2022年6月4日、中国メディアの上遊新聞は、「進撃の東南アジアの巨人、ベトナムの経済神話を作ったのは誰か」とする記事を掲載した。

記事は、近ごろベトナムの経済成長について「新たな世界の工場が台頭」「外資による投資が加速」「10年で中国を追い越す」といったセンセーショナルな見出し付きの報道により世界から注目を浴びていると紹介。確かにこのところのベトナム経済は予想以上に好調であり、世界が新型コロナの影響に苦しんだ20年に国内総生産(GDP)成長率2.9%と世界でも数少ないプラス成長を実現し、かつ中国の2.3%を上回ったとした。

また、21年の輸出総額は前年比12.9%増の885億8000万米ドル(約11兆7000億円)に達し、今年1〜3月期は前年同期比14.4%とさらに成長が加速、製造業の加工製品が輸出増に大きく貢献したと説明。「中国製造業のイノベーションセンター」と称される広東省深セン市を輸出額で上回ったと伝えている。

一方で、もともとの経済規模が違いすぎるため、これらの数字から「ベトナムは中国を追い抜いた」と評することはナンセンスであると主張。外資による対ベトナム投資が増え、中国に集中していたサプライチェーンがベトナムをはじめとする東南アジアに移転する動きが見られることについても、外交学院世界政治研究センターの施展(シー・ジャン)主任が「移転というよりも、中国からあふれ出したもの」との見解を示し、「ある意味で、中国を中心とするサプライチェーンの規模がより大きくなったということ」と述べたことを紹介した。

記事は、ベトナムが中国に代わる新たな「世界の工場」となることは経済規模の大きな差などから難しいとしつつ、「中国にとってはいくつかの試練もある」と指摘。中国商務部国際貿易経済協力研究院国際研究所の白明(バイ・ミン)副所長が、「製造業の東南アジアへのシフトは中国の伝統的な労働集約型産業が、大きな競争にさらされていることを意味する」と述べたことを伝えた。

白氏はまた、廉価な労働力で中国より優位に立つ東南アジア諸国において、中央集権体制を持つベトナムはリソースを集中させて経済発展の課題を克服する力が際立っているほか、米国主導による「産業チェーンの脱中国化」戦略もベトナムの製造業に数多くのチャンスをもたらしているとの見方を示した上で「ベトナム製造業の発展に対し過剰に憂慮してはならないとともに、中国との間には大きな差があるからといって油断するようなこともあってはならない」と述べたという。(翻訳・編集/川尻)