[ロンドン 19日 ロイター] - 過去10年間の超低金利局面で高まり続けてきた長期債に対する投資家の需要は、主要中央銀行の政策が引き締め方向に転じ始めた今もなお、ほとんど衰える気配を見せていない。

ポルトガルが先週発行した3億1500万ユーロの28年債の利回りは、既発債を大幅に下回り、引き合いの強さをうかがわせた。アルゼンチンは6月に27億5000万ドルの100年債を起債。英国が5月に発行した40年債は過去最高の需要を記録し、米国は史上初めて期間30年を超える国債発行を検討している状況だ。

こうした長期債への強気の見方は、直観にそぐわないように思われる。米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)などは大規模な長期債買い入れの縮小に乗り出そうとしている。FRBは既に利上げを開始しており、長期債購入が基本となるいわゆる「デュレーション・トレード」は金利上昇で大きな打撃を受ける。

一部の投資家によると、それでも長期債に常と変らぬ需要があるのは、米国もユーロ圏も物価上昇率が中銀の目標を下回り続けているからだ。期間の長い債券ほど、インフレが価格に及ぼす悪影響が大きい。

トランプ米大統領が大規模な投資を約束したことで世界的にインフレが進むとの観測が広がったが、米国内の政治的理由からそうした投資はまだ実現していない。物価を左右する重要な要素の1つである原油価格も低迷から抜け出せずにいる。

長期債投資にとっては、債券市場専門家が「新パラダイム」と称する構図も追い風となり続けるだろう。すなわち、物価上昇率が構造的に低く、西欧の高齢化による年金業界の拡大が長期債需要を支えるという仕組みだ。

ノルデア・バンクのチーフストラテジスト、ヤン・フォンゲリック氏は、長期債入札において目を見張るほどの需要がある点を挙げて、投資家の保有債券の平均償還年限は今後延び続けるとみている。

同氏は「イールドカーブにおいてより長めのゾーンを積極的に買う投資家の数が増えてきている。利回りの変動がこの取引の痛手になるだろうが、現段階ではそれは一時的な逆風にとどまりそうだ」と話した。

<タカ派発言>

期間10年超のG7債で構成するメリルリンチの指数は過去2年で10%強のリターンをもたらしてきた。期間1─5年のG7債指数の上昇率1.4%を大きく上回っている。

過去3週間はECBのドラギ総裁やイングランド銀行(英中央銀行、BOE)のカーニー総裁、カナダ中銀幹部らから相次いでタカ派的な発言が飛び出したが、長期債への影響は持続しなかったように見える。

メリルリンチの期間10年超のG7債指数は一時2.5%下げる場面があったものの、その後大半を取戻して今は上昇基調に戻ったようだ。

オールド・ミューチュアル・グローバル・インベストメンツのマルチ資産チームでポートフォリオ運用に携わるヒネシュ・ペーテル氏は「中銀が債券購入を巻き戻したがっており、彼らが長期債の最大の買い手になってきたという事実はある。しかしより長い目で見れば、わたしはデュレーションの長期化を好ましいと考える」と述べた。

<フラット化>

ペーテル氏の主張によれば、FRBの利上げは、1994年と2000年代初めの例が示すように、米国債のイールドカーブのフラット化をさらに進める公算が大きい。利上げが物価上昇を抑えることで、長期債の利回りが安定するか、一段と低下するからだ。

インフレがずっと落ち着くとの予想に基づけば、投資家は相対的にリターンが大きい長期債に資金を振り向けるだろう。

ブルーベイ・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、マーク・ダウディング氏は「イールドカーブのフラット戦略という文脈では、中期債に比べて長期債が好まれる」と指摘した。

長期債の強気派にとっては、FRBのイエレン議長が先週の議会証言で今後の利上げ余地はそれほど大きくないかもしれないとの見解を表明したことも、心強い材料だった。さらにECB当局者が政策調整は「慎重かつ柔軟に」開始すると強調し、援護射撃を得られた形になった。

資産運用世界最大手の米ブラックロックは、歴史的な低利回りはこれからも定着すると見込む。主要国における金利上昇とともに、長期債の短期債に対するリスクプレミアムは拡大していくが、そのペースは非常に緩やかで、最終的には安全資産需要によって抑え込まれるだろうという。

(Sujata Rao、Dhara Ranasinghe記者)