小生、新聞記者をやっており、通産省(現経済産業省)の記者クラブに所属していたことがありました。ここではお役人の偉い方と記者クラブの間で定期的に懇談会があります。

ある時中小企業庁長官との懇談会。長官のご説明によると なにか英国と日本共催のイベントがあったそうです。内容は何か忘れましたが、長官が誇らしげに言うところによりますと、我が国の力の入れ方が違う。我が国は浩宮さまにご出席をいただいたのであるが、英国側の出席はプリンス・オブ・ウェールズである。

何か違うなと思ったのですが、通産省側からは広報課長も同席しています。広報課長はロンドンの日本大使館一等書記官の経験のある方。英国の事情は大変お詳しいはずですので、その方が静かにしているのに私が何か差し出がましいことを言うのもいかがなものかとそこは抑えたのです。つまりその場ではわが国通産省は、英国よりもずっと力を入れてそのイベントを盛り上げたという流れが出来上がったというわけです。

さてその夕方、記者クラブのソファーに何社かの記者とその広報課長が同時に座って雑談になったもので、ところで広報課長、イギリスの次期国王にあたる人をプリンス・オブ・ウェールズって言わなかったっけ。

そうですよ

では、さっきの中小企業庁長官の説明、全然おかしくありませんか。イギリスはプリンス・オブ・ウェールズ、次期国王をそのイベントに出席させたけども、我が国浩宮さまは昭和天皇の皇太子の長男であるからして皇位継承は次の次。ということは英国の方がこのイベントに力を入れているということになりませんか。

私も自信がなかったし、あなたが黙っているから言いだしませんでしたけれども、もしも私がプリンス・オブ・ウェールズって英国の皇太子のことじゃないの。英国が皇太子を出しているのに我が国が次の次の親王さまということは、英国に比べて力の入れ方が少ないということになりませんかと発言したとしますと、ロンドンの日本大使館元一等書記官に確認を求められると思うんですが、その時あなたはどう対応しましたかね。

ちょっと曖昧なもんで後ほど調べてご返事を、というつもりでした。

さすがの気配り、いつもこの対応をしていれば、上からの覚えもめでたくなるでしょう。その後とんとんとんと出世されましたですね。その頃はスマホなんてありませんからね。スマホがあれば、その懇談会の席上でスマホを取り出しちょんちょん。中小企業庁長官、スマホの検索の結果では、プリンス・オブ・ウェールズは英国の皇太子、つまりチャールズさま、浩宮さまよりそれぞれの国の制度上では上位にランクされています、つまり英国のほうが我が国よりもずっと力を入れていたと、すぐその場で指摘ができたんですがね。

エリザベス女王はずっとご健在ですから、チャールズさまはずっとプリンス・オブ・ウェールズ。

一方、我が国浩宮さまは、1989年昭和天皇がお亡くなりになり、父親の平成の天皇が即位され、皇太子となられる。そして平成の天皇が生前退位され、2019年徳仁天皇誕生(現在62歳)。

あの時は次の次だったのですが、やがて英国皇太子チャールズさまに並び、そして抜いたということになります、ですね。

この中小企業庁長官、役人にしておくのがもったいないほどのアバウトさ、政治家向きですよね。どっかの知事選に立候補しましたけども残念な結果になりましたが。

何かというとすぐに ロンドンに牙を剥くモードになってしまうウェールズの人たちを懐柔するために、次期国王はウェールズから出るんだというフィクションを設定してなだめにかかっているとのことです。

中小企業庁長官の頭の中ではウェールズというローカル地域の王さまか王子さまという認識だったみたいですね。あの時のイベントでは我が国の方が力を入れていたとまだ思っておられるかもしれません。

チャールズさまの今後について、一応参考情報として、下記ネットから。

イギリス王室のエリザベス女王(96)が2022年5月10日、59年ぶりに英議会開会式を欠席した。

息子のウェールズ公チャールズ皇太子(73)と孫のケンブリッジ公ウィリアム王子(39)が代理で出席し、チャールズ皇太子が政府の施政方針演説を初めて代読した。

■プロフィール:高谷尚志「アジアの窓」編集委員

1946年中国・大連生まれ。早稲田大理工学部工業経営学科卒。毎日新聞入社、静岡支局、経済部記者、「週刊エコノミスト」編集長などを歴任。2004年千葉科学大学危機管理学部危機管理システム学科教授。2015年4月よりフリー。


写真はロンドン。エリザベス女王即位70年の祝賀行事が2日から4日間にわたって行われる。