[東京 8日 ロイター] - バーゼル銀行監督委員会(バーゼル委)が検討を続けてきた銀行の新しい国際規制が最終決着した。リーマン危機を踏まえ、10年余り続いた規制動向を巡る不透明感はようやく払しょくされそうだ。邦銀の健全性に対する影響は限定的と見られるものの、金融仲介機能に影響を及ぼす懸念も出ている。

<10年越しの交渉がようやく決着>

最終合意に至った国際金融規制・バーゼルIIIで最後に決着したのは、銀行が保有する貸出資産に対する信用リスク評価方法の見直しだ。

特にメガバンクに影響が大きいとされてきたのが、資本フロアの水準。資本フロアとは、銀行のリスクモデルに基づく資本要件が、規制当局が定めた比較的慎重なモデルで計算された結果からどの程度乖離しているかを定めるもので、メガバンクはこれまで、独自の「内部モデル」を使って計測してリスク量を低く抑えてきた。

しかし、内部モデルの利用に制限が加えられたうえ、資本フロアという新しい枠組みが導入され、国内では地銀など多くの銀行が採用する外部格付けを利用した簡便なリスク計測手法「標準的手法」で計ったリスク量の72.5%を下回らないことが義務づけられた。

金融庁幹部は8日、新規制の対象となる日本の国際基準行19行への影響について「現状でも新しい基準を満たしている。経過措置もあり、十分に対応可能だ」と説明。新規制は2022年から段階的に導入され、27年に完全適用されるなど、時間的にも十分な猶予を与えられた。

バーゼル委の交渉では、資本フロア70%を主張する欧州と75%を支持する米国が対立。「米国は自国に100%フロアを適用しており、もっと高めが良いというのが本音だった」(交渉関係者)。

リスク資産の増加額は、三井住友フィナンシャルグループ<8316.T>が21兆円程度(3月末比で30%程度の増加)、みずほフィナンシャルグループ<8411.T>が12―15兆円程度(9月末比で20%前半―20%半ば程度の増加)となる見通しだ。

三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306.T>は増加するリスク資産の規模を公表していないが、平野信行社長は11月の中間決算説明会で、リスク資産が「2桁のパーセンテージで増加することはないと考えている」と説明。「普通株式等Tier1比率に1%を超える影響が出ると考えているが、足元の同比率は12%を超えており、余裕はある」と述べた。

<各国政策と国際規制の調和も>

最終合意の中で注目されるその他の合意内容には、日本の金融庁など各国当局の政策目標と整合的な内容が盛り込まれた。

1つは、政策保有株だ。株式のリスクウエートは現状の100%から250%に増える。23年に130%になった後、27年にかけて毎年30%ずつ段階的に引き上げられる。金融庁の強い方針を受け、すでにメガバンクを中心に各行は削減を進めている。

今回の合意を受けた国内基準行への規制の検討はこれからだが「政策保有株を大量に保有している地方銀行は、頭を抱えているのではないか」(アナリスト)との指摘もある。

銀行が保有する自国通貨建て国債の保有リスクについて、バーゼル委は「検討の完了」を発表した。もともと、国債のリスクについては、欧州債務危機に直面した欧州当局が出発点。「騒動が収まったうえに、南欧諸国の国債を買い支えられなくなる懸念を抱く欧州中央銀行の意向もあり、現状維持になった」(関係者)という。

<なお残る金融仲介機能への影響>

「内部モデル」を利用するメガバンクなどからは、大手企業向け融資やプロジェクトファイナンスなどに影響が出かねないとの懸念も出ている。

内部モデルによる計測では、信用リスクの低い大企業や過去のデフォルト確率などを精緻に分析しているプロジェクトファイナンスなどは、リスク量が抑えられている。だが、フロアが導入されるため「場合によっては、リスク量が4倍、5倍にも引き上げられかねない」(大手銀行幹部)ためだ。

金融庁は、標準的手法の導入で金融機関のリスク資産に比較可能性が生まれる一方、内部モデルの利用も続くことから、金融機関のきめ細かなリスク管理へのインセンティブも削がないとする。

しかし、規制対応に明け暮れてきたメガバンク関係者は「先進的な内部モデルの開発や適用に汗をかいたこれまでの努力は何だったのか」と漏らす。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの廉了・主席研究員は「資本フロアは将来的に引き上げられる可能性もある。銀行はますますリスクを取りにくくなるのではないか」と話している。

(和田崇彦、布施太郎 編集:田巻一彦)