米中関係筋によると、バイデン政権は中国製品に課す制裁関税を引き下げる方針である。物価の大幅上昇に米国民の不満が高まっていることも背景にある。トランプ前政権が課した制裁関税を引き下げれば、米中対立の緩和や世界経済の発展にも寄与すると期待されている。バイデン大統領は習近平中国国家主席との首脳会談をリモートで7月中にも開催することで中国側と調整している。

バイデン大統領は、トランプ前大統領が2018年と2019年に数千億ドル相当の中国製品に課した関税の一部撤廃を検討している。米業界団体から企業や消費者のコスト軽減に向けた対中制裁関税の引き下げを要求されている。制裁関税の引き下げが実現すれば、米中対立の緩和や世界経済の発展にも寄与すると期待されている。

米中首脳会談が実現すれば3月18日にテレビ会議方式で実施して以来。この時は2月24日にロシアがウクライナに侵攻した直後で、バイデン氏が習氏にロシアを支援しないよう求めた。

米中は6月に入って高官同士の対話を重ねている。6月10日にオースティン米国防長官と中国の魏鳳和国務委員兼国防相がシンガポールで会談。13日にはサリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)と中国の外交担当トップ、楊潔チ共産党政治局員がルクセンブルクで会談。首脳会談開催について話し合われた模様だ。新たな懸念事項として台頭している北朝鮮による核実験実施の可能性などについても意見交換したとみられる。

サリバン補佐官は16日開かれた米シンクタンクの会合で、楊氏との会談について、「台湾海峡の平和と安定を維持する必要があるという米国の考えを伝え、中国の動向に懸念を表明した」と表明。ウクライナへ侵攻中のロシアとの関係について「中国は慎重な姿勢をとっている」と語った。

サリバン補佐官は「中国はロシアへの直接的な軍事支援をしておらず、(日米欧などによる)制裁や輸出規制を回避するための組織的な関与もしていない」と言明。「中国は一線を越える措置は取っていない」との認識を示した。

米バイデン政権の台湾政策を巡っては「台湾を防衛する必要があるか迫られる日が来ないようにするのが目的であり、それが効果的に抑止していることになる」と指摘。「これは歴代政権と同じであり、台湾海峡の平和と安定を維持する点で機能してきた」と分析した。

米政府は中国に軍事・経済面でロシアを支援しないよう要求してきたが、サリバン補佐官の発言はこの要求が受け入れられているとの認識を示したものとして注目される。

米通商代表部(USTR)は5月上旬、制裁関税の発動開始から4年が経過するのに合わせて見直し作業を始めた。イエレン財務長官は約40年ぶりの高インフレを抑え込むため、対中関税の引き下げの必要性を唱えている。

バイデン大統領は5月23日、東京での日米首脳会談後の記者会見で、対中関税引き下げを「検討している」と明言。同大統領は関税引き下げが物価抑制につながるか分析するよう政権内の経済チームに指示し、既に詳細な報告書を受け取ったという。

対中関税は2018年、中国の知的財産侵害に対する制裁という名目で発動された。全米小売業協会は5月18日、バイデン大統領への書簡で「対中関税の削減はインフレ圧力を和らげる」と決断を促した。米ピーターソン国際経済研究所の試算によると、対中関税など前政権がかけた関税をやめれば、消費者物価指数(CPI)を1.3ポイント引き下げる効果がある。特に米産業界ではコスト負担となっている関税の削減を求める声が多い。

ロシアによるウクライナ侵攻の影響もあり、5月のCPI上昇率は前年同月比8.6%と約40年ぶりの高水準が続く。資源高によるガソリン価格高騰や食品高などで消費者や企業経営者の不満は募る。米国の1〜3月期実質国内総生産(GDP)はマイナスに転じており、インフレの進行が企業業績にも波及しつつある。

米中間選挙が半年後に迫る中、バイデン政権は長引くインフレなどで支持率が低迷し、与党・民主党は上下両院での過半数維持が危うい状況だ。インフレ抑止はバイデン政権にとって最優先課題である。

トランプ前政権は中国の知的財産権の侵害を食いとめるため、2018年7、8月に、25%の制裁関税をかけたが、この関税引き上げが米国の物価高を招いている。早くから関税引き下げを提唱するイエレン財務長官は、物価抑制に「望ましい効果がある」と指摘。前政権が課した関税が「消費者や企業に損害を与えている。中国問題に対処する点でも戦略的ではない」と言明している。

中国商務省は「追加関税の減免・廃止は米国の消費者や企業の根本的な利益と一致し、米中そして世界にとって有益だ」としている。中国の有力大学教授は「追加関税の撤廃は輸出再加速のきっかけとなる。米中対立の象徴だった制裁関税が減免されることの意義は大きい」と期待している。

米中関係筋によると、バイデン大統領は習主席とのリモート首脳会談の後、中国での膨大な貿易・投資権益を有する金融・産業界の意向を受け、中国との対面での首脳会談を志向している。対面による米中首脳会談は、11月15〜16日にインドネシアのバリ島で開催されるG20(20カ国首脳会合)か、11月18〜19日にタイで開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力)サミットでの開催が計画されているという。

米国主導のインド太平洋経済枠組み(IPEF)に台湾が含まれなかったことで、中国側に会談に応じる機運が醸成されたとみられる。