10月になって中国軍機が台湾の防空識別圏(ADIZ)に異例のペースで進入を繰り返している。進入機は5日までに延べ150機を数える。台湾側は「威圧」と批判。中国共産党系紙は「米国との関係を深める台湾の蔡英文政権への警告だ」として、「台湾攻撃に必要な準備でもある」などと強くけん制した。

台湾国防部によると、中国軍機は1日に38機、2日に39機などが台湾南西部のADIZに進入。4日には56機と過去最多を更新した。4日は日中と夜間の2回にわたって進入。日中は「殲16」など戦闘機36機、爆撃機「轟6」12機のほか、対潜哨戒機、早期警戒機各2機の計52機が入った。夜間は「殲16」4機が進入した。

一連の進入について、中国外交部の華春瑩報道官は4日、談話を発表し、進入をめぐり米国が懸念を示していることに「無責任なシグナルだ」と反発。米国による台湾への武器売却や軍事連携に関して「断固反対し必要な対応を取る」と強調し、中国軍の行動が対抗措置の一環であることを強く示唆した。

中国国営テレビは「中国軍は連休も返上で連続昼夜を問わず、台湾をパトロールした」と報道。「一連の飛行を通じて中国の断固とした態度や、強力な実戦能力を示すことができる」とする専門家のコメントも伝えた。

さらに共産党機関紙・人民日報系の環球時報の電子版は4日に掲載した論評記事で「中国軍の演習は主権の主張だけでなく、台湾攻撃に必要な準備でもある」と指摘。「平和的統一への努力は放棄しないが、戦闘によって台湾を解放することが次第に中国の世論の主流になってきている」とも言及した。

台湾・中央通信社によると、蘇貞昌行政院長(首相)は5日、報道陣の取材に対し「中国はますます調子に乗っている。繰り返し地域の平和を侵害し、台湾を威圧している」と非難。「台湾を併呑(へいどん)したいと思っている国に容易に武力を行使させないよう、台湾は団結して国力を強化する必要がある」と訴えた。

蔡英文総統は6日、与党・民進党のオンライン幹部会議で「アクシデントを避けるため、自制が必要だ」と強調。「国際社会が一斉に注目している。対岸(中国)の振る舞いは地域の平和と安定を著しく破壊している」と批判した。

中国側の動きを台湾の軍事専門家は「連続的に攻撃を繰り出せることや、異なる部隊が連携できる能力を台湾と米国に対し誇示する目的がある」と分析。「台湾の空軍が防空作戦に重点を置くのに対し、中国軍は長距離攻撃を想定している。米軍の艦隊や米軍の爆撃機、さらに米軍の基地さえも標的としている可能性がある」との見方を示した。(編集/日向)