[ニューヨーク 24日 ロイター] - デジタル仮想通貨ブームに一枚加わろうとしのぎを削る米ベンチャーキャピタル(VC)会社が、かつて経験したことのない壁にぶつかっている。仮想通貨を手掛ける新興企業は資金を必要としていないのだ。

ほんの数年前まで、仮想通貨の起業家も他のハイテク起業家と同じく、VCに事業構想を売り込んで資金を出してもらう必要があった。事実上、唯一の資金源であるVCに命運を握られていた。

しかし今、ブロックチェーン(分散型台帳)技術を利用する新参企業は、いわゆる「イニシャル・コイン・オファリング(新規通貨公開=ICO)」を通じ、規制も受けずに即座にデジタル通貨を創出、売却して数百万ドルを調達することができる。これによってVCとの関係は逆転した。

VC企業アウトライヤー・ベンチャーズの創設者であるジェイミー・バーク最高経営責任者(CEO)は「VCが手の届かないエリートで、スタートアップ企業にとって主な資金源だった日々は過ぎ去った」と語る。

バーク氏は、6月に仮想通貨「ベーシック・アテンション・トークン(BAT)」を発行したウェブブラウザ、ブレイブの例を引き合いに、「スタートアップが30秒で3500万ドルを調達し、何ら価値の希釈も起こらなくなった以上、もう精霊は瓶から飛び出して元には戻らないということだ」と説明した。

仮想通貨調査会社スミス・プラス・クラウンがロイターのためにまとめたデータによると、年初から7月半ばまでに発行された仮想通貨は89種類、調達額は約11億ドルで、昨年1年間の約10倍に達した。

これに対し、コインデスクのデータによると、ブロックチェーン企業が上期にVCから調達した資本は3億ドル強にとどまる。

しかし、数十種類のオンライン取引所で仮想通貨が大きく値上がりする様子はVCの興味を引いており、中にはICO前の独占販売などを通じ、少しでも通貨を獲得しようと試みるVCもある。しかし、一部の発行企業はICO前の販売額を制限しており、VC企業もその他大勢と同じくICOに群がらざるを得ない状況だ。

これは企業が資金調達だけでなく、熱心な支持者層を幅広く集めることを目的に仮想通貨を発行していることに理由がある。こうした層は、投資した通貨の価値が上がることを期待し、開発に手を貸してくれる場合があるからだ。

新興企業ブロックスタックの共同創設者、ライアン・シーア氏は「多くの個人や企業が協力し、分散化したネットワークを向上させることができる」と説明。「一握りのベンチャーキャピタリストがすべての通貨を吸い上げてしまうとすれば、私に言わせればそれは発行の失敗だ」と付け加えた。

<大幅な値上がり>

PwCと調査会社CBインサイツのデータによると、VC企業は上期、ハイテク関連業界に約193億ドルを投資しており、仮想通貨投資はほんの一部に過ぎない。

しかし、仮想通貨は過去2数年で2桁台の利益をもたらしたとあって、VCの投資家にとって無視できる存在ではない。

ICOを調査するウェブサイト、トークンデータ.ioによると、取引所で取引される仮想通貨の相場は公開価格の平均20倍に達している。この数字には上昇率が突出して高い通貨も含まれているため、中央値で見ると3倍となる。

VCは、仮想通貨の世界でも自分たちに果たせる役割は残っていると主張する。ユニオン・スクエア・ベンチャーズの共同創設者フレッド・ウィルソン氏は「あなたの通貨を買った投資家は公開市場の投資家と同じく、明日には、あるいは来月、来年には背を向けて次の大きなテーマに移ってしまうかもしれない。VC、少なくとも最良のVCなら、良い時も悪い時もあなたの企業と一緒だ」と訴える。

しかし、仮想通貨に投資するコインファンドのパートナー、ジェーク・ブルクマン氏は「価値をもたらしてくれるのは、ブロックチェーンの仕組みについて洞察力を備えた人々だ。私の見るところ、VCはブロックチェーンに関して2年遅れている」と語った。

(Gertrude Chavez-Dreyfuss記者)