米国のナンシー・ペロシ下院議長が中国の反対を押し切って2、3日の2日間、台湾を訪問した。台湾の蔡英文総統と会談したペロシ氏は米国と台湾との安全保障や経済における結び付きを深めて支援を続けていく姿勢を強調。猛反発した中国は台湾を取り囲む大規模な軍事演習や経済制裁に踏み切った。

今回の訪台は事前に公表されていなかったが、ネット上で航空機の位置情報を提供するフライトレーダーによると、2日午後、マレーシアのクアラルンプールを飛び立った搭乗機(米空軍の要人輸送機C40)は東進してインドネシアのボルネオ島上空を経て、フィリピン南部に到達。同国東側をかすめるように北上した。

最短の南シナ海ルートを避け、大きく迂回(うかい)したのは、夜間に中国軍機と遭遇して不測の事態を招くことを警戒したためとみられる。ちなみにフライトレーダーには世界中からアクセスが殺到し、つながりにくい状態が続いた。

台湾・中央通信社などによると、3日、台北市内の総統府でペロシ下院議長と会談した蔡総統は訪台により米議会の台湾に対する「盤石の支持」を示したと歓迎。ペロシ氏が台湾の民主主義に関心を寄せ続け、台湾の国際参加への支持も示してきたとして「最も深い謝意」を表明した。

ペロシ氏は訪台を通じ、米国は「台湾との約束を破棄しないことを伝えたい」と言明。台湾がさまざまな挑戦に直面しているとした上で、米国と台湾との結束は「極めて重要」とし、米国と台湾間の固い結束を世界に見せたいと語った。

これに対し、中国の王毅国務委員兼外相は訪問後、直ちに談話を発表。「訪問は『一つの中国』原則への重大な違反であり、悪意をもって中国の主権を侵害し、公然と政治的挑発を行うものであり、中国国民の強い憤りと国際社会の一致した反対を招いている。米国の一部の政治屋がすでに中米関係の『トラブルメーカー』へと成り下がり、米国は台湾海峡の平和と地域の安定に対する『最大の破壊者』となっていることを改めて証明したと言える」などと糾弾した。

国営新華社通信によると、人民解放軍は4日正午から7日正午にかけて台湾周辺の六つの海域と空域で重要な軍事演習を実施し、実弾射撃を行うと公告。船舶と航空機に対して、安全確保のため、演習期間中は指定した海域など進入しないよう注意を呼び掛けた。

ロイター通信によると、台湾国防部(国防省)は演習について「空域および海域を封鎖しているのも同然だ」と非難。「台湾の安全保障を断固として守り、領土主権を侵す行為に対抗措置を講じ、戦争を求めない原理原則に基づき警戒レベルを引き上げる」とした

さらに中国の関税業務を担当する海関総署は3日、台湾産のかんきつ類の果物やタチウオ、アジの輸入を取りやめると発表した。商務部(商務省)も同日、台湾への天然砂の輸出を一時停止すると発表した。いずれもペロシ下院議長訪台への報復措置とみられる。(編集/日向)