米関係筋によると、バイデン政権の「対中政策」が5月中旬に発表される。注目点は(1)トランプ前大統領が課した対中関税の減免を検討する(2)バイデン大統領と習近平国家主席による米中首脳会談の対面での実現を模索する―の2点。対中高関税が米国最大の懸案であるインフレ急騰の一因となっているとの認識から、高関税を是正する。関税減免の対象は消費者向けや米国産業に組み入れる部品、物資となる。

同筋によると、米通商代表部(USTR)は中国製品に課す制裁関税を見直す作業を開始した。高インフレに対処するため関税引き下げを求める声が政権内や産業界で高まっていることが背景にある。

トランプ前政権は2018年7、8月に、制裁関税の第1弾、第2弾として計500億ドル分の中国製品に25%の関税を上乗せした。法律では関税発動から4年で是非を見直す決まりになっている。

トランプ前政権は中国の知的財産権の侵害を食いとめるため、制裁関税をかけた。USTRは見直しの過程で当初の目的を果たしているか調べるほか、消費者など米国経済への影響を踏まえて判断する。

バイデン政権内では関税の見直しを求める動きが活発化。イエレン財務長官は4月22日、「関税見直しは高インフレの抑制へ望ましい効果がある」と指摘し、関税の引き下げを検討する考えを示した

米国では、11月の中間選挙を前に高インフレへの国民の不満が高まっている。米消費者物価指数(CPI)の上昇率は3月に前年同月比8.5%と40年ぶりの高水準に達した。米ピーターソン国際経済研究所の試算によると、対中関税などトランプ前政権が発動した関税を取り下げれば、CPIを1.3ポイント減らす効果があるという。

産業界ではコスト負担となっている関税の削減を求める声が多い。バイデン政権にとってインフレ阻止は至上命題。「インフレに対処するためにできることはやりたい」(イエレン氏)と物価抑制に懸命だ。

一方、米国の対外投資の審査メカニズムを創設する行政命令が近くされる。これは米国の対中投資が中国の軍や治安当局の能力向上に使用されることを防ぐことが目的だ。

バイデン政権は習主席との対面首脳会談を模索、11月15〜16日にインドネシアのバリ島で開催されるG20(20カ国首脳会合)での開催が調整されている。

ロシアのプーチン大統領がG20 に招かれればバイデンは出席しない可能性が高く、その場合は11月18〜19日にタイで開かれるAPECサミットでの会談を追求するという。

米中両国とも首脳会談に大きな関心を示しており、共に両国関係を安定させたい思惑がある。同筋は関税下げと首脳会談模索と併せて「新たな米中関係」が生まれる契機になると見ている。

ウクライナ危機に関しては、中国政府はその親露的な言動にかかわらず、「主要中国企業はロシア制裁をかいくぐってロシアを支援していない」と米政府は見ている。

中国政府は習主席の任期延長を実現する予定の党大会を10月に控え、コロナ禍で経済が沈滞する中で、ロシアとの関係で第2次制裁の対象になるのは避けたいと考えていると同筋は分析している。(八牧浩行)