ低さとなった。新型コロナウイルス感染拡大を受けた外出自粛や休業要請が、企業活動に深刻なダメージを与えた。宿泊・飲食サービスの業績悪化だけでなく、サプライチェーン混乱の影響が製造業にも及んだ。

◆20年の成長率予想 日米はマイナス6%

世界銀行は6月8日、2020年の世界経済が第2次世界大戦後で最悪の景気後退になるとの予測を公表した。「世界経済は過去例のないスピードで下振れしている」とも指摘。20年の成長率をマイナス5.2%と予測。日本はマイナス6.1%と、金融危機直後の09年(5.4%減)よりも厳しい景気後退になると見込む。感染者数が世界最大の米国もマイナス6.1%、ユーロ圏はマイナス9.1%といずれも大幅な落ち込みである。新興国では、最初に感染が拡大して収束も早かった中国が1.0%のプラス成長を確保する。感染増に歯止めがかからないブラジル、インドの成長率見通しは大幅ダウン。新興・途上国は全体で2.5%縮小し、過去60年間で初めてマイナス成長に転落する。

ただ、このシナリオは、新型コロナの影響が20年後半には落ち着くことが前提で、実際は「圧倒的な下振れリスクがある」という。最大のウイリス感染国・米国やインド、ブラジルなどは拡大に歯止めがかからない。抑え込んだと見られた中国や韓国でも感染が再発している。有力なワクチン開発の決め手に欠く中、感染第2波のリスクが拭えない。世銀の厳しい予測では20年の世界の成長率はマイナス8%と急落し、21年もプラス1%しか持ち直さないという。

問題は、世界全体の成長を主導する牽引役が見当たらないことだ。世銀は今回のコロナ危機を、世界経済の90%以上が連鎖的に縮小する「世界同時後退局面」と指摘。08年のリーマン金融危機時は中国など新興国がけん引役となったが、今回の予測では南米や南アジア、アフリカの21年の成長率は、低い水準にとどまる。

一方世界主要国は合計で8兆ドル(約880兆円)規模の財政出動に踏み切り、景気の立て直しを急いでいる。投資家や企業家の心理が持ち直す可能性もある。新型コロナ経済対策により、日米欧をはじめ各国・地域で財政赤字と債務残高が急増し、中央銀行のバランスシートが急速に悪化している。

◆日銀株買い拡大、財政赤字がGDPの2倍に

日本でも新型コロナウイルス感染症に対応する令和2年度第2次補正予算が6月中旬に成立した。2次補正予算案の歳出総額は31兆9114億円。従業員への休業手当の一部を助成する「雇用調整助成金」の拡充(4519億円)や、事業者の家賃負担を軽減する「家賃支援給付金」の創設(2兆242億円)などを盛り込み、予備費として10兆円を計上した。売り上げが減少した中小企業向けの補助金である持続化給付金は、2回の補正予算計で4・2兆円に上り、さらに予備費の投入も予想される。全国民に1人当たり10万円を支給する特別定額給付金など家計や企業に対する援助の合計は30兆円程度と推計され、国民1人当たりで約25万円に相当。安倍首相が「空前絶後」と強調する規模に膨らんだ。

日銀によるETF買い(投資信託による事実上の株購入)も未曽有の巨額に達した。過剰流動性が高まった1980年代後半の東京市場と酷似している。当時の超低金利と財政出動により、その後の「バブルと崩壊」「失われた30年」の誘因となった。日本では2020年度の国債発行額がGDP比で18%にのぼり、累積財政赤字はGDPの2倍を大幅に超過、主要国で最悪水準となった。

格付け会社の米S&Pは日本政府の長期債務(国債)格付けの見通しを「ポジティブ」から「安定的」に引き下げた。金融市場関係者は「リーマン・ショック前は証券化商品、今回は超金融緩和が演出する株高バブルはいつ崩れてもおかしくない」と警告している。(八牧浩行)