中国メディアの環境時報はこのほど、日本が進める経済安全保障体制の構築は「度を越している」と批判する、中国社会科学院の王鍵研究員の署名入り文章を発表した。以下はその要約。

■日本は「経済安全保障」措置を次々に追加

日本は感染症による経済の落ち込みに対応するため、経済安全保障メカニズムを強化してきた。例えば国家安全保障局、外務省、経済産業省、防衛省などが組織を改編して経済安全保障の体制を整えた。岸田内閣は経済安全保障会議を発足させ、内閣官房には経済安保法制室が設置された。今年になり「経済安全保障法(経済安保法)」も国会で可決され、2023年から段階的に施行される。

「経済安保法」に中国についての直接の言及はないが、中国を念頭に置くことが示唆されている。4月に発表された「外交青書」は日米、日豪、日欧などの経済安保協力を強化し、「脱中国化」サプライチェーンの構築を加速すると表明した。日本では現在、政治権力が経済運営に介入する様相が示されている。日本で戦時中に軍部が経済統制を実施した、重苦しい歴史を思い起こさずにいられない。

■直接言及していないが主たる目的が「中国抑制」なのは明らか

経済産業省が6月28日に発表した2022年版の「通商白書」は、先進7カ国(G7)が発動した対ロシア制裁に多くの国が参加していないため、世界経済が分断される懸念が、冷戦後として最も強まっていると指摘した。同白書はロシア・ウクライナ情勢に米中対立や新型コロナウイルス感染症の流行が重なり、世界のサプライチェーンが寸断されるリスクなど「不確実性」が高まっていると強調した。白書はまた、経済安全保障の一環として半導体や蓄電池など重要品目は特定の国への依存度を下げるべきと提言した。2021年版の「通商白書」も、同様の主張をしていた。

岸田内閣の経済安保の全体戦略は法律制度も動員して近隣地域との障壁を形成するものだ、さらには中国の「インド太平洋戦略」における地域協力を抑制し、グローバル産業チェーンと地域サプライチェーンにおける「脱中国化」を目標にしている。日本は経済安全保障を理由に米国の中国に対抗するハイテク競争を助け、米国など西側と力を合わせて重要技術とサプライチェーンで中国を排斥しようとしている。日本の狙いは日米同盟を強化し、自国の安全保障と経済の苦境を緩和すると同時に、技術面で優位に立って中国の経済成長と科学技術の進歩を遅らせることだ。

だが、日本のこの戦略が効果を出すことは難しい。中国と日本はすでに、相互補完性の強い貿易構造を形成している。中国税関によれば、2021年の日中二国間の貿易総額は前年比17.1%増の3714億ドルに達し、過去最高を更新した。中国商務部によれば、2021年の日本による実行ベースの対中直接投資は前年比16%増の39億1300万ドルに達した。通年で中国に新設された日系企業は前年比24.9%増の998社で、日本が中国に設立した企業は2021年12月末時点で累計5万4631社に達した。

現在の日本の経済安全保障措置が日中の経済・貿易協力に予測困難な制度的損害をもたらすことは必至だ。2022年1月に発効したRCEPにも直接の打撃を受ける。日中関係が悪化した際には経済や貿易が両国関係を修復する原動力になってきたが、この二国間関係の崩壊を食い止める「復元力」にも影響が及ぶだろう。

■「一定の経済安全保障」は理解できるが、やりすぎれば自縄自縛に

感染症の影響による世界的なサプライチェーンの寸断リスクの増大が増大しているのは事実だ。日本が戦略資源を主に外部供給に依存する自国の状況を考慮して、一定の経済安全保障措置をとることは理解できる。しかし、ゼロサム思考にもとづき経済問題を強調したり、経済に地政学的な対抗を絡めるべきではない。

日本が米国や欧米に追随して経済や技術における「中国デカップリング」に固執するならば、日中関係の安定した発展に深刻な影響を与えるだけでなく、日本自身が身動きを取れなくなる、戦略上のジレンマに陥ることになる。

■経済安全保障は企業の特質に反する「引きこもり」策

日本経済新聞は5月、日本電産、三菱ケミカル、三菱ガス化学、大日本印刷などの中国現地法人が増資を決めたと報じた。日本貿易振興機構(JETRO)は2月、調査対象となった日本企業1553社のうち72.2%が2021年度に中国で黒字達成と回答したと発表した。2020年度の63.5%を上回る2007年以来の高水準だったという。これらの黒字の主な要因は、「中国現地市場での販売増加」と「輸出拡大」だ。中国経済の強靭(きょうじん)性と力強い市場回復は、日系企業が中国への投資を増大やし続けている主因の一つだ。

客観的な法則は、日本経済の安全保障は産業発展の法則と利益追求という企業の特性に反して、「引きこもり」によって自ら守り、経済の流れを人為的に変更することは、失敗の運命にあることを我々に教えている。(翻訳・編集/如月隼人)