2021年、世界EV車販売台数は前年比108%増と2倍以上に急拡大した。けん引したのは中国メーカーで、その販売ランキングは下記の通り。

1位 比亜迪(BYD) 59万3878台

2位 上汽通用五菱 45万6123台

3位 上海汽車 22万6963台

4位 小鵬汽車 9万8155台

5位 蔚来汽車 9万1429台

6位 理想汽車9万0491台

7位 哪吒汽車 6万9674台


中国の電気自動車大手BYD



4〜7位の4社は、EV車製造のため設立された「造車新勢力」と称する新興企業群だ。彼らの争いは実に激しく、2022年に入り、毎月順位が入れ替わっている。直近の4月は、理想汽車8414台、哪吒汽車7117台、小鵬汽車6225台、蔚来汽車6131台。小鵬汽車は、ランクを下げるとともに、従業員30%カットが伝えられた。この目まぐるしい状況は、新規参入のチャンスにも見える。実際、他業種の“大物”たちが、準備を急いでいる。その中から、日本でもおなじみの企業、恒大、ファーウエイ、シャオミの現在地を探ってみよう。

■恒大汽車…量産を延期

まず不動産大手・恒大である。その経営危機は、今も世界の金融市場を揺るがせている。しかし、会社存続の危機にあってもEV車開発は手放そうとしなかった。

EV車開発の子会社「恒大汽車」は、2008年、香港市場へ上場した旧「恒大健康」が後に定款変更したものだ。創業者、許家印氏の陣頭指揮のもと2018年から造車の旅が本格化する。

2018年9月、恒大集団は世界規模の自動車販売とサービス会社・広匯集団に145億元を出資した。続いて2019年1月、サーブの親会社、スウェーデンNEVS社の株式51%を取得。同社はこの時すでに中国でEVを生産し、新工場も建設していた。

2019年8月、EV車ブランド名「恒馳」を発表した。翌9月には、世界から8000人のEV車の専門家を招致すると発表。10月、世界のトップ自動車デザイナー15人と戦略提携。さらに創業者・朱許印氏は名古屋と東京を訪問、デンソー、トヨタ紡織、日立などの有力サプライヤーに部品供給を依頼。11月、広州に世界の有力企業206社を招き、「恒大新エネルギー車世界戦略パートナーサミット」を開催。こうした準備を整え、翌2020年8月、セダン、クーペ、SUVなど具体的な6車種を発表した。量産スケジュールは何度も遅れ、直近では2022年5月中旬、SUV「恒馳5」の量産を6月22日から9月20日に延期すると発表した。ただし予約は受け付けているという。

恒大新能源汽車集団のEV「恒馳5」



■ファーウェイ…事実上の自社生産

2022年2月、フォルクスワーゲンがファーウェイの自動運転部門を買収か、と報道された。買収の成否はどうあれ、これはファーウェイの技術の高さを印象付けた。

ファーウェイは2004年、最初にEV車関連の特許を申請した。2009年には車載モジュールの研究を開始。2019年、智能汽車解決方案ビジネスユニットを新設。昨年の自動運転関連特許数はテスラを上回り、世界一となった。EV社の次のステージ、自動運転技術にアドバンテージを持つのが最大の強みだ。

注目技術は、LIDAR(レーザー画像検出と距離測定)装置である。自動運転ハードウエアのラストピースとも呼ばれ、これまでのミリ波レーダーやカメラと違い、形状や位置関係を三次元で把握できる。通常は数万元レベルのこの装置を、ファーウェイはこれを1400元(約2万6000円)程度で供給するという。この価格なら十分ゲームチェンジャーとなり得るようだ。

ファーウェイは再三、自ら自動車製造はしない、ボッシュのようなトップクラスのサプライヤーを目指す、と繰り返している。ただし某メディアは、ファーウェイの野心は自動車製造より大きいと指摘する。それは最新モデル、問界M5(25万9800元〜)をみれば明らかという。製造は小康股份というメーカーでSERESというブランドだが、計画、設計からマーケティングまで、すべてファーウェイが関わった。発表展示会ではあちこちにファーウェイの文字が踊った。同モデルは発売以来87日で累計売上1万台を突破、セールスは非常に好調だ。

ファーウェイ独自開発の「鴻蒙」を採用した新型SUV「問界M5」



■シャオミ…進捗に遅れ?

シャオミは2021年3月、新製品発表会の席上、EV車への参入を発表した。創業者・雷軍氏は、自分にとってこれが最後のプロジェクトと宣言、決意をみなぎらせた。同年9月、小米汽車有限公司を設立、2024年上半期の正式量産を目指すとした。11月、北京経済技術開発区と提携、年間30万台のEV車工場を2期に分けて建設すると発表。2022年4月、EV車製造に係る人員は1200人に達した。

また同月、「小米汽車1」がまもなく発売という情報が流れた。流線形のセダン、フル充電で航続距離800キロ、0〜100キロ加速4.5秒、価格は14万9900元(約285万円)から。小米は高いコストパフォーマンスで、中国のスマホ普及に大きな貢献をした。それだけに価格への期待は高い。ただし1年たっても工場建設の話題ばかりで、進捗の遅さに懸念という報道が出始めている。

EV車への参入を宣言するシャオミ創業者・雷軍氏





■ファーウェイが最も有望?

恒大は、資金の不安を払しょくできない。恒大汽車の株価は90%以上ダウンし、取引停止処分を受けた。小米汽車は、事業進捗の遅さが不安材料だ。

一番うまく回っているのはファーウェイのように見える。何より自動運転への備えができている。自社ブランド車を発表しないのは、自社デバイスやシステムをすべての自動運転車へ売り込むためとすれば、確かに大きな野心のように見える。