中国メディアの中国新聞週刊は3日、「海外市場への進出が加速する中国自動車メーカーに必要なこと」を論じる記事を掲載した。以下はその概要。

BYDは7月下旬、日本の乗用車市場に参入することを正式に発表し、来年には3種の電気自動車(EV)モデルを販売する計画を明らかにした。2021年、日本のEV販売台数は2万台に満たなかったのに対し、中国は350万台超。ガソリン車の時代に中国の自動車メーカーが日本に輸出することは、ほとんど考えられなかった。昨年も、日本で最も売れた自動車メーカートップ10には日本ブランドがランクインしており、ベンツ、BMW、フォルクスワーゲンも日本ではなかなかチャンスが訪れなかった。

BYDが日本の乗用車市場に上陸したのは、現在の中国自動車メーカーの海外進出の縮図のようなものだ。新エネルギー車の優位性により伝統的な自動車強国の市場を「攻めていく」ということであり、このような試みの事例が欧州にある。

■欧州で競争力を発揮し始めた中国のEV

中国の今年上半期の自動車輸出は前年同期比47.1%増の121.8万台だった。自動車輸出は2021年にすでに伸び始めており、2020年(106万台)比でほぼ倍増となる201.5万台を記録、初めて200万台を突破した。これは当の中国自動車メーカーも想定外だったといい、上海汽車集団の趙愛民(ジャオ・アイミン)国際副総経理は2019〜2021年の自動車輸出が倍々で増加したことについて「この3年間でこんなに成長するとは思わなかった」と本音を漏らした。

その要因については、新型コロナウイルスをはじめとする短期的な要素の影響が少なくないとの見方が一般的だ。中国汽車工業協会(CAAM)の陳士華(チェン・シーホア)副秘書長は「海外のサプライチェーンが新型コロナに足を引っ張られ、中国の生産能力が需要の空白の一部を埋めている」との見方を示した。中国乗用車市場信息聯席会の崔東樹(ツイ・ドンシュー)秘書長も「コロナにより海外市場、特に欧米市場で自動車用チップなどのサプライチェーン供給がひっ迫し価格が上昇しているが、中国の自動車の供給と価格は比較的安定している」とした。

フォードやGMが北米、中国以外の市場から撤退し、日産が欧州、韓国市場から撤退する中、それに反するように中国自動車メーカーは海外市場を開拓する選択をした。背景には、競争激化による国内市場の頭打ちがあった。崔氏は「アフターコロナ時代の中国の自動車輸出には不確実性が残っているが、コロナという短期的な要因により中国車の競争力が体現された。短期的なメリットは長期的なメリットに転化できる」と述べた。

こうした中国の競争力は相当程度、新エネ車に表れている。CAAMによると、今年上半期に中国が輸出した新エネ車は前年同期比1.3倍の20.2万台で、全体の16.6%を占めた。これにはテスラの貢献が大きいが、あるアナリストは「テスラの輸出台数を除いても、新エネ車の輸出伸び率は依然として急速だ」との見方を示す。

崔氏によると、新エネ車へのモデルチェンジに伴い、中国自動車メーカーの輸出先にも変化が生じている。2021年もアジアへの輸出台数が依然としてトップではあるが、2018年には全体の6%にも満たなかった欧州への輸出が2021年には25%(52.3万台)近くを占め、2位になった。陳氏は「これまではアジア、アフリカ、南米への輸出が多かったが、中国メーカーの新エネ車は欧州市場でも一定の競争力を備えている。新エネ車が輸出総数に占める割合は限られているが、先進国市場に参入するチャンスは明らかにある」と評した。

北京汽車集団傘下のEVメーカーの北汽新能源汽車の「極狐(アークフォックス)」は昨年3月に国際戦略を発表し、8月には欧州ディーラーの力を借りて現地市場を開拓しようとパートナー募集を開始した。中国新興EV「小鵬汽車」は今年上半期、スウェーデン、オランダ、デンマーク、ノルウェーに直営店4店舗をオープンし、ここ2年で国際市場への投資を拡大すると発表した。蔚来汽車は昨年10月にノルウェーの首都オスロに欧州初の直営店舗をオープン、2022年にはドイツ、オランダ、スウェーデン、デンマークに拡大する計画だ。

■中国自動車メーカーの課題は「認知度」

しかし、中国の自動車ブランドが欧州市場で認められるまでには時間がかかりそうだ。「CarSalesBase」の統計によると、2021年、小鵬汽車の欧州市場での販売台数は486台だった。蔚来汽車の欧州参入後の販売台数は7月末時点で750台で、うち2021年の販売台数は200台だった。崔氏によると、主力メーカーの好調の一方で、新興メーカーの輸出台数はまだまだ小規模で、ノルウェー市場を例にとると毎月の販売台数は数十台、数百台規模にとどまるという。

