実は冬から春にかけては、体調不良を訴える人が多くなる季節。そんなときの手軽かつ効果がある対処法は、「しっかり寝る」こと。良い睡眠の鍵は、神経伝達物質である「セロトニン」が握っています。そのセロトニンを味方につけるには? 一般社団法人睡眠body協会代表で理学療法士の矢間あやさんが解説します。

ある統計によると冬から春にかけて81.8%の人が、冷えや肩こり、倦怠感などの何かしらの体調不良を訴えているという調査結果があります。そして、この不調を改善するためには、「睡眠」を重視する人が最も多かったそうです。

睡眠は、疲労回復や病気の予防だけでなく、冷え性や倦怠感などちょっとした体調不良にも効果的。春は気候や環境の変化などにより、心身のバランスが乱れやすくなる季節です。メンタルにも、睡眠にも大きく関わる神経伝達物質のひとつに「セロトニン」というものがあります。幸せホルモンとも呼ばれる「セロトニン」の力を味方につけて、良質な睡眠を手に入れて、新しい季節を楽しみましょう

幸せホルモンと呼ばれる
神経伝達物質「セロトニン」とは?

「セロトニン」という言葉はどこかで一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?

セロトニンは、人間の精神面に大きな影響を与える神経伝達物質で、ノルアドレナリン、ドーパミンと並んで、体内で特に重要な役割を果たす“三大神経物質”のひとつです。セロトニンが不足すると、慢性的なストレスや疲労、イライラ感、やる気の低下、仕事への意欲がなくなる、協調性の欠如、うつ病、不眠と言った症状が現れてきます。逆に、セロトニンが充実していると、精神的に安定するので、やる気に満ち、はつらつと過ごすことができ、よく眠れるようにもなります。これが「幸せホルモン」と呼ばれるゆえんです(参考:厚生労働省「e-ヘルスネット」)。

ちなみに「幸せホルモン」と言われますが、女性ホルモンや成長ホルモンなど、いわゆる「ホルモン」とはちょっと違います。これらのホルモンは少量で体の色々な機能の調節を行います。一方、私たちの脳内には約100種類以上のホルモンと同様の働きを持つ物質や脳内の神経伝達物質が分泌されています。これらを「脳内ホルモン」と呼んでいます。セロトニンは、脳内ホルモンの一種です。

夜に人を睡眠へと導く
睡眠ホルモンの分泌に
大きく影響するのがメラトニン

自律神経には交感神経と副交感神経の2種類があり、交感神経は主に日中活動しているとき、副交感神経は眠るときやリラックスしている際に優位になる神経です。夜、副交感神経が優位になっていなければ、眠れないなどの問題を引き起こします。セロトニンは、この自律神経を調節する働きを活性化させることにより、体温をはじめ血圧や代謝など体が快適に活動できるように調子を整える働きがあります。

また、セロトニンと同様に、睡眠の質を高めるために必要なものとして「メラトニン」というホルモンがあります。メラトニンは、朝目覚めてから約15時間後に脳の松果体から分泌し始め、就寝1〜2時間前に上昇し、副交感神経を優位にして呼吸や脈拍を安定させて、体の内部の温度である深部体温を下げて快適な眠りへと導きます。そして、このメラトニンを十分に分泌させることにも、セロトニンは大きく関係し、セロトニンが朝から日中にかけてしっかりと分泌されていることが、メラトニンの分泌には必要です。

このように睡眠に大きな影響をもたらすセロトニンの分泌を増やすためにはどうしたら良いのでしょうか。日頃できるポイントをご紹介します。

セロトニンの分泌を促し
良い睡眠を手に入れるための
3つのアドバイス

太陽の光を浴びる

セロトニンの話をする上で欠かせないのが、「太陽の光」です。太陽の光が網膜を刺激して直接セロトニンを活性化すると現在は考えられています。セロトニンは起床すると分泌が始まり、起きている間はずっと分泌され続けます。そして夜になるにしたがい分泌量が減り、寝ると分泌が止まるという特徴があります。よく、朝起きたら朝日を浴びようと言われるのは体内時計をリセットする他、セロトニンの働きを活性化するためにもとても重要なのです。ちなみに、曇っていても十分にその効果は期待できると実験の結果証明されています。カーテンや窓をあけて空に向かって大きく伸びをしたり、深呼吸をするなどして朝日を浴びることが大切です。部屋が明るいから太陽の光でなくても大丈夫なのでは。と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、室内の明るさは、太陽の光の明るさには到底及ばず、活性化にはつながりにくいです。

日中に軽い運動を行う

朝日も大切ですが、日中に太陽の光の下で軽い運動を行うことがセロトニン分泌にはより有効です。散歩やウォーキングのような一定のリズムを刻む「リズム運動」はセロトニンの分泌を促進させるので効果が期待できると言われています。セロトニンは運動を始めて約5分後からセロトニンが高まり、20〜30分でピークに達します。それ以上運動を継続して、疲れたと感じるレベルになると、セロトニンの機能は低下します。
また、自分にとってキツイと感じる、激しいレベルの運動ではセロトニンの効果は期待できません。朝の通勤時やお昼休みを上手に利用して、散歩やウォーキングを行えば、気分転換にも、運動不足解消にもつながり一石二鳥ですよ。

セロトニンを作る食材を食べる

セロトニンの材料は、アミノ酸のひとつ「トリプトファン」と言われる物質から合成されます。人間の体内では生成できないため、食事から摂取する必要があります。トリプトファンが豊富に含まれる食品は、納豆や豆腐などの大豆・豆製品、牛乳やチーズやヨーグルトなどの牛乳製品、赤みのお肉やカツオやマグロといったお肉やお魚などです。さらに、トリプトファンからセロトニンを合成するときにはビタミンB6が必須となります。ビタミンB6が多く含まれる食品はカツオや、マグロ、バナナやさつまいもなどに多く含まれます。私たちは食べたもので作られます。質の良い睡眠を得るためにも、何を食べるかはとても大切なのです。

セロトニンが増えると
他にもこんな効果が

また、セロトニンがしっかり分泌されていると睡眠以外にも、自律神経のバランスが整い、精神が安定するなど、効果が期待されます。セロトニンが不足すると、自律神経のバランスが乱れ、慢性的なストレスを感じたり、不眠になったり、うつ病を引き起こす可能性があります。現代社会は、ストレス社会と言っていいほどストレスが蔓延していると言われます。ストレスに負けない、安定した精神を保つためにも、セロトニンの分泌は大切なのです。

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睡眠と言うと、「夜」に意識が向きがちですが、昼間の行動も質の良い睡眠につながります。また、眠れない問題はひとつだで成り立つわけではなく、さまざまな要因が重なって起こります。睡眠問題は心と体の健康の指標になります。ぜひセロトニンを味方につけて、質の良い睡眠を手に入れてより楽しい毎日を送って行きたいものです。

text | re:sumica編集部