韓国の政権与党「共に民主党」が成立を目指す「言論仲裁法」改正案について、国連人権最高代表事務所(OHCHR)は1日、「表現の自由が厳しく制限されかねない」と懸念を示した。メディアへの懲罰的な損害賠償を可能にする改正案に対しては韓国内の言論団体も撤回を求めている。

聯合ニュースなどによると、国連で言論と表現の自由を担当するアイリーン・カーン特別報告者はOHCHRのホームページで1日に公開した書簡で、言論仲裁法改正案について「表現の自由を深刻に制限する懸念がある」と指摘した。

報告者は韓国も加入している市民的および政治的権利に関する国際規約(ICCPR)の第19 条は政府に対し、意思・表現の自由を尊重・保護する義務を与えていると強調。虚偽情報を禁止するとの趣旨だけでは表現の自由に対する制限を正当化できないとして、制限はICCPRの第19条、第20条と「具体的な関連性」を確立させる必要があると主張した。

第19条は表現の自由に対する一定の法的制限を認めるが、「他人の権利または信用の尊重」「国家安保または公共秩序、公衆衛生、道徳の保護」のために必要な場合に限っている。第20条は「差別、敵意または暴力をあおる民族的、人種的、宗教的憎悪の吹聴」を禁じている。報告者は言論仲裁法の改正案はこれらの条項とは関連がないとし、「当局に過度な裁量を与え、(法の)任意的な施行につながりかねない」と危惧した。

さらに改正案に虚偽・ねつ造報道に対し、最大5倍の損害賠償を盛り込んだことに関して「報道、政府・政治指導者への批判、人気のない少数意見など民主主義社会に欠かせない広範囲な表現を制限しかねない」と憂慮。「こうした懸念は2022年3月の(韓国)大統領選、そして選挙を控え情報への接近と思想の自由な流れが重要な時期に高まる」と述べた。

損害賠償の規模については「バランスが取れていない」とし、「過度な損害賠償は言論の自主検閲を招き、公共の利益が懸かっている問題をめぐる重要な討論を抑制しかねないと懸念する」と言及。メディアの故意・重過失による虚偽・ねつ造報道の判断基準に関しては「言論人が有罪推定に反論するため、取材源を明かすよう強要される可能性があり、言論の自由にとって重大な脅威になる」とみている。

一方、東亜日報によると、韓国新聞協会、韓国新聞放送編集者協会、韓国記者協会、韓国女性記者協会、韓国インターネット新聞協会などは8月30日に緊急記者会見。「改正案は民主主義の根幹である言論の自由を抹殺するものであり、大韓民国を再び軍部独裁政権のような暗い時代に引き戻す」と批判し、「改正案を強行処理する場合、改正を無効にするために違憲審判訴訟を提起する」と明らかにした。(編集/日向)