中国外交部が19日、南太平洋の島国ソロモン諸島と安全保障協定を締結したと発表し、波紋を広げている。中国がインド太平洋地域の一角にくさびを打ち込んだ形で、日本、米国、オーストラリアにニュージーランドを加えた4カ国は「深刻なリスクになる」との懸念を表明した。

ソロモン諸島の首都ホニアラは太平洋戦争中の激戦地として知られるガダルカナル島にある。1978年7月に英国から独立。台湾と外交関係を結んでいたが、2019年9月に断交して中国と国交を樹立した。昨年11月には親中派のソガバレ現政権に反発する住民らが反政府デモを行ったのをきっかけに、暴動が起きた。

中国とソロモン諸島は3月31日、2国間の安全保障協定に基本合意したと発表した。協定の具体的な内容は公表されていないが、インターネット上に流出した協定の草案とされる文書はソロモン諸島側が社会秩序の維持などのために、中国に軍や警察の「派遣を要請できる」と明記。「ソロモン諸島で中国人要員の安全や主要な事業を守るため、中国の部隊が利用できる」ともされている。

ソロモン諸島と歴史的につながりの深い豪州や米国など周辺の主要国は、ソロモン諸島で中国の軍事拠点構築に道が開かれるなどと警戒。ダットン豪国防相は豪州沿岸から2000キロ以内のソロモン諸島に中国が海軍基地を構築する可能性があるとの認識を示した上、「インド太平洋の平和と安定にとって最良の利益だとは思わない」としていた。

AFP通信などによると、豪州のセリャ国際開発・太平洋担当相は協定締結に先立つ13日、ホニアラで、ソガバレ首相と会談し、協定に調印しないよう求めた。同首相は20日、議会で協定締結の決定は地域の平和と調和を損なわないと述べ、懸念を表明していた関係国に理解を求め、「友好国、パートナー諸国、近隣諸国はソロモン諸島の主権を尊重してほしい」と発言。「中国との協定はいかなる国も外部同盟も念頭に置いておらず、自国の治安維持を目的としている」と説明した。

ソロモン諸島側によると、中国は来月に当局者を派遣し、貿易・教育・漁業に関する協力を深める。これに対し、日米豪とNZの4か国の政府高官は18日に米ハワイで会談し、海洋の安全保障や気候変動などの課題解決に向け、太平洋の島しょ国への関与を続けていくことを確認するとともに、中国とソロモン諸島の協定はインド太平洋地域の自由で開かれた秩序にとって、深刻なリスクになるという懸念を共有した。

米国家安全保障会議(NSC)でインド太平洋調整官を務めるカート・キャンベル氏を含むハイレベルな代表団もソロモン諸島を訪れ、中国に対する懸念などついて話し合う予定。南太平洋の島国をめぐる中国との駆け引きはますます激しくなりそうだ。(編集/日向)