Paresh Dave

[サンフランシスコ 27日 ロイター] - 赤ちゃんと、犬と、人工知能(AI)と──。面白い場面を判断して自動的に写真を撮る手のひらサイズのスマートビデオカメラ「クリップス」を27日に発売した米アルファベット<GOOGL.O>傘下のグーグルは、この3つの組み合わせが消費者をとりこにすると考えている。

クリップスの価格は249ドル(約2万7000円)で、家具などに留められるようデザインされている。ファインダーに入ってきたものを自動的に撮影する仕組みだが、動きに反応したりタイマー設定で撮影したりするセキュリティー用や屋外用のカメラと比べ、クリップスは一段賢く作られている。グーグルは、クリップスの電子頭脳に、笑顔や人の顔、犬や猫、急な動きなどを認識する機能を組み込んだ。

同社は、子どもやペットの気取らない写真を撮りたい子育て中の親世代やペットの飼い主の間で、大きな人気を博す見込みがあると考えている。クリップスは、7秒間の音なし動画を撮影。それを圧縮画像GIFや高画質画像に編集し、スマートフォン経由でダウンロードしたり共有したりすることができる。

だが、グーグルのより大きな狙いは、AIの熟達と商業化にある。AI分野に巨額投資を行う同社幹部は、成功するには、ハードとソフトの密な融合が必要だと話す。検索エンジンの巨人グーグルが、こつこつと消費家電の開発に取り組む理由はそこにある。

同社が開発したデバイスは、まだ市場を支配するには至っていないが、スマートスピーカー「ホーム」や、動画などをテレビで視聴できる「クロームキャスト」、スマホ「ピクセル」は、すべて消費者から高い評価を受けている。

新しいガジェットの一つ一つが、顧客をより深くグーグルのサービスに引き込むように作られている。それはグーグルが、アップル<AAPL.O>やアマゾン<AMZN.O>、フェイスブック<FB.O>と、娯楽・ショッピングにおいて首位の座を争う上で欠かせないことだ。

グーグルは、新製品ごとに狙いを先鋭化させている。同社はクリップスの投入により、優しくAIに触れさせることで、写真好きな層を捕まえようとしている。

「こうしたカメラを置くことで、録画をいちいちチェックすることなしに、家の中で起きていることを把握できるようになる。家庭用ビデオの市場はこの方向に動いている」と、金融データ会社IHSマークイットのブレーク・コザク氏は言う。

さまざまな機種のデジタルカメラがあふれた市場で、クリップスがヒットする可能性を疑うアナリストもいる。利用目的が限られている割には、価格設定が高すぎるかもしれない。

また例えば、ペット見守り用カメラの「ペットキューブ」は、遠隔操作などのより多くの機能を備えている。音声がないことや、短いバッテリー寿命、プライバシーを巡る懸念なども、クリップスのアピールをより限定的にするかもしれない。

だがそれでも、この新商品は、対象の検知に特化したAIの一種である「コンピュータービジョン」におけるグーグル技術の進展ぶりを示す重要なものだと、ハードウエアのスタートアップ企業を支援するHAXの創業者、シリル・エバースワイラー氏は言う。

「音の次に来るのは、コンピュータービジョンだ。グーグルとしては、何もしないわけにいかない」と、エバースワイラー氏は語った。

<「自然な」カメラ>

グーグルは、昨年10月に発表したクリップスについて、人が好む写真についての長年の研究の産物だとしている。ありふれた自撮り写真やポーズを取った写真よりも、さりげない瞬間を写したカジュアルな写真を好む消費者の方が圧倒的に多かった。だが、カジュアルな写真を撮りたくても、スマホを取り出すのが間に合わないことはよくある。また、カメラが向けられていることを知ると自意識過剰になってしまう人も多い。

「(スマホで)撮影する写真と写真の間に、決定的瞬間がある。このカメラがあれば、それを撮影できる」と、クリップスの開発を主導したジャストン・ペイン氏は今月記者団に述べた。

ペイン氏によると、彼のチームはカメラ単体の開発を命じられたわけではなかった。例えば、スマホのカメラにもっとたくさんのソフトウエアを組み入れることもできた。

だが、自然な写真を撮るには、周囲に溶け込む専用デバイスが最適という結果になったと、ペイン氏は言う。約5センチ四方、重さ約57グラムのクリップスは、引き出しの取っ手や、庭の木の枝にひっかけることもできる。ただ、身に着けるようには設計されてはいないという。

最適な写真が撮れるのは、対象がフレーム内にいて、約90センチの距離にあるときだという。また、1度の充電で3時間稼働する。

グーグルは、撮影中にともる白ランプを取り付けることで、プライバシーの懸念に対応したとしている。また、クラウドに直接接続する機能は意図的に搭載していない。

録音機能がないことに落胆する消費者もいるかもしれない。ペイン氏は、録音機能をつければスカイダイビングやスキーで自撮りに使う人が出てくることが考えられるが、それにはまだクリップスの自動撮影機能は対応できないと説明した。

コンサルタント会社キム・アドバイザリー・キャピタルの製品デザインコンサルタント、マイケル・キム氏は、クリップスは「雰囲気写真」を撮るのには便利だろうとする一方で、このように高価な「新しいおもちゃ」が大きな人気を呼ぶかは疑問だとしている。

(翻訳:山口香子、編集:伊藤典子)