2022年5月31日、華字メディアの中文導報は、「主要7カ国(G7)の一員で経済協力開発機構(OECD)の加盟国でもあるなど、世界から富める国として認知されながら、国内総生産(GDP)が1995年を頂点として下がったままの『失われた30年』を経た日本は、今も富める国なのか?」として、現時点の日本経済を分析する記事を公開した。

記事は初めに、最近公開されたデータを参考に六つのポイントを提示し、解説した。一つ目は「日本の対外純資産」で、財務省が5月27日に公表したデータによると、2021年末時点の日本の対外純資産の評価額は、20年末に比べて15.8%増の411兆1841億円となり過去最高を更新したほか、31年連続で「世界最大の純債権国」となり、2位のドイツを100兆円近く引き離したという。「対外純資産」とは、日本国内の個人や企業などが海外に持つ「対外資産」から、海外の投資家などへの「対外負債」を差し引いたもので、21年末時点の「対外資産」は前年比9.2%増の1249兆8789億円に上り、海外から日本への投資を反映する「対外負債」は20年末から6.2%増の838兆6948億円となったが、日本から海外への投資を反映した「対外資産」の残高が上回る状況が続いているという。

二つ目は「日本の国富」で、内閣府が1月24日に公表した国民経済計算年次推計によると、日本政府と民間を合わせた国全体の純資産(国富)は、20年末に約3668兆円となり、19年末比で約11兆円(0.3%)減少したという。新型コロナウイルスの影響で企業の設備投資が停滞し、固定資産が減少したことが原因で、5年ぶりの減少だという。また部門別を見ると、国と地方を合わせた政府部門がコロナ対策で多額の国債を発行した影響で、約26兆円(26.5%)減少の約72兆円になったが、家計部門は、緊急事態宣言などの行動制限による消費の鈍化や政府の給付金などで押し上げられたのが原因で、過去最高の約32兆円(1.2%)増の約2713兆円となった。金融機関部門も、コロナ対応で貸出債権が膨らんだことで、過去最高の約8兆円(4.3%)増の約195兆円に上ったが、金融以外の法人企業は約28兆円(4.7%)減の約577兆円だった。

三つ目は「家計の金融資産」で、日本銀行が3月17日に発表した21年10〜12月期の資金循環統計(速報)によると、21年12月末時点での家計の金融資産は前年同期比4.5%増の2023兆円となり、初めて2000兆円を突破したという。また企業が持つ金融資産は前年同期比5.9%増の1279兆円で、現預金が3.9%増の319兆円で、海外への直接投資も、15.7%増の168兆円になったという。

四つ目は「日本の平均貯蓄」で、総務省が5月10日に発表した21年の家計調査報告によると、2人以上の世帯の平均貯蓄は前年比5%増の1880万円で、3年連続増加したという。比較可能な02年以降では過去最高となったが、コロナ禍で外出が減り、お金をため込む傾向が見え、欧米や中国のような「リベンジ消費」には至ってないという。また平均の負債額は0.9%減の567万円で、貯蓄額から負債額を差し引いた純貯蓄額を世帯主の年齢別に見ると、60代が2323万円で最も多く、次が70歳以上で2332万円だったのとは対照的に、50歳未満の世帯では負債額が貯蓄額を上回っているという。

五つ目は「日本政府の長期債務残高(税収で将来返済する必要がある国の借金)」で、5月10日の財務省の発表によると、長期債務残高が22年度末時点で約1017兆円になり、初めて1000兆円の大台を超え、18年連続で過去最高を更新したという。社会保障費の増加や新型コロナウイルス対策の支出で借金が増え、借入金と国債、政府短期証券を合わせた政府債務は約1241兆円に上り、人口1人当たり991万円の借金を抱える計算になるという。

六つ目は「日本の国内総生産(GDP)」で、バブル経済崩壊後の1995年に記録した約5兆4490億ドル(約701兆円)や、2012年に記録した約6兆2000億ドル(約798兆円)の当時は為替市場で猛烈な円高を記録したことや、20年の約5兆500億ドル(約650兆円)から21年4兆9370億ドル(約635兆円)に下がった時には円安が続いたところから「日本のGDPの好不調は為替レートの影響を受けている」と指摘した。

記事は、以上のさまざまなデータを分析した結果として、「円の為替レートは日本経済にとっての魔法のつえのように、GDPだけでなく、国富や海外資産など様々な数字を動かしている。過去30年来、日本のGDPは500〜550兆円の間を維持していたのは、1ドル当たりの日本円の為替レートが79〜140円の間で変動していたからであり、日本経済の安定性の欠落を導いている」「日本はこれまで、トヨタ自動車など海外で稼ぐ企業や海外資産の評価に有利に作用することから、円安を歓迎してきたが、22年になって、国際情勢が大きく変化し、穀物や原材料、エネルギーのコストの急騰や日本円の大幅な下落により、歓迎できなくなった」「日本の一般家庭は円安の良さを感じることができず、かえってエネルギーから食品に至るまで輸入価格の値上げによる衝撃を受けた。いくら岸田文雄首相がこれらの衝撃を緩和しようと政府の予算を費やしても、巨額の債務を背負った政府にとってはやりくりがつかない」「日本政府は為替レートではなく、労働効率や税収の改善などで、財源を開拓し支出を節約する以外に財政悪化を変える方法はない」と論じた。

記事は最後に「日本はいまだ世界屈指の富裕国だが、政府は赤字なのに民間には貯蓄があったり、国内投資のお金は足りないのに海外資産の評価は高かったり、中小企業は青息吐息なのに大手企業は思い通りに成功していたり、若者には消費する財力がないのに、財力がある高齢者たちはお金を使わなかったりとさまざまな問題を抱えている。これらをどのように解決したり、バランスを取るのかが、岸田首相が提唱する『新しい資本主義』の実践すべき目標だろう」とした。(翻訳・編集/原邦之)