韓国で保守系の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権発足から1カ月余。文在寅(ムン・ジェイン)前政権や3月の大統領選で争った李在明(イ・ジェミョン)氏をめぐる「不正疑惑」の捜査が本格化しつつある。野党側は「報復捜査」と反発。左派系の主要紙は「政略的な利用はすべきでない」と主張した。

韓国では政権交代のたびに、強力な捜査権を持つ検察が権力を手放した前大統領や側近らの不正を追及する歴史が繰り返されてきた。尹氏当選で野党に転落し、危機感を強めた「共に民主党」は先手を打ち、政権交代直前、検察の捜査権を縮小する法改正を強行した。施行は9月で検察は追及を急いでいる。

ハンギョレ新聞によると、現政権側が狙いを定めているのは、北朝鮮によるとされる西海(黄海)公務員殺害事件の捜査結果の見直し、産業通商資源部「ブラックリスト」疑惑に対する速攻捜査、任期制機関長に対する辞職圧力などだ。

西海公務員殺害事件について監査院は17日、海洋警察庁や国防部などに対して、射殺された男性が「自ら越北(北朝鮮に渡ること)した情況がある」と判断した経緯などの監査に着手した。

文政権時代の産業通商資源部に関しては当時の担当相が2017〜18年に同省傘下の公社など13機関のトップに辞職を強要した疑いがあるとして、検察が逮捕状を請求した。裁判所は請求を認めなかったが、検察は大統領府の指示があったとみて、当時の関係者を追及する構えだ。

大統領選で尹氏に敗れた李氏に関連しても、城南市長時代に許可した宅地開発の不正疑惑に絡んで警察が16日、市庁舎を捜索した。李氏の京畿道知事時代に妻が公金を流用した疑惑の捜査も進む。

いずれの事件も文政権下で発覚したが、捜査は進展しなかった。文政権寄りの検察上層部が捜査を止めていたとの見方も出ている。

これに対し、「共に民主党」は捜査の本格化を「政治報復」と受け止めており、党幹部は「このような形の国政運営が果たして賢明なのか。司法機関、権力機関を前面に立てた野党への圧迫が今の経済危機局面を克服する意志とみることができるのか」と批判した。

一連の捜査について、ハンギョレ新聞は社説で「新旧権力の対立が激化する様相を呈している。政界が互いに反発を増幅させる在り方は問題解決や真実の究明を遠ざけるだけだ」と言及。野党側に「『真相究明より国民生活の方が重要だ』というような態度は責任ある公党の姿勢ではない」とくぎを刺す一方、「新旧権力の衝突は政界では関心事だろうが、眺めている国民にとっては疲労と冷笑感ばかりが募る恐れがある。政略的態度は『逆風』を招きうるということを与野党は肝に銘じてほしい」と訴えた。(編集/日向)