2022年9月21日、中国メディアの観察者網は、日本が開発を進める燃料電池車の普及が進まない背景について論じた文章を掲載した。以下はその概要。

いわゆる「燃料電池」とは、実際はエネルギー転換装置のことであり、原料となる水素と酸化剤を結合して電気エネルギーに転換するものだ。水素ガスのエネルギー密度はリチウムイオン電池より高く、水素ガス1キログラムがガソリン3.3リットルに相当するエネルギーを持つ。また、機械的な発電ではないために騒音も非常に少なく、水素資源はいくら使っても枯渇することはない上、排出するのは水蒸気と熱い空気のみであり、非常にクリーンである。

そんな燃料電池を日本が発展させようとした動機は明確だ。まず、石油依存からの脱却してエネルギーの自給を実現すること、そして省エネや温室効果ガス削減という環境保護上の狙いだ。さらに、経済成長への貢献や雇用の創出にも期待をかけており、日本政府はかつて、水素エネルギー分野が将来1兆米ドルの市場価値を生み、3000万人分の雇用機会を生み出すとの予測を示していた。

しかし、日本の燃料電池事業は描いた青写真の通りにはいかなかった。2020年現在の日本における燃料電池車保有台数は4000台に満たず、主力車種であるトヨタの「ミライ」は発売から4年で日本、欧米を合わせても1万6000台しか売れなかった。一方で米テスラや中国メーカーによる電気自動車(EV)の開発、普及は急速に進んでおり、そのコントラストを見て日産やホンダは燃料電池車の開発、生産をストップしたのである。

日本の燃料電池車が売れない理由はまず、水素ステーションが少ないことだ。今年5月現在で日本国内に161カ所しかなく、その3分の1は首都圏に集中している。設置の動きも鈍く、30年までに掲げた目標の3分の1程度しか完成できない見込みだ。また、燃料電池システムに不可欠なボルタパイルに使用される白金触媒のコストが非常に高く、燃料電池車の価格がハイブリッド車の2倍と高価であることも売れない要因の一つだ。そして、水蒸気の電気分解により水素を量産可能な原子力発電が、2011年の東日本大震災に伴う原発事故以降稼働できなくなった点も大きい。太陽光や風力のエネルギーで水素を作ることもできるが、日本の地理的環境を考えると現実的ではない。

さらに、日本の技術的な戦略にも問題があった。燃料電池関連の技術を独占し、特許料を取得して潤沢な利益を得ようという目論見だったが、追随してくると思っていた米国や中国は燃料電池をスルーしてEVの研究開発に注力し始めた。いわば策士が策に溺れたわけである。

ダイムラー・トラックのマーディン・ダウム会長はEVと燃料電池車の関係はゼロサム・ゲームではなく、両者のバランスを取り「適材適所」で利用していくべきだとの考えを示している。ある路線だけを死守しようとすればリスクが高まるだけ、というわけだ。そこで中国は日本の失敗を教訓として、燃料電池車の開発にも取り組んでいる。昨年には「水素エネルギー産業発展中長期計画」を発表し、段階的な発展を目指す方針を打ち出した。わが国は今や世界最大の水素生産国であるものの、それは主に工業における副産物であって、省エネに貢献するものとは言い難い。省エネ型の水素エネルギー技術の発展は持久戦になるだろう。今後ますます多くの中国企業が課題に取り組み、ブレイクスルーを果たせばかつて「燃料電池(フューエルセル)は愚かな電池(フールセル)」と断じたイーロン・マスク氏も燃料電池に注目するようになるかもしれない。(翻訳・編集/川尻)