[東京 14日 ロイター] - 今月中に予定されている日本郵政<6178.T>株の2次売却をめぐり、市場に不安が広がっている。最大1.3兆円の大規模売り出しだが、最大の買い手とみられる個人投資家の頭からは、豪社買収に伴う巨額損失計上という「負のイメージ」が拭い切れていない。将来の成長性に不透明感が強くなっており、機関投資家も指数連動型ファンド以外の需要を見出しにくいようだ。

<冷ややかな個人投資家>

「今は迷っている」──。東京都北区に住む株式投資歴30年の70代の女性は、日本郵政の2次売却株を購入するか悩んでいる。2015年11月の上場時に日本郵政株を購入したが、子どもへの贈与分を除いて短期間で売却、利益を得たという。

しかし、「資産がある企業であり、業務も手広くやっているといっても、本業はいまいち。長期で持つにはいいかもしれないけれども、良い株は他にもある」と今は慎重だ。株価が一段と上昇するイメージは描けず、1100円ぐらいまで株価が下がれば購入してもいいと話す。

日本郵政の株価は上場直後は好調で、公募価格1400円に対し、15年12月には1999円まで上昇した。しかし、その後は軟化。16年6月には1170円まで下落した。足元では公募価格付近まで戻しているが、この間、日経平均<.N225>は約6%上昇しており、出遅れ感は否めない。

埼玉県に住む会社役員、秋葉仁氏(70)は、日本郵政株の購入に関心はないとしたうえで「震災の復興財源を確保するという用途については賛成だが、なぜ今のタイミングなのか」と疑問を呈す。「もっと株価が高い位置にある時に売り出しをしてもいいはず。国有資産でもあり、もう少し有効に活用するべきだ」と述べた。

<海外買収戦略の挫折>

日本郵政の17年6月末の自己資本は、13兆4796億円。国内では有数の規模を誇る。2次売却後、政府の保有比率は約80%から50%台後半に低下するものの、筆頭株主は政府だ。

神奈川県に住む小林茂人氏(73)は、日本郵政株の買い増しを検討している。低金利環境の中で「銀行預金よりは保有していた方がいい」と話す。政府が大株主で「倒産リスクは少ない。安心できる銘柄」とポジティブに捉えている。

ただ、政府は22年度までに日本郵政株の売却で4兆円程度の復興財源を確保する構え。15年11月の上場と月内の売り出し、これまでの日本郵政による自社株買いを通じた政府の売却収入は約2.8兆円。今後、最大で約1.2兆円の保有株放出が予想され、先行きの需給悪化懸念がつきまとう。

業績にも不透明感がある。日本郵政は15年に約6200億円を投じ豪物流会社「トール・ホールディングス」を買収。しかし、わずか2年後、同社の業績不振を背景に減損損失を計上し、17年3月期は289億円の最終赤字だった。

今期は黒字転換を見込むものの、縮小する日本市場カバーのための海外企業買収の戦略がつまづき、将来の成長ストーリーが見えないままだ。「海外戦略につまずき、金融部門は金利低迷が響いている。郵便もヤマトHD<9064.T>などにないユニバーサルサービス(国民生活に不可欠なサービス)のハンディが大きい」(国内証券ストラテジスト)と、市場では日本郵政の先行きに慎重な見方が多い。

<換金売りに警戒>

株価上昇によるキャピタルゲインは期待しにくいとしても、日本郵政株の予想配当利回りは3.6%と、ほぼゼロ%の10年国債金利などと比べれば魅力的な水準だ。バリュエーション面でもPBR(株価純資産倍率)は0.43倍と解散価値を大きく割り込む。

ただ、ベイビュー・アセット・マネジメントの谷川崇人ファンド・マネージャーは、東京エレクトロン<8035.T>の配当利回り3.12%と比較し、「ファンダメンタルズからみて持ちたいのは(好業績期待の)東京エレク」と話す。日本郵政株に「『持たざるリスク』があるとは思えない。アクティブ運用をする機関投資家の資金流入は見込みにくい」という。

「絶妙なタイミング」(国内証券トレーダー)で日経平均の構成銘柄に日本郵政の採用が決定されたが、みずほ証券の試算によると、2400万株の買い需要にとどまる。14日終値をベースにすると、売買代金では334億円程度だ。

1日2兆円そこそこの東証1部売買代金に対し、最大1.3兆円の売り出し規模は小さくない。日本株は戻り歩調だが「換金売りによる需給悪化を見越した短期筋の売りはあるかもしれない。全体相場が荒れる可能性もある」(智剣・Oskarグループの大川智宏CEO)と、不安は晴れない。

「営業サイドも本音では、乗り気にはなれない」(国内証券の営業担当幹部)──。ニューマネー流入への期待は高まっておらず、証券業界からもため息交じりの声が漏れている。

(長田善行 取材協力:浦中大我 編集:伊賀大記)