年初来、ミサイル・核開発を急ぐ北朝鮮が7度目の核実験を行うかどうか。核実験が強行されれば朝鮮半島情勢は一気に緊迫の度を強めるだろう。

◆新型ICBM、米本土が射程内に

北朝鮮は年初来、6月初めまで毎月のようにミサイルの発射実験を繰り返してきた。6月5日に短距離弾道ミサイル8発を日本海に向け撃って以来しばらく音沙汰がなかったが、8月下旬の米韓合同軍事演習に先立ち、同17日黄海に向け巡航ミサイル2発を発射、依然としてミサイル開発をやめるつもりがないことを内外に示した。

米韓の軍事専門家が懸念するのは、弾道ミサイルや極超音速ミサイルなどさまざま種類のミサイルの開発と実験を繰り返している点。とりわけ北朝鮮が2月末から3月にかけ大陸間弾道ミサイル(ICBM)級の発射実験を次々と行ったことを懸念する専門家は多い。特に3月末の新型ICBMとされる「火星17」の発射実験に成功したことは「極めて深刻な脅威」(米CNNテレビ)として米国の安全保障関係者に受け止められている。このミサイルの射程は1万5000キロを超え、米国の東海岸を含め米本土が射程に入るとの分析が有力だからだ。

◆実戦想定し米韓合同演習

北朝鮮が異常な頻度とスピードでミサイル開発を進めていることに米国と韓国は神経をとがらせ、対抗措置をとっている。韓国で尹錫悦政権発足後初めての米韓合同軍事演習が8月22日から9月2日まで行われた。同演習は文在寅前政権時代には規模が縮小されコンピューターを使った机上演習に重点がおかれていたが、今回は約4年ぶりに規模を拡大、野外戦闘訓練も実施された。韓国の軍事アナリストによれば、北朝鮮の大量破壊兵器の排除やソウルが攻撃された際の反撃作戦など、実戦を想定した本格的な訓練だったという。「北朝鮮に対し融和政策をとった文前大統領とは対照的な尹大統領の対北強硬姿勢を象徴する演習」(韓国有力紙「中央日報」記者)との評価が一般的だ。

合同演習に先立ち、7月には米空軍のステルス戦闘機F35Aなどが参加した共同訓練も行われている。さらに注目すべきニュースがソウルやワシントンのメディアの間で伝えられている。トランプ米政権時代に取りざたされた金正恩総書記ら北朝鮮指導部を標的にする「斬首作戦」がまた、復活したという情報である。両国の特殊部隊は6月と7月に「斬首作戦」の合同訓練を行ったというのだ。最初は米国内で、2回目は韓国国内でそれぞれ実施されたもようだ。米国の軍事専門家によれば、この合同訓練で中心的役割を担ったのは、2011年にパキスタンに潜伏していた国際テロ組織「アルカイダ」の最高指導者だったウサマ・ビンラディンを殺害した米海軍特殊部隊だったという。

◆核実験強行なら、米朝軍事衝突のリスクも

米韓合同軍事演習に関し金正恩総書記の妹で朝鮮労働党副部長は「北侵戦争演習を強行する破廉恥な者」と尹大統領を名指しし非難、「強力な報復」を行うことを示唆している。日本の北朝鮮専門家によれば「強力な報復」には更なるICBM発射のほか、核実験も含まれる可能性があるという。北朝鮮が最後に核実験を実施したのは2017年9月。もし、今度実験が行われれば7度目となる。今春以来、北朝鮮が核実験を行う兆候があるとの情報が米国や韓国で盛んに報じられている。ソウルの軍事専門家は一部メディアに「北朝鮮が核爆弾の小型化、軽量化のため核実験を行うのは常識」と述べている。国際原子力機関(IAEA)や米有力シンクタンクの情報分析サイト「38ノース」からも、北朝鮮北東部の豊渓里核実験場で既に準備を終えたとの情報が流れている。

ただ、北朝鮮の核実験には中国が反対しているのは確か。前回2017年の北朝鮮の核実験に際しては国連安保理での対北制裁決議案に中国はロシアとともに賛成票を投じている。この中国の基本方針はその後も変わっておらず、金正恩総書記が中国の後ろ盾を犠牲にしてまで核実験強行するかを疑問視する専門家も多い。もしも、それでも北朝鮮が核実験を行うなら、朝鮮半島情勢は「トランプ前政権発足直後のときのような軍事衝突のリスクの高い緊張状態に一気に突入する」(米有力シンクタンクの北朝鮮問題研究者)との予測が現実味を帯びることになろう。