2021年6月1日、環球時報は、日本による「新富国強兵策」はうまく行かないとする、黒龍江省社会科学院東北アジア研究所の笪志剛(ダー・ジーガン)氏による評論記事を掲載した。以下はその概要。

明治期に打ち出された「殖産興業」と「富国強兵」は日本の近代産業能力、科学技術力を生み出すとともに、侵略戦争発動の前提条件をつくった。そして近頃、自民党が「経済、安全保障を見据えた投資戦略」を柱とする「新成長戦略」大綱を打ち出した。すなわち、経済成長と産業振興、企業投資を、国防、安全保障能力と有機的に結合させようというものだ。日本の世論には「令和の富国強兵策だ」という人もいるようだ。

「新成長戦略」は日本の政界の国運に対する危機感、焦りの表れである。米バイデン大統領が国際的な協調を積極的に推進し、地政学的影響力を強めて中国をあの手この手で封じ込めようとする中、日本の政界からはもはや経済のみでは日々複雑化する世界情勢に対応しきれないとの認識が出始め、新たな戦略を打ち出す必要性が意識されるようになったのだ。

そして、日本の一部政治エリートは、これまで経済と安全保障を分けて考え、経済協力を追求してきたことが日本にとって足かせになってきたと考え始めた。「新成長戦略」では半導体チップをはじめとする産業上の強みを国の安全保障に活かすことが柱とされ、国内産業がハイエンドのチップ供給で輸入に大きく依存している状況を打破し、国内の研究開発、生産拠点づくりを支援するとともに、米国、台湾との協力開発体制を構築することが協調されている。

また、「新成長戦略」では防衛予算の増加は日本の安全保障能力向上だけでなく、日米同盟や日米豪印間の協力体制を強化することにつながるため、対国民総生産(GDP)比率に拘泥しない姿勢も示された。

さらに、「新成長戦略」では中国やロシアといった地政学的ライバルを包み隠すことなくけん制しており、中国の日本海域、台湾海峡、南シナ海における軍事力誇示などを喧伝している。日中間の防衛予算に4倍の開きがあるという現実を直視し、安全保障を見据えた対中経済政策を速やかに打ち出すべきだという意見もある。

どんな成長戦略を打ち出すかは、自民党や日本政府に与えられた権利である。しかし、この「新成長戦略」は本質的に米国側に立つという状況から抜け出すことができず、産業、技術の面で米国に追従して中国を抑制するという意味合いに満ちている。これが実行されれば、日本が長年かけて形成してきた経済外交の主導権や対外協力の柔軟性といった強みを失い、日本の経済界に実質的な損失をもたらす。さらには日中間の政治的信頼が損なわれることになり、最終的に日本自身が苦しむことになるだろう。(翻訳・編集/川尻)