台湾海峡に設けられた中国本土と台湾の「中間線」について、ロイター通信は「近代化された中国海軍の勢力誇示で存在する意味は薄れる一方となっている」と報じた。台湾海峡は国際海峡で中間線に法的な根拠はないが、台湾側は中国の攻勢をけん制するため、あくまで死守する構えだ。

ロイター通信によると、中間線は中国と台湾の敵対意識が最高潮に達した1954年、米国のある将官が設定したとされる。中台双方に自制を促し、これまで70年近く地域の平和維持に一定の貢献をしてきた。

台湾海峡の最も狭い場所では中間線から台湾領海までの距離は約40キロ。台湾側は領海のすぐ近くで中国海軍が影響力を定着させれば、台湾軍が極度の緊張を強いられ、中国による海上封鎖や台湾侵攻がずっと容易になってしまう、と警戒感を抱いている。

最終的に中間線の存在がうやむやになれば、米国が長らく中国近海、いわゆる「第1列島線」に沿って築いてきた軍事的優位も脅かされ、中国の太平洋への戦力投射能力を高めかねない。

台湾の呉釗燮・外交部長(外相)は現状の変更は許容できないと主張。「われわれは同志国と手を携え、中間線維持に万全を期して台湾海峡の平和と安定を守る必要がある」と訴えた。

台湾の安全保障計画に詳しい高官は「中国側は圧力を高め、最終的にわれわれが中間線を放棄するのを望んでいる。彼らは中間線放棄を既成事実化したいのだ」と指摘。別の複数の高官は中間線が提供している安全保障上のバッファー(緩衝地帯)という考え方を台湾が捨ててしまうのは「不可能だ」と強調した。

台北のシンクタンク「国家政策研究財団」の安全保障分析専門家は「中間線という暗黙の合意が崩れ、偶発的な衝突のリスクが高まっている」と言及。台湾の軍と沿岸警備隊は中国軍からのより複雑な挑戦に対応できるよう、権限を拡大して法的保護を強化する方向で見直されるべきだとの考えを示した。

中間線に関して中国政府は一応尊重する姿勢を見せていたが、2020年に外務部報道官が「存在しない」と明言。国防部と台湾問題を扱う国務院台湾事務弁公室も同調した。

特に8月初め、米国のペロシ下院議長の台湾訪問に反発した中国が台湾を取り囲む大規模な軍事演習に踏み切って以降は、連日のように戦闘機などが中間線を越えて飛来し、台湾に圧力をかけ続けている。海でも中国と台湾のフリゲート艦や駆逐艦が互いに追跡行動を実施。中国艦艇は台湾艦艇の隙を突いて、中間線を越えようと動き回っている。(編集/日向)