中国の王毅国務委員兼外相が来日し、菅義偉首相、茂木敏充外相と会談した。菅政権の発足後、中国高官による初の訪問である。コロナ禍で世界が激動する中、両国間の課題解決へ、このような対話の積み重ねは必要だと思う。

外相会談では安定した日中関係の重要性を再確認した。コロナ禍や米中対立で激変した国際環境を踏まえ、国民の利益につながる関係を構築したい。

両国政府は、ビジネス関係者の往来を再開させ、福島産など食品輸入規制の撤廃に向けた協議の枠組みを作ることで合意。コロナ対策で連携し、気候変動問題での意思疎通も強めるという。 

地球温暖化防止や来年の東京五輪と再来年の北京冬季五輪に向けた協力でも一致した。防衛当局者間のホットラインの年内開通を目指す方針も確認した。

世界の懸念は米中対立である。中国側には米国のバイデン次期政権誕生を前に日本と関係を強化したい思惑もあるようだ。バイデン氏の外交政策は、トランプ政権に比べれば協調的でバランスを重視が期待できそうだが、行方はなお不透明だ。

日本としては、米次期政権の今後の政策形成を注視しつつ、中国や韓国などとの関係安定化の道筋を主体的に考え、取り組んでいく必要がある。

他の懸念材料もある。コロナ禍や尖閣諸島周辺での中国公船の活動、香港の民主派弾圧で国内の対中世論が冷え込んだことだ。非営利団体「言論NPO」などの調査では、中国の印象を「良くない」と答えた人が昨年より増え、9割近くに達した。一方で、日本の将来にとって日中経済協力が必要だと答えた日本人は6割以上に達した。米中のどちらにもつかず、世界の協力発展のために努力すべきだとの回答も過半数を占める。日本の立場を踏まえた冷静な判断が必要である。

日中関係を安定させるには国民世論のサポートが欠かせない。海洋進出や人権問題で中国が自制することが必要で、世論の改善につながるだろう。領土をめぐる争いの解決は難しいが、摩擦を減らすことはできる。王氏は事態を複雑化させる行動を双方が避けるよう求めたが、まず中国側が実行に踏み出してもらいたい。

日本にとって中国は最大の貿易相手国であり、成長戦略に中国の世界一の消費市場は欠かせない。日中関係改善のためにルールに基づいた自由貿易体制の推進や多国間の国際協力を求めたい。相互の信頼を高め、トップ同士の対話を継続できる環境の醸成に繋げたい。隣り合う大国・中国との健全な関係づくりは、重要な課題である。平和と繁栄を共有できる環境を追求し、率直な対話を深めたい。

<直言篇141>
(立石信雄)