ここ数年、中国の小売業界には、新零售(ニューリテール)、ライブコマース、社交電商などの言葉が飛び交った。新零售はオンラインとオフラインを融合させ、即配により、どこでも同じサービスの提供を目標とする。ライブコマースもアリババの生んだカリスマライバーの登場により、一大産業へ発展した。いずれも2016年、アリババの主導でスタートした。しかし、社交電商では出遅れ、苦戦している。今後、中国小売業はどのように展開していくのだろうか。アリババを中心に展望してみよう。

■盒馬鮮生…新零售の象徴

新零售の象徴は、アリババの新型スーパー「盒馬鮮生」だ。2016年1月、上海に1号店・金橋店をオープンした。印象は大型の食品スーパーである。普通のスーパーとの違いは、天井に備えたハンガーシステムだ。これはアプリの注文を店員がピックアップし、配送場へ送るためにある。そして指定地域内なら30分で配達する。

2017年以降、急速出店を進め、現在では上海73店舗、北京40店舗、深セン24店舗、武漢23店舗、南京23店舗、成都21店舗、杭州20店舗、西安16店舗、広州13店舗、重慶10店舗、長沙8店舗、蘇州7店舗、青島7店舗、昆明7店舗、寧波5店舗、貴陽5店舗など、計326店舗を展開している。店舗タイプも分化した。

盒馬X会員店、1万6000〜1万8000平米

盒馬鮮生店、2500〜5000平米

盒馬mini、500〜1000平米

盒馬生鮮奥莱、200〜500平米

ところが最近は、成長に陰りが見える。そのため不採算の盒馬鮮生店を閉鎖し、小型店に置き換える方向だ。最小の盒馬生鮮奥莱は、廃棄になりような品を特価で“処理”する役割だ。盒馬の名を冠した業態にはあと2つ、「盒馬集市」「盒馬隣里」がある。

■社交電商と社区団購…アリババは出遅れ

小売業のもう1つの大きな潮流が社交電商だ。その代表は「拼多多」で、アリババと関わりはない。拼多多は2015年に事業をスタート、わずか3年後に米ナスダック市場へ上場という大躍進を遂げた。成功の要因はSNSにあった。国民的SNS・微信を最大限に利用し、顧客が自らのコミュニティーへ販促する精緻なシステムだ。各商品とも募集数に達しなければ取引は成立しない。そのため友人を誘うのだ。またサプライヤーにとっては、売れ残りリスクがなく、安値をオファーできる。決済は微信支付をタップするだけでよい。低価格の魅力で、地方都市のネット通販初心者を開拓した。

これを地域コミュニティーに限定したのが社区団購だ。グループリーダーの団長がコミュニティーメンバーに商品をオファーする。取引が成立すれば、メンバーは地域のステーションで商品を受け取る。予約販売のため、新零售のようなスピード感はないが、安い。2019年の市場規模は340億元、翌2020年にはコロナ禍も追い風となり750億元と、2倍以上となった。IT大手も大挙して参入し、有力な団長の奪い合いとなった。

アリババも急いで対応した。拼多多に対しては、休止状態だった「聚劃算」というサイトを復活させ、社区団購では「淘菜菜」「盒馬隣里」を投入した。

■社区団購…淘菜菜と盒馬隣里

淘菜菜…2021年3月、社区電商事業部を設立、零售通(パパママストアのデジタル化を推進)と盒馬集市(盒馬鮮生の末端をカバーした)を統合し、社区団購の新ブランド「淘宝買菜」とした。同年9月、長沙市に60平米の「淘菜菜小店」をオープン。商品受け取り、生鮮店、日用品店、ライブコマーススタジオ、充電ステーション、宅配ステーション、公益コーナー、シェアキッチン、花屋などを兼ねている。

盒馬隣里…当日注文、翌日受け取り。社区団購に似ているが、団長は存在せず、バックボーンはアリババグループのビッグデータと販売ノウハウだ。盒馬鮮生店の補完をしつつ、コミュニティーの1日3食の需要を賄う。上海、北京、広州、武漢、西安など10都市、400店舗を展開した。

■盒馬隣里…展開都市縮小

4月上旬、その盒馬隣里が事業の縮小を発表した。昨年10月、10都市から7都市へ展開都市を縮小したのに続き、さらに4都市でサービスを停止した。

1カ月前の3月上旬、盒馬隣里は宅配サービスを始めた。盒馬の遺伝子のなせる業だったかもしれない。しかし、これが裏目となり、逆に注文が2〜4割減ってしまった。店員は1人しかおらず、配達に出ると、店番はいなくなる。すると受け取りステーションとして機能しない。二兎を追う者は一兎をも得ずを地で行ってしまった。

おりしも社区団購は、淘汰、再編期に入っている。2021年7月、大手の一角「同程生活」が破産。2022年3月、もう一つの大手「十薈団」が活動を停止。十薈団には、アリババが出資していた。アリババは、社交電商になると、急にうまくいかなくなる。2016年、新零售をうたいあげた時のような颯爽とした姿はここにはない。

盒馬鮮生も赤字解消が待ったなしとなっている。苦戦の根本的原因は、アリババの持つデータテクノロジーと、生鮮食品のサプライチェーンがアジャストできないことにある。

2020年4月現在、上海ではロックダウンにより、社区団購にZ世代の新しい団長が続々登場している。彼らは不意に訪れた食料危機を自らの手で打開しよういうのだ。積極的に社会問題に関与しようとする彼らの行動は、中国小売業に新しい局面を開きそうだ。それはアリババ主導時代の終わりとなるかもしれない。