中国は、2021年を開始年とする「第14次五か年計画」において、新たな経済発展の戦略を提示した。中でも最も注目されるのは、経済成長を追求しつつも五か年のGDP成長率の定量的な目標を示さず、「労働生産性を実質GDP成長率以上とする」と明記したことである(ただし2021年は6%以上と明示)。

労働生産性とは、「実質GDP/就業者数」といった式であらわされることが多く、いわばマクロな生産性の指標のひとつである。端的に言えば中国は今後、量的成長よりも質的成長を求めていくという意味になる。

中国の労働生産性の数値は、絶対値としてはまだ日本の半分以下である。しかしその伸び率は近年6〜7%であり(2020年度はコロナの特殊要因で2.8%に低下)、実質GDP成長率以上という五か年目標値のクリア自体は問題ないだろう。

では、この労働生産性という指標をもう少しミクロに見てみよう。図1は中国の製造業と小売業における労働生産性の推移を業種別に計算してみたものである。ただし中国の統計では業種別の実質GDP値や付加価値が示されていないので、ここでは収入から原価を差し引いた粗利値をGDPデフレーターで実質化した数値を用いて計算した。

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さてまず図1の製造業をみると、全体として労働生産性は順調に増加していることがわかる。しかしこれを業種別にみると、自動車や機械産業、鉄鋼や石油などの装置産業は生産性が高いが、組立工業(設備機器、食品、アパレルなど)の生産性は全般的に低い。

一方、小売業をみると、製造業よりは労働生産性の伸び方はゆっくりだ。しかし最近は無店舗販売(ネット販売等)の生産性が急速に高まっていることがわかる。また百貨店やGMSなどは、伝統的な小売業で付加価値総額はまだ高いのだが、労働生産性は小売業全体を下回っていることもわかる。

これらのことから、中国が新たな五か年計画で求める質的成長、いわゆる付加価値型成長を実現していくためには、製造業では自動車や機械産業を育成拡大すること、そして小売業では百貨店やGMSといった業態の生産性を高めていく経営改革が必要であることがわかる。

既に中国の大手ITサービス企業は、伝統的な小売業態を買収などで取り込み、デジタル技術などを用いて経営改革を進めている。そのため、中国市場においてこの部分での日本企業の出番は少なそうだ。小売業における日本企業のビジネスチャンスは、顧客サービスや商品開発の部分だと思われる。

しかし製造業に関して言えば、ビジネスチャンスが多く見いだせる。例えば中国の製造業は、労働生産性を高めるために製造設備の高度化や生産管理の強化などが必要になる。この分野では、古くはTQC活動に始まり、その後継続的に生産性を高めてきた日本企業には経験と強みがあるので、中国への売り込みは有望であろう。