2022年8月3日、中国紙・環球時報は、「数百億ドルの補助では、米国の半導体産業は救えない」とする評論記事を掲載した。以下はその概要。

米中半導体競争が日増しに激しくなる中、米下院では7月28日に総額約2800億ドル(約37兆円)の「CHIPSおよび科学(CHIPSプラス)法案」を可決した。同法案では527億ドル(約7兆円)を企業による米国での半導体、チップ研究開発奨励に用いることが盛り込まれており、TSMCやインテルなど米国への工場建設を発表している半導体企業が補助金を得ることになる。このような資金は米国の半導体産業の発展に資するように見えるが、実際のところ半導体関連企業は大きな難題を突きつけられているのだ。

具体的に言えば、同法案では補助の条件として米国で半導体工場を建設する一方で、中国やその他の「潜在的に非友好的」な国に先進的な半導体製造拠点を設けないことが求められている。すなわち、米政府の補助を得たければ中国に工場を建設したり、既存工場を拡充したりできないということだ。米国側に立たず補助を受け取らない選択をすれば、企業の今後の正常な運営や発展に大きな障害を残すことになりかねない。一方で補助を受け取れば、中国市場での発展のチャンスを失うことになる。中国市場を捨てるという選択は、一部の半導体企業にとって死活問題だ。

中国は毎年世界市場の60%以上に当たる半導体を輸入する世界最大の半導体消費国で、コンシューマーエレクトロニクス、新エネルギー車といった市場の規模、成長速度は世界を大きくリードしている。また、中国での半導体産業の発展は、世界最大の市場である中国の顧客ニーズを把握できる上、高い技術力を米国より低い人件費コストで獲得できる、潤沢なエネルギーや水資源の供給保障に加え、地方政府から手厚い支援を受けられるというさまざまなメリットを得られる。米国に工場を建設すれば中国より1年半以上は時間かかり、建設コストも3割以上増加する。さらには毎年の運営、生産コストも3割多く必要だ。コストを増加させ、効率を下げてまで米国政府から補助金を受け取るというのは、企業にとって間違いなく悪い選択である。

この法案がもたらす結果は、各当事者が満足できないものとなり、米国の半導体産業発展を促すことも難しいだろう。米国の小規模半導体企業は補助を得られず生存が困難になり、大企業は補助を得られても中国での発展を諦めるという要求は飲めない。

グローバル化の大きな流れに融合し、自らがこれまで培ってきた技術的な優位を発揮し、可能な限りリードを守ることこそ、米国の半導体産業にとってのチャンスである。数百億ドルの補助を与え、力比べによって世界の半導体産業の構図を変え、米国本土の半導体産業を発展させようというのは、そもそも完了不可能なタスクなのである。低効率、人材不足、技術不足、システマティックな産業政策不足、本土市場不足といった根本的な問題を解決しないまま、527億ドルの補助で米国の半導体産業の健全な発展を目指そうという目標を実現することはできない。(翻訳・編集/川尻)