[東京 20日 ロイター] - 7月ロイター企業調査によると、今後定年を65歳以上に引き上げる可能性がある企業が52%と過半数を占めた。人手不足の緩和や技術の継承といった狙いがある。

一方で、組織活性化に逆行するとの見方や、若手雇用機会の喪失など、デメリットを感じている事もわかった。定年を延長する場合、半数以上の企業がフルタイム雇用を想定、賃金は3割以上の減少を予定している企業が6割近くを占めた。

この調査は資本金10億円以上の中堅・大企業400社を対象に6月30日─7月13日に実施。回答社数は260社程度。

<定年延長は人材不足対策、「つなぎ役」の位置づけも>

「若年層の採用が厳しい中、定年延長は避けられない」(食品)、「部下の指導、ノウハウの伝授に期待している」(運輸)──定年を延長する背景には、深刻化する人手不足や人材不足の現状がある。

現在は定年を60歳としている企業が全体の85%。65歳までに設定している企業が15%。それ以上はゼロだった。しかし今後、定年延長を予定ないし検討している企業は6割に達し、その多くが「65歳」と回答。全体の46%を占めた。66歳から70歳までの間との回答も6%あり、合わせて52%が65歳以上への引き上げを検討している。

もっとも「営業担当職の人材が不足気味だが、長期的な内需縮小を鑑みれば、いたずらに採用拡大できない。当座の不足をシニア人材が担う」(卸売)とする声もあり、人口減少を念頭につなぎの労働力と位置づける考え方もみられた。

<技術継承にメリット、組織活性化には逆行>

定年延長はメリットの方が大きいとみている企業は62%と過半数を占めた。

メリットとして最も多かったのは「技術ノウハウ継承」で全体の77%、「人手不足緩和」が73%を占めた。このほか、「再教育コストの削減」が31%となった。

他方でデメリットが大きいと答えた企業も38%あった。

「社内の世代交代が進まない」(情報サービス)、「新卒採用とのバランスが取れない」(小売)といった声があり、「組織活性化に逆行」が55%、「若手雇用機会の喪失」が52%となった。

「能力不足の社員の長期雇用が負担」(運輸)、「過去の経験が全て役に立つわけではない」(化学)といった厳しい声もあり、「高齢化に伴う生産性低下」をデメリットにあげる企業も39%を占めた。

「人件費増加」を懸念する回答も34%あり、「単純な延長は人件費コストの上昇につながる。当面は65歳までの再雇用制度でいく」(紙・パルプ)といった声が多かった。

定年延長後の働き方は、「フルタイム勤務」とする企業が全体の58%と過半数を占め、短時間労働との「選択制」とする回答も31%あった。賃金体系は現役時代と比較して30%減との回答が26%と最も多かったが、それ以上のカット率も合わせると57%の回答企業が30%以上の賃金カットを想定している。

<手元流動性増加の企業は5割弱、将来リスクや資金需要へ備え>

昨年度末の手元流動性が前年度比で増加した企業は全体の45%。横ばいは37%、減少は18%となった。

増加・横ばいの理由でも最も多かったのが「将来リスクへの備え」で31%。次いで「当面設備投資充当は不要」との回答も28%を占めた。

手元流動性を持つ方針については「事業取得のための資金」(非鉄金属)、「成長投資に備えるため」(建設)といった前向きの回答がある一方、「いつか必ずくるクラッシュに備えて手元キャッシュを潤沢に持つ」(不動産)、「月により必要資金にバラツキがあるので減らさないようにしている」(機械)など、将来への備えの意識もかなり強いことがわかる。

設備投資への充当が不要との背景には、「特に投資案件がなかった」(輸送用機器)「設備投資を抑制している」(いずれも輸送用機器)という本音も寄せられた。

財務省の法人企業統計では今年1─3月期に手元流動性にあたる「利益剰余金」は既往最高の390兆円にのぼり、前年同期比6.5%増えたが、人件費は同1.0%の伸びに、設備投資は4.5%の伸びにとどまっている。

今年度の株主還元を「増加方針」とした企業は全体の29%。「現状維持」は69%だった。「自社株買い」との回答も複数寄せられた。

「手元流動性が過大となる傾向があり、投資、増配と積極的な施策を実施していきたい」(小売)など、投資とのバランスに配慮しながら株主還元を増やしていくスタンスをとる企業もある。

*見出しを修正しました。

(中川泉 編集:石田仁志)