崔氏は「欧州では新エネ車の浸透率はますます高くなっているが、実はこれらの国の市場は大きくなく、ドイツやフランスなどの主力市場の規模とは比較にならない。一部の中国自動車メーカーはこれらの市場への参入は市場そのものを重視するのではなく、欧州市場への参入がもたらすブランド価値の向上をより重視している」とした。

また、「欧州の消費者は現実的で、中小型のEVに対する需要の方が多く、大型・高級EVに対する需要は限られている。そのため、新勢力は欧州輸出の突破口を見つける必要があるかもしれない。欧州の消費者も実のところ高い車を買う余裕がない」としたほか、「現地の消費者の好みを理解する必要がある。一部の大型EVは消費電力が高い可能性があり、欧州では環境に優しくないと思われている」とも指摘した。

自動車アナリストの鐘師(ジョン・シー)氏も「自動車は最もハイクラスな機械製品で、消費者はブランドへの認識が固定化され、(新興メーカーが)信頼を得るのは時間がかかる。中国のガソリン車はこれまで欧米などの先進国市場で成功を収めたことがなかった。中国車の概念はほとんど空白で、新エネ車の看板を掲げる今でも、急に受け入れられることはない」と指摘。ブランド認知度の確立は中国自動車メーカーが海外進出する上で越えなければならないハードルの一つだ。

自動車メーカーの海外進出は、車を売るだけではない。陳氏は「自動車を輸出するのは簡単だが、セットがそろっているかどうかが問題だ。例えば、現地でアフターサービス体制が整っているかどうか。セットが十分でないと、中国自動車メーカーの全体的なイメージにダメージを与える」と指摘。ほかにも、充電やバッテリー交換の施設整備、現地の消費者のニーズに合わせた商品展開も重要だ。

ある業界関係者は「2021年の輸出データが発表されてから、外部では中国の自動車輸出台数のランキングが熱心に注目されている。このようなランキングはあまり意味がない。中国と伝統的な自動車強国の国際市場競争力における差をはっきりと感じる」と述べた。陳氏も「中国の年間輸出台数は200万台を超えたばかりで、ドイツや日本の自動車産業とはまだ大きな差がある。製品の競争力は向上しているが、実際にブランドイメージを確立するまでにはまだ長い道のりを歩まなければならない」と指摘する。

■日本が手にしたのと類似の「チャンス」が、一方で不確実性も

一方で、新エネ車が中国にもたらしたチャンスは、日本の自動車産業が1970年代に直面したチャンスと類似しているとみられている。1960〜1970年は日本の自動車産業がスタートした段階で、トヨタなど一部のメーカーは米国をはじめとする海外市場の開拓を試みたが、効果は芳しくなかった。1973年のオイルショックと1975年の米国の排ガス規制に遭い、日本の自動車メーカーは技術変革のチャンスをつかみ、省燃費技術によって米国市場での拡大を実現した。

ただ、不確実性は欧州の環境保護政策だ。鐘氏は「新エネ車は政策志向型。これまで欧州各国は自動車メーカーにモデルチェンジを迫ってきたが、ロシアとウクライナの戦争でエネルギー危機に直面する中、クリーンエネルギーへの転換よりも十分なエネルギーの確保が眼前の最大の問題になっている。そのため、国際市場、特に先進国市場では新エネ車は爆発的に増加していない」と指摘。「米国は伝統的な自動車強国だが、政府は企業にモデルチェンジを迫っていない。自動車メーカーは依然としてガソリン車に依存して利益を生み出し、それによって雇用機会と税金をもたらしているからだ」とした。

サプライチェーンの問題もある。2021年、上海汽車集団の海外市場での販売台数は69.7万台で、そのうち海外拠点で生産されたのは3分の1。趙氏は「実際にはわれわれも、さまざまな地域、さまざまな市場でより現地に溶け込み、工場を設立して持続可能性を実現し、政治、経済、為替などによるリスクを低減できるようにしたいと考えている」と述べた。

陳氏は、「日本は完成車の輸出だけでなく、一部の部品産業も同時に海外に進出している。つまり産業の海外進出であり、日本は輸出先の選択にも慎重になっている」と指摘。ある業界アナリストは「日系自動車メーカーの中国南部進出の投資戦略を見ると、初期のホンダであれ、その後のトヨタ、日産であれ、往々にして産業チェーン全体が一つに束ねられ、ほぼ『セット』になっている。アイシン、デンソーなどの付帯サプライチェーン企業はすべて広州に工場を設立していることがわかる」と述べた。

海外に生産能力、産業チェーンを配置するには、中国の自動車メーカーがまだ長い道のりを歩まなければならないことは明らかだ。(翻訳・編集/北田)