米中対立にもかかわらず米国企業の対中貿易投資は急拡大している。中国・上海で11月5日から開催された「中国国際輸入博覧会(輸入博)」では世界最大の中国市場の成長を取り込もうと多くの外国企業が最新の商品や技術を披露した。特に目立ったのは米国の出展企業で、過去最多となり熱気に包まれた。トランプ政権から続く米国の「対中デカップリング(切り離し)」は完全に失敗に終わったと見られている。米中の各レベルの対話が増えており、米中関係が改善に向かう兆しが出始めている。

◆中国輸入博に賭ける米企業の熱気

輸入博は、米中対立の激化を背景に、中国の市場開放姿勢をアピールするイベントとして2018年に始まり、今回で4回目。米国の企業や団体の参加数は200超で過去最多となった。

ゼネラル・モーターズ(GM)、マイクロソフト、アップル、ナイキをはじめ従来からの進出企業の多くは派手な巨大ディスプレイで会場を圧倒。メガ企業のアマゾンなど初出展の企業も目立ち、米中対立が続く中でも中国市場のビジネスチャンスを重視する姿勢が鮮明だった。中国税関総署によると、中国の最大の貿易相手国である米国との輸出入額は1〜9月で5431億ドル(約62兆円)と、前年同期から約35%増えた。中国の対米黒字は過去最高を更新するなど、米中間の貿易は拡大を続けている。

同署発表の2021年10月の貿易統計によると、全体の輸出は前年同月比27%増の3002億ドル(約34兆円)だった。品目別では、パソコンと衣類がそれぞれ前年同月より2割増え、9月から伸びを拡大させた。輸入は20%増の2156億ドルだった。品目では、天然ガスが2.4倍、原油が6割それぞれ増えた。最大の輸入品目である半導体は1割超増加した。

輸出から輸入を差し引いた貿易黒字は845億ドルで、5割近くも増えた。新型コロナウイルスがまん延する前の19年10月と比べると、輸出は41%、輸入は26%それぞれ増大している。

◆世界貿易に占めるシェア、米国を凌駕

中国が世界貿易機関(WTO)に加盟して、12月で20年を迎える。この間に貿易総額は9倍に拡大し、世界貿易に占めるシェアは01年の4%から20年には13%に達し、13年には米国を追い抜き、日本を含む多くの国にとって最大の貿易相手国になった。5日に上海市で開いたハイレベルフォーラムでは習氏の盟友、王岐山国家副主席が「中国は引き続き高水準の対外開放を広げていく」とアピールした。

中国は安い人件費を武器に「世界の工場」として輸出を急拡大する一方、段階的な関税の引き下げで輸入も増やした。国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、20年の輸出は2001年の9.7倍、輸入は同8.4倍となった。

貿易総額は同じ期間に9.1倍に膨らみ、2.8倍だった世界貿易の拡大ペースを大きく上回った。輸出品目をみると、加盟当初は労働集約的な衣料品などが主力だったが、最近ではパソコンやスマートフォンの出荷も伸びている。

米国がインド太平洋地域での自由貿易協定(FTA)の枠組みに慎重な姿勢をとる中で、中国は積極的な参加を志向。東アジア包括的経済連携(RCEP)は22年1月の発効が決まった。今年9月には自由化の水準がより高い環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟も申請した。

◆テスラの急成長、中国市場が支える

米電気自動車(EV)大手、テスラは中国市場で成功した米企業の典型と言える。2021年7〜9月期決算は売上高と利益がともに過去最高を更新し、時価総額は1兆ドル(約110兆円)を突破。その驚異的な成長は中国事業が支えている。

1〜9月のテスラの中国販売台数は前年同期実績の約3.5倍に拡大。テスラの中国の販売台数は4〜6月から米国を安定的に上回るようになり、7〜9月には全体の50%に達した。2年前に稼働した上海工場の生産台数は米国工場を上回った。中国からテスラや中国企業がEVを世界中に輸出し急増している。時価総額で世界1、2位のマイクロソフトとアップルは中国事業のウエイトが大きいが、テスラも2社の中国重視戦略を追いかけている。

人口14億人を擁する世界最大の消費市場を掴もうと米企業は必死である。中国の通信機器大手、ファーウェイと半導体メーカーの中芯国際集成電路製造(SMIC)が米国の事実上の禁輸リストに指定されているにもかかわらず、米国内の両社のサプライヤーがかなりの額の製品・技術の輸出許可を取得していた事実が判明した。昨年11月から今年4月までの期間に、ファーウェイ向けの計610億ドル(約7兆円)の製品・技術の販売について計113件の輸出許可が付与され、SMICには420億ドル近い製品・技術を販売するために188件の許可が与えられた。許可は4年間有効で、SMICの米サプライヤーによる輸出許可申請の90%強が承認され、ファーウェイの米サプライヤーによる申請は89%に許可が下りたという。

脱炭素で、中国は脱炭素(カーボンニュートラル)を今世紀中頃までに実施すると宣言しているが、米企業は保有ライセンスを前面に、中国企業への売り込みに血道をあげている。米国金融業界は中国で日本より多くのビジネス上の特権を持ちさらに拡大している。米中間の官民やの対話・交流は頻繁に行われており、中国に行くと米国人や米ブランドショップが目立ち、GMなどアメリカ車の多さに驚く。

◆米国のしたたか戦略、日本企業「はしご外される」懸念も

米中の先端技術を中心とした覇権争いは熾烈を極めている。一方で、米国内では最近の経済安全保障に名を借りた対中強硬策への批判も経済金融界を中心に根強い。米シンクタンク幹部は「トランプ政権以来の保護主義政策は結果的に世界最大の消費市場・中国でのビジネスチャンスを奪い、米国の経済力を衰退させる」と警鐘を鳴らす。相互依存が深まる米中経済において、政府主導のデカップリング(対中切り離し)は失敗に終わったと見られている。

ウォール街や米産業界にとってビジネス上の中国の重要性はむしろ増している。米政府は中国とのビジネスをやめるよう圧力をかけておらず、前述のファーウェイなどへの輸出を容認するケースも散見される。グローバルな市場経済下で、成長の機会を求める米経済界が中国市場を重視するのは当然と言える。中国政府による市場開放のチャンスを米企業がつかまなければ、欧州や他の地域の企業に横取りされるとの懸念も根強い。

この図式は日本の経済界にとっても同様である。経団連幹部は「日本は米国の戦略に巻き込まれ、はしごを外された『悪い夢』から早く目覚め、米中を巻き込んだ経済貿易のルールつくりに少しでも多く関与すべきだ」と訴えている。

米国では対中貿易規制の長期化により中国からの輸入品に高い関税がかけられているためクリスマス商戦を前に物価が上昇、消費者の不満が高まっている。中国との投資や貿易取引が多大な米金融経済界や農業界から米中対立の緩和を求めるロビー活動も活発化している。

こうした中、バイデン大統領が求める形で、米中が外交関係の修復に動き出した。表向きの激しい対立姿勢とは裏腹に、米中の各レベルの対話が増加傾向にあり、米中関係が改善に向かう兆しが顕著である。米中両政府は10日、英北部グラスゴーで開かれている国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、2020年代に気候変動対策で協力関係を強化することを盛り込んだ共同宣言を発表した。対立してきた米中の共同宣言は異例。米中が融和に向かうきっかけになる可能性もある。

バイデン米大統領と中国の習近平国家主席は来週にもオンライン形式で首脳会談を行う予定である。