中国全国人民代表大会常務委員会の栗戦書委員長が15日から17日にかけて韓国を訪問し、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領や金振杓(キム・ジンピョ)国会議長ととの会談も行った。しかし中韓関係の実施的な進展は10月16日に始まる中国共産党全国代表大会(中国共産党大会)の終了後との見方が出ている。また、中韓関係の今後を決める大きな要因は、韓国国内での高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備という。

韓国にとって、とりわけ重要なことは中国との経済関係の推進だ。中興大学国際政治研究所の盧信吉助教授は、「チップ4」が焦点の一つとの見方を示した。「チップ4」とは米国が推進する半導体関連の国際戦略で、中国を可能な限り排除しながら米国と台湾、韓国、日本が永続的な同盟を結ぶ内容だ。韓国はチップ4に参加することができるが、その場合には中国との関係は後退する。盧助教授によると、韓国は半導体の対中輸出に「風穴」を開ける方向で動いているという。

尹大統領は栗委員長に対して、習近平国家主席の都合のよい時期の韓国訪問を招待した。しかし盧助教授は、習近平主席が早い時期に訪韓しても実質的な成果は得られないとの見方を示した。中国共産党大会で習近平氏が相当な支持を得て、指導者としての地位をさらに確固たるものにする、すなわち国内を固めた上でないと、中国は外交戦略の調整に乗り出せないという。

韓国にとっては、北朝鮮問題などを考えれば米国との関係は極めて重要だが、経済を考えれば中国との関係は極めて重要だ。8月上旬にはペロシ米下院議長が中国の猛反発にもかかわらず台湾を訪問したが、続いて韓国を訪れた際に、尹大統領はペロシ議長に直接の対面はしなかった。しかし今回、中国の栗委員長とは対談した。

ペロシ議長は米国政界中で3番目の地位にある人物で、栗委員長は中国政界中で3番目の地位にある人物だ。韓国側の両者に対する対応の違いも注目された。東京国際大学国際戦略研究所の李克賢准教授は尹大統領が、栗委員長に直接会ったのは、政治的・経済的利益を考慮したものだとの考えを示した。

李准教授は「中国は(韓国の)最大の貿易相手国であり、米国は韓国の電気自動車生産の利益を損ねている。経済的には当然、韓国は米国よりも中国に接近するだろう」と指摘。

李准教授はさらに、北朝鮮問題では、中国の影響力が米国よりもずっと大きいとの考えを示した。尹大統領がペロシ議長に会わなかったのは、韓国が台湾問題について米国の立場とは異なることを中国に示す狙いがあったという。

尹大統領は選挙期間中には、親米的な立場を強調した。そのため、ペロシ議長とは会わず栗委員長とは会談したことを、意外視する声も出た。

李准教授は尹大統領の方向性の転換について「就任後は現実的な路線を取り、中国に傾いている」と指摘。現実を重視して、可能な限りバランスを取ろうとしているのが、現在の尹大統領の方針という。

中韓にとっての最大の「摩擦の原因」は、米軍によるTHAADの韓国国内配備だ。

中国政府外交部(中国外務省)は8月に、韓国政府はTHAADの追加配備は行わず、韓国国内におけるTHAADの使用を制限する方針を採用したなどと表明した。しかし韓国側は同表明を否定し、中国側が関連事項に言及すれば中韓関係の足かせになると批判した。

尹大統領はは栗委員長と会談した際に、THAAD問題が中韓関係の足かせにならないようにする必要があると述べたとされる。李准教授はTHAADについて、名目上は北朝鮮内のミサイルを探知するためとされているが、ロシアの一部と中国領土の大部分を探知する能力があることから、中国がTHAADを潜在的脅威とみなすことは理解できるとの考えを示した。

しかし韓国側はこれまでのところ、韓国国内でのTHAAD配備について、北朝鮮の核の脅威に対応するものであり、国家の安全保障にかかわることであるので妥協はできないとの姿勢を示している。(翻訳・編集/如月隼人)