[フランクフルト 20日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は20日の理事会で、超緩和的な政策スタンスも据え置くとともに、見通しが悪化すれば資産買い入れを拡大する道も残した。緩和解除を巡る議論もなく、資産買い入れの縮小という不可避の決定をできる限り先送りする可能性を示唆した。

ECBは「見通しが悪化、もしくは金融環境がインフレ軌道の持続的な調整に向けた一段の進展と整合しない状況になれば、理事会はプログラムの規模、期間を拡大する用意がある」と表明した。

ドラギ総裁は理事会後の会見で、緩和策調整に関する選択肢の策定をスタッフ委員会に指示しなかったと明らかにした。この件に関しては、秋にあらためて議論するとしている。近年、主要な政策変更の多くは、スタッフ委員会による下準備がまず発表されてから実行に移された経緯があり、指示しなかったとする総裁の発言は大きな意味合いを持つ。

ドラギ総裁には、金融引き締めの可能性を前月示唆し、金融市場の「ミニタントラム」を招いた痛い経験がある。ポルトガルのシントラで行った総裁の講演は、政策調整を示唆したと受け止められ、独10年債利回りは2倍の水準に跳ね上がり、ユーロは3%超値上がりした。ドラギ総裁は、早期の緩和解除でこれまでの成果を台無しにしないよう、インフレ押し上げに向け、忍耐強くあるべきと強調することで、次の動きに関する手掛かりをできる限り与えないよう腐心したもようだ。

ドラギ総裁は会見で、資産買い入れプログラムの変更の可能性について「まだそのような時点に至っていないため、われわれは粘り強く、かつ忍耐強く対応する必要がある」と指摘。

「われわれはフォワードガイダンスに変更を加えない、また将来の変更について協議する時期を決めないことで全員が同意した。言い換えれば、単に議論は秋に行われるべきだとした」と述べ、理事会が金融政策ガイダンスの変更見送りと、緩和策変更の検討時期を設定しない方針を全会一致で決定したことを明らかにした。

INGのエコノミスト、カルステン・ブレゼスキ氏は「ドラギ氏がシントラ発言を巡る混乱で、事態の収拾を望んでいるのは明らか」とし、「テーパリング(資産買い入れの段階的縮小)観測を阻止、または巻き戻すことで、夏季の金融市場に無理やり静けさを取り戻そうとしている」と話す。

エコノミストの間では、これまで資産買い入れの今後に関する決定は9月との見方が支配的だったが、ドラギ総裁の発言を受け、10月、もしくは12月の可能性も出てきたとみられている。

ドラギ総裁が秋に政策変更について議論すると明らかにしたことで、ユーロは約2年ぶり高値に上昇。債券市場では、ドイツと周辺国国債の利回り格差が縮小した。

ユーロ圏経済は17四半期連続で成長するなど、2007─08年の金融危機前以来の好調さをみせており、ECBは見通しへの自信を深めている。だが、景気が上向く一方で、物価上昇圧力は高まらず、最も頭の痛い問題となっている。

賃金増の鈍さがインフレを抑制しており、少なくとも2019年を通じて2%弱としている目標の達成は実現できない公算が大きい。これは、ECBが向こう数年にわたり、緩和的な金融政策を継続する必要があることを示している。

ドラギ総裁は、賃金のダイナミクスは危機以降の過去10年に変化したが、一時的な現象との考えを示し、金融政策手段や目標を変更するのではなく、辛抱強くあるべきだと述べた。

ベレンバーグのホルガー・シュミーディング氏は、「コアインフレ率が抑制された状況が続くなか、ECBは政策を誤るとしたら慎重な方向で誤ることを選ぶ公算が大きい」としている。

ECBは金利も予想通り据え置き。リファイナンス金利は0.00%に、限界貸出金利は0.25%に、中銀預金金利はマイナス0.40%にそれぞれ据え置いた。ECBはまた、債券買い入れの規模を月額600億ユーロに据え置くことも決定した。

